
NTTデータは2025年10月から、EMV 3‑Dセキュアで認証結果が得られない一時的なエラー時でも、取引継続の可否を判断できる「リスク判定機能」の無償提供を本格開始します。加盟店の売上機会を守りつつ、不正利用リスクを低減する仕組みです。
認証エラーでも決済継続を支援する新機能の概要
EMV 3‑Dセキュアの導入義務化が進むなか、国際ブランド側の一時的なシステム障害や通信不具合で本人認証の結果が得られないケースが増えています。NTTデータはこうした「認証空白」を埋めるため、認証エラーを自動検知して独自のリスク判定を行い、その結果を加盟店や決済代行事業者に通知する新機能を2025年10月から無償で提供します。
判定の中核は不正検知エンジン「CAFIS Brain®」による端末情報や操作状況の解析と、カード会社向けに蓄積された不正履歴の活用です。これにより、国際ブランドの認証が使えない状況でも「低リスク」と判断された取引は加盟店が決済を継続でき、売上機会の損失を抑えられます。
導入のハードルが低い点も特徴で、本人認証サービス「CAFIS 3DS Connector®」を既に利用している加盟店や決済代行事業者は追加のシステム改修や費用なしで本機能を利用できます。結果的に、サービス提供側の運用負担を増やさずにレジリエンスを高めることが可能になります。
背景にはキャッシュレス拡大と不正被害の増加があります。2024年のクレジットカード不正被害額は555億円と過去最大を記録し、経済産業省主導のガイドラインで非対面取引へのEMV 3‑Dセキュア導入が2025年4月までに求められました。しかし、厳格な認証運用は認証不能時の機会損失を招くリスクをはらんでいます。NTTデータの機能は、そのトレードオフにする実務的な解決策といえます。
運用上は注意点も残ります。加盟店はリスク許容度に応じた社内ポリシーを定め、低リスク判定で継続した後の事後モニタリングやチャージバック対応の体制を整備する必要があります。また、リスク判定モデルの継続的な精度評価とチューニングが不可欠です。これらを組み合わせて運用することで、不正抑止と売上確保の両立が現実味を帯びます。
NTTデータは今後3年間で国内EMV 3‑Dセキュア取引の60%以上への導入を目指すと表明しており、本人認証基盤と不正検知基盤の連携強化を進めることで、精度向上と業界全体の信頼性向上が期待されます。
詳しくは「NTTデータ」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權
