
Amazon Web Services, Inc.(AWS)は、日産自動車株式会社がSoftware-Defined Vehicle(SDV)開発を加速するクラウド基盤「Nissan Scalable Open Software Platform」をAWS上に構築したと発表しました。2023年に開始した連携に基づくデジタル変革の重要マイルストーンであり、グローバルエンジニアリング環境のモダナイゼーションを推進します。日産自動車 ソフトウエアデファインドビークル開発本部の杉本一馬氏は、本プラットフォームを未来のモビリティ体験を支える重要なKey Technologyと位置づけ、AWSの先進技術と専門知識によりグローバル開発の効率化を進めると述べています。SDVの潮流の中で、アイデアを迅速に機能化し、品質保証を高度化し、国境を越えたコラボレーションを実現することが狙いです。エンタープライズレベルのクラウドを核に、ソフトウェア中心の車両開発体制を強化します。
同プラットフォームは、開発スピードの加速、テスト品質の向上、ボーダーレスな協業という三つの価値を提供します。実績として、車載ソフトウェアのテスト実行時間を75%削減し、従来は手動だったテスト手順を完全自動化しました。さらに、世界5,000人以上の開発者が場所に依存せず、標準化されたツールやリソースへ即時アクセスできる共通開発環境の構築を進めています。これにより、分散チーム間での環境差異やセットアップ時間を低減し、継続的インテグレーションと継続的デリバリーの効率を高めます。クラウド基盤によるスケーラビリティは、将来のプロジェクト増加にも柔軟に対応できる点が利点です。SDV開発のボトルネックだった検証工程の効率化は、開発サイクル全体の短縮に直結します。
将来のAI統合についても明確なロードマップが示されています。日産自動車はSDV開発におけるAI活用を拡大しており、2025年9月に開発試作車の運転能力を公開した次世代ProPILOTは、複雑な一般道を含む走行で信頼できる運転支援を実現します。この技術は2027年度に国内市販車への搭載を予定しており、クラウド上のプラットフォームは学習や評価、シミュレーションの基盤としても役割を担います。SDVの価値はソフトウェア更新による機能進化にあり、AIの継続的な適用と検証の仕組みは競争力に直結します。データ駆動での改善サイクルを高速で回すためにも、標準化された共通環境は不可欠です。グローバル規模の品質基準を満たしながら、機能展開のスピードを確保できます。
DX推進の実務観点では、まずテスト自動化の範囲を拡張し、テスト実行のキューイングとリソース配分を可視化することが効果的です。次に、開発者5,000人超を想定した標準ツールチェーンを整備し、アクセス権限や監査の統一ルールを適用してください。第三に、SDVに特有の安全規格に準拠した変更管理とトレーサビリティを設計し、要件からコード、テスト、デプロイまでを一貫管理することが重要です。AI活用では、学習データの品質指標とモデル評価基準を定義し、ドリフト監視と再学習プロセスを共通化すると運用負荷を抑えられます。最後に、グローバル拠点間の遅延や法規制差に配慮したリージョン設計とデータ取り扱いポリシーを明確化し、拡張時のリスクを低減してください。
日産自動車は年間300万台超を100カ国以上で販売するグローバルメーカーであり、SDVにおけるソフトウェア開発を重要戦略と位置づけています。「Nissan Scalable Open Software Platform」は、変革期の自動車産業における同社の競争優位性を高める基盤となる見込みです。AWSとの連携を軸に、開発サイクル短縮と品質向上、さらにはAIの段階的統合を通じ、次世代のモビリティ体験の提供を加速していくといえます。
