
デジタル庁は、これまでの行政のデジタル改革の成果を踏まえ、社会全体のデジタル改革へと段階的に舵を切る方針を公表しました。デジタル庁創設からの4年間で行政内部のデジタル化は進展したものの、人口減少や労働力不足、デジタル競争力の強化の必要性、自然災害や公共インフラの持続可能性への脅威、サイバー空間での脅威の増大、デジタル人材不足、デジタル化への不安やためらい、技術や国際情勢の変化、AIの社会実装の進展など多くの課題が残っているとしています。こうした現状を踏まえ、2025年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、行政施策の延長線上にとどまらず、社会全体のデジタル改革を加速させる方針を明確に示しています。
重点計画では5つの柱を掲げています。第一にAI・デジタル技術等の徹底活用による社会全体のデジタル化の推進です。第二にAIフレンドリーな環境の整備として、制度・データ・インフラの整備を進め、AIの社会実装を支える体制を整えます。第三は競争・成長のための協調で、国内外を含むデータ利活用の加速と国地方のシステム最適化図ります。第四は安全・安心なデジタル社会の形成に向けた取組で、サイバーセキュリティやプライバシー保護を強化します。第五は我が国のDX推進力の強化で、デジタル人材の確保・育成と体制整備を推進します。これらは制度・業務・システムの三位一体の改革として連携して実行されることが位置づけられています。
政府のAI活用推進としては、政府AI基盤「ガバメントAI」の構築を掲げ、政府内でのAI利活用を加速し、将来的には地方自治体への展開も視野に入れる方針です。これにあわせ、AI調達・利活用ガイドラインに基づく各府省庁のCAIO(Chief AI Officer)等の体制整備や、「デジタル原則適合性確認プロセス(デジタル法制審査)」の推進に取り組むとしています。ガバメントAIの構築と関係機関や民間事業者との協業を進めることで、共通の基盤とガバナンスを確立し、効率的なAI利活用を目指します。
利用者視点のサービス拡充にも重点が置かれ、個人向けには一人ひとりに最適化された「サポート型行政サービス」を目指します。その一環として、新たなマイナポータルアプリ(マイナアプリ(仮称))を2026年8月を目標にリリースする計画が示されました。事業者向けサービスはGビズポータルに統合し、2026年春のアルファ版リリースを予定しています。これらにより、行政サービスの一元化とプッシュ型の支援を実現し、利用者利便性を高めることを目指します。
データ利活用に関しては、「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」に基づく全体設計を確立し、DFFT(Data Free Flow with Trust)等の国際的な取組も推進するとしています。国内ではベース・レジストリ(公的基礎情報データベース)の整備・運用を進め、正確で整備された基礎データを基盤に高度なサービスやAI利活用を実現する方針です。あわせて国の情報システムの最適化(共通化・共同化・標準化)の徹底や、地方公共団体の標準準拠システムへの移行支援を進めるとしています。
デジタル庁は、これらの取組を通じて行政のデジタル改革を土台に日本社会全体のデジタル改革を推進し、「AIフレンドリーな国家」の実現を目指すとしています。官民や関係府省庁との連携を強化しつつ、制度整備や共通基盤の構築により、AI時代に対応した社会基盤の整備を加速していく考えです。
詳しくは「デジタル庁」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松
