ソフトバンク株式会社と株式会社安川電機は、AI-RANとAIロボティクスを融合した「フィジカルAI」の社会実装に向けて協業を開始しました。第1弾として、MECで動作するAIと次世代ビル管理システムを連携させたオフィス向けフィジカルAIロボットのユースケースを共同開発しています。従来のロボットは単一タスク前提で設計されがちでしたが、MEC上のAIがセンサー、カメラ、外部システムの情報をリアルタイム統合・解析し、状況に応じた最適指示を発出することで、1台で複数の役割を担う多能工化を実現します。例えば、オフィスの棚から特定のスマートフォンを識別して取り出すなど、環境文脈に基づく高度な行動が可能になります。両社は2025年12月3日から6日に東京ビッグサイトで開催される2025国際ロボット展で、本ユースケースのデモンストレーションを予定しています。
協業の狙い 非定型環境の自動化に日本発の技術で挑む
人手不足や業務高度化を背景に自動化のニーズが高まる一方、ビルや病院、学校、百貨店のように不特定多数が行き交う環境では、予測困難な事象への対応が求められ、自動化が進みにくい現実があります。両社はこの課題に対し、ソフトバンクのAI-RANとMEC基盤、安川電機の精密制御とAIロボティクスを組み合わせて、ロボットの判断力を強化し、対応可能な作業領域の拡張を目指します。今回のユースケースでは、仮想構成の次世代ビル管理システムと連携し、設備や備品、ロボットの稼働情報を一元化して、外部視点から最適行動を導出します。人とロボットが同じ空間で安全に協調する運用を前提に、実装可能なアーキテクチャを示した点が意義深いといえます。
システム構成と役割分担 VLMとVLAでタスクから動作までを一貫制御
システムは、ビル管理システム、MEC上でタスクを生成するAI、ロボットの動作を生成するAIの三層で構成されます。ビル管理システムは設備情報、在庫状況、ロボットの状態を統合管理し、MECのAIはロボットのセンサーやカメラ情報と併せて必要情報を照会し、タスクを生成します。ロボット側のAIは、このタスクを具体的な軌道や動作に落とし込みます。プレスリリースでは、ソフトバンクがMEC環境の提供とタスク生成を担うVLMを開発し、安川電機がロボット提供と動作生成を担うVLAを開発する役割分担が明記されています。安川電機はモーション制御と産業用ロボットで培った安全性と精密制御を基盤に、自律ロボット「MOTOMAN NEXT」を開発中であり、ソフトバンクはAI-RANと低遅延処理により、外部視点での最適指示を可能にしています。
オフィスユースケースの実務的示唆 導入設計と評価の勘所
導入を検討する企業は、まずビル管理システムのデータ項目とインターフェースの標準化、MEC連携のネットワーク要件、現場の安全基準や導線設計を初期段階で明確にしておくことが重要です。評価指標としては、タスク完了率、想定外事象からの復旧時間、人的工数の削減率、安全関連インシデントゼロの継続が有効です。段階導入では、夜間の備品ピッキングや巡回など限定領域でのパイロットから開始し、API連携範囲とロボット可動域を広げていくとスムーズです。運用面では、センサー校正とAIモデル更新の定期サイクル、ログの監査体制、フェイルセーフ行動のルール化が鍵となります。2025国際ロボット展でのデモは要件適合やROI前提の確認の好機であり、現場要件とのフィットを見極めた上でPoC設計に着手すると良いでしょう。
詳しくは「ソフトバンク株式会社」の公式ページまで。
