
マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」は、単なるカード代替の枠を超え、医療のデジタル基盤(医療DX)としての役割が期待されています。スマートフォンへの搭載や救急現場での活用、医療情報基盤の整備を通じて、将来的にAIを含む高度な診療支援につながる可能性がある一方で、個人情報保護やシステム安定性といった前提条件をクリアする必要があります。
スマホでの提示はすでに制度化され、端末対応が進む
スマートフォンにマイナ保険証を登録し提示する仕組みは、利用のための事前準備や手順を厚生労働省・デジタル庁が案内しており、対応機種(Android・iPhone)向けの手続きが整備されています。iPhone向けの「iPhoneのマイナンバーカード」サービスは2025年6月24日から提供が開始されており、スマホでの提示は現実的な運用フェーズに入っています。医療機関側はスマホ提示に対応するための機器やシステム更新が必要であり、対応状況は段階的に広がっています。
医療DXの中核インフラとしての位置づけ
政府はマイナ保険証(オンライン資格確認)を、薬剤情報・診療情報・特定健診結果などの閲覧・連携の入口と位置づけています。これにより、医療機関は患者の過去の服薬歴や健診結果を診療に活用でき、重複処方の回避や総合的な診療につながることが制度上の狙いです。専門機関の分析でも、マイナ保険証を医療DXのインフラに据える観点が示されています。
救急現場での活用(マイナ救急)も進展中
救急業務においては、マイナンバーカードを活用して傷病者の受診歴や薬剤情報を迅速に把握する「マイナ救急」の導入が検討・推進されており、運用開始や全国展開の方針が示されています。救急隊が専用端末で情報を参照できれば、救急処置や搬送先選定の精度向上が期待されます。
AI診療連携の可能性と現状の位置づけ
厚生労働省の資料では、診療・処方・健診等のデータが電子的に連携されるインフラが整えば、将来的にAIを用いた異常検出・重複投薬警告・治療方針支援といった機能を実装する余地があることが示唆されています。厚生労働省の医療DX資料にも生成系AI等の医療分野での活用が議論されている旨が記載されています。ただし、AI連携は現段階では「構想・検討フェーズ」が中心であり、実運用(広範な臨床適用)にはデータ標準化、安全性検証、法的整備など多くの準備が必要です。
まとめ
マイナ保険証のスマホ搭載や医療情報基盤の整備は既に制度的に進んでおり、救急現場利用や医療DXの中核化といった方向性が見えています。公的資料や専門家の分析は、こうした基盤整備が進めば、将来的にAIを含む診療支援機能の導入が技術的に可能になることを示唆しています。ただし、その実現にはデータの品質確保、セキュリティ対策、制度的な検証・整備といった多くの前提条件があり、現段階では「段階的に検証・実装していく」フェーズにあると整理できます。
詳しくは「デジタル庁」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松
