
NTTデータ株式会社は2025年9月30日、生成AIを活用した住所構造化サービス「Addresstune
(アドレストゥーン)」を、欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域でグローバル展開すると発表しました。本サービスは、非構造的な住所データをAIによって整形・標準化するもので、特に金融機関やグローバル企業における国際取引・顧客管理の効率化を目的としています。
「Addresstune
」は、国や言語ごとに異なる住所表記をAIが自動で解析し、正規化する独自アルゴリズムを搭載しています。これにより、銀行などが実施する本人確認(KYC)や、資金洗浄対策(AML:Anti-Money Laundering)業務におけるデータ品質を大幅に改善できます。NTTデータによると、従来は人手による住所確認やデータクリーニングに時間とコストがかかっていたものが、AIによる自動処理で最大70%の効率化が見込まれるとしています。
金融業界のDXを後押し
金融業界では、国際送金やマネーロンダリング対策に関する規制強化が進んでおり、取引相手の住所や本人情報の正確性がこれまで以上に求められています。特に欧州地域では、GDPR(一般データ保護規則)への対応と並行して、データの透明性・追跡性を確保することが企業経営の信頼性に直結します。
こうした背景から、NTTデータはAIを活用したデータガバナンス支援サービスをグローバル戦略の中核に据えています。同社の欧州法人であるNTT DATA EMEA Ltd.は、ロンドンを拠点に欧州の大手金融機関・保険会社との協業を進めており、今回の「Addresstune
」展開はその一環です。
同社はリリースの中で、「AIを用いてデータの正確性・信頼性を担保することは、今後の国際取引・金融業務において不可欠なインフラとなる」と強調しています。
通信企業から“デジタルサービス企業”へ
今回の取り組みは、NTTグループ全体の成長戦略「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想とも密接に関係しています。IOWNは、光通信や低遅延ネットワークを活用してリアルとデジタルを融合させるプロジェクトで、NTTデータはその「データ活用・AI」領域を担っています。通信インフラの提供にとどまらず、データ分析・AI・クラウドなどの上位サービスに軸足を移す姿勢が明確に示されました。
これまでのNTTグループは「通信基盤を支える企業」という印象が強かった一方で、近年は世界約50カ国に拠点を持つNTT DATAを中心に、ITソリューション企業としての存在感を急速に高めています。特に生成AIやデータ管理分野への投資強化は、グローバルな競争力強化に直結する動きといえるでしょう。
今後の展望:AI × データで社会の信頼基盤を再構築
NTTデータは今後、Addresstune
の導入対象を金融分野だけでなく、物流・公共・不動産業界にも拡大する方針です。グローバルサプライチェーンでは住所データの誤りがトレーサビリティ(追跡性)の障害となるケースも多く、正確なデータ整備は業界共通の課題となっています。
AIを用いた住所正規化は、こうした社会的課題を支える「見えないインフラ」としての役割を果たす可能性があります。
NTTグループ全体で進む「通信×AI×データ」の融合戦略は、デジタル社会の信頼性を根底から支える新たな挑戦といえます。NTTデータが展開する「Addresstune
」は、その象徴的なプロジェクトとして、今後の世界的なビジネス変革のモデルケースになるかもしれません。
