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量子の時代、現実に近づく 日立の「配線ゼロ化」と「99%忠実度」は実用化をどこまで前倒しする?


日立製作所の新しい量子ビット制御技術は、配線を大幅に減らす新方式と、忠実度を95%から99%超へ高めるノイズ耐性技術を組み合わせます。これにより、シリコン量子コンピュータの実用化と2027年のクラウド公開が現実味を帯び、産業DXに新たな可能性を示します。 

配線簡素化と高忠実度で「実用化の壁」を突き崩す 

日立は、シリコンスピン量子ビットの大規模化と計算信頼性という二大課題に対し、同社独自の二つの制御技術を提示しました。第一は「デジタル制御コンベアベルト・シャトリング方式」です。 

従来の方法では、量子チップを動かすために多くのケーブルを冷たい装置の奥まで引き込む必要がありました。日立の新方式は、必要な信号をチップの近くまで少ない本数の線で送り、冷たい近傍に置いたスイッチで行き先を切り替えながら出力を作ります。イメージとしては、大量のホースを一本の大きなパイプにまとめて、使う場所の近くで細いホースに分けるような仕組みです。これによりケーブルの本数や取り回しがぐっと楽になり、長い配線で起きる信号の乱れも抑えられます。シミュレーションでは、動かし方の精度(シャトリング忠実度)が従来と同等の約99.9%と見込まれており、大規模化に向けた現実的な一歩になります。 

第二は計算の信頼性を飛躍的に高めるノイズ耐性制御です。日立はCCD(Concatenated Continuous Driving)方式を発展させ、常時マイクロ波を当てながらその位相を制御することで、量子ビットを外部ノイズから守りつつ高精度な操作を実証しました。これにより操作の忠実度は従来の約95%から99%以上へ向上し、量子誤り訂正が現実的に機能する水準に到達しました。忠実度向上は、誤り訂正の負担を減らし、実際に役立つ計算を行うための重要な条件です。 

日立は理化学研究所、東京大学、日立ケンブリッジラボなどと連携し、研究助成(ムーンショット型プロジェクト:JPMJMS2065)を受けながら実チップでの低温実証や制御パターンの開発を進めます。2027年までのクラウド公開を視野に、創薬・材料探索・金融最適化といった産業分野での利用を見据えた実証が続きます。企業は量子クラウドを前提としたハイブリッド計算体制の準備や、業務課題の量子適用可能性の検討を今から始めることが求められます。 

日立の制御技術は、物理的な実装の壁を現実に引き下げる意味があります。クラウド公開が実現すれば産業DXは量子を中核に新たに動き出すでしょう。 

詳しくは「日立製作所」の公式ページまで。 
レポート/DXマガジン編集部 

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