メルカリの「AI出品サポート」と「メルカリモバイル」が2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。AIとCtoCの融合が、出品の手間と通信資源の未活用を同時に解決します。新しいDXの実務モデルを短く紹介します。
受賞プロダクトが示す現場寄りのDX設計
メルカリの受賞は「システム・サービス」部門での評価です。「AI出品サポート」は、メルカリアプリ（iOS・Androidと公式Webで動作し、写真撮影または選択とカテゴリー指定だけで、AIが商品名・説明文・販売価格を自動入力します。利用はユーザーがオン／オフで選べ、最短3タップで出品完了に至る設計が特徴です。待機画面にイラストを使うなど、生成待ちやエラー時に生じる不安を軽減する細部の配慮も盛り込まれています。審査員は「出品の心理的・時間的負担を軽減した点」「既存フローを崩さず自然にAIを統合したUX」を高く評価しました。
一方、「メルカリモバイル」は日本初とされる「データ通信量（ギガ）の売り買い機能」を実装したモバイルサービスです。申込みからギガの売買までをメルカリアプリ上で完結させ、無形の通信を「キューブ」で可視化してUIと連動させることで、直感的な売買体験を作り出しています。審査員は、余剰通信量の流通化がユーザー間で価値の循環を生む点と、フリマのUXを通信に持ち込んだ設計を評価しました。
両プロダクトから読み取れるのは、DXが「新技術の導入」だけでなく「既存体験の延長線上での自然な統合」を目指していることです。AI出品は初心者の参加障壁を下げ、出品完了率の向上や未経験者の参入を促す狙いが明確です。メルカリモバイルは、インフラ的な通信を取引可能な資産として再定義し、新たなCtoC市場を開く試みと言えます。どちらもユーザー主体の選択肢や可視化を重視しており、操作感と安心感を両立させる設計が共通しています。
受賞理由には、デザインの細部にわたる配慮と実運用での検証が反映されています。AI生成の品質や編集しやすさは開発チームと実ユーザーによる検証の成果とされ、スマホ画面での可読性や編集性が重視されています。ギガ売買では、申込みから決済・売買までを一貫させることで既存ユーザーの利用動線を活かし、複雑な通信の概念をやわらげるUI表現が導入されています。
メルカリの今回の受賞は「技術＋デザイン」でユーザーの行動と価値循環を変えた点が評価されたものです。出品の心理的負担を下げるAIと、無形資源を可視化して交換する仕組みは、実務的なDXの好例と言えるでしょう。
詳しくは「株式会社メルカリ」の公式ページまで。
レポート／DXマガジン編集部 權
