ソフトバンクとOpenAIが共同で立ち上げを予定している「SB OpenAI Japan」の設立が、当初予定されていた2025年夏から延期されることが明らかになった。背景には、組織体制の調整や事業方針のすり合わせの遅れがあるとされ、正式な始動は11月以降に持ち越される見込みだ。
この合弁事業は、日本市場において生成AIの活用を加速させるとともに、ソフトバンクが培ってきた通信・データ基盤とOpenAIの技術を掛け合わせる狙いがある。両社は法人向けサービスの展開を主眼に置き、日本企業の業務効率化や新規事業創出を支援する構想を描いてきた。特に製造業や金融、小売といった幅広い業界への適用が期待されている。
一方で、延期による影響も無視できない。すでに多くの企業が独自に生成AIの導入を進めており、「SB OpenAI Japan」が遅れて市場に参入することで競争優位性を確保できるのか、疑問視する声もある。さらに、日本国内では米国系プラットフォーマーや中国勢との競争が激化しており、スピード感が勝敗を分ける状況にある。
それでも、市場関係者の見方は必ずしも悲観的ではない。ソフトバンクは過去の投資戦略を通じて、AI分野への大規模なリスクテイクをいとわない姿勢を示してきた。今回の遅れも「持続可能な事業体制を構築するための戦略的判断」と評価する向きもある。実際、合弁事業が始動すれば、通信網からデータセンター、アプリケーションまで一気通貫のAIソリューションを提供できる可能性がある。
今後注目すべきは、OpenAI本社との関係性と技術移転の実効性だ。ChatGPTをはじめとする基幹モデルをいかに日本市場に最適化できるかが鍵を握る。日本語特有の文脈理解や企業固有データとの統合など、ローカライズが進めば、国内AI市場のエコシステムを牽引する存在となるだろう。
延期は一時的な足踏みに過ぎないのか、それとも構造的な課題を示すシグナルなのか──。AI競争の最前線で「SB OpenAI Japan」がどのように立ち位置を確立するのか、今後の動向に国内外から大きな注目が集まっている。
詳しくはソフトバンクグループまで。
レポート／DXマガジン編集部
