
太陽光パネル板ガラスを粉砕せずそのままオフィス家具へ再利用――日立、イトーキ、トクヤマが共同で実証し、CO₂排出を最大50%削減と試算しました。2030年代に増える廃棄問題に応える新手法で、非破壊評価と低温熱分解により安全性を確保します。
技術とデザインで示した「アップサイクル」の現実味

国内で太陽光パネル廃棄は2030年代以降に急増し、最大で年間50万トンに達する見込みです。パネル重量の約6割を占める板ガラスの再利用は喫緊の課題でした。今回、トクヤマはNEDOと進めた低温熱分解法で板ガラスを高品質に回収しました。この工程はガラスを粉砕せず、物性を保ったまま分離できます。
日立は非破壊強度推定技術を開発し、亀裂やアルカリ溶出といった劣化要因を画像処理で判別して強度を推定できるようにしました。これにより回収ガラスが家具部材として安全に使えるかを現場で判断できます。イトーキは回収ガラスの微細な凹凸を意匠として活かし、合わせガラス化やスチールとの複合パネルで強度と美観を両立させたWeb会議ブースの試作品を提示しました。
三社の組合せにより、回収→評価→加工の流れが成立し、合わせガラスを再生材で製造した場合に新規製造比でCO₂排出を最大約50%削減できると試算しています。今回の取り組みは、太陽光パネル由来の板ガラスを粉砕せずに家具へ再利用する初の事例(2025年8月時点)として位置づけられます。今後は品質評価の標準化やサプライチェーン構築、再生材マーケットプレイスとの連携が課題となりますが、オフィス家具を起点に資源循環を進める現実的な一と言えます。
詳しくは「株式会社日立製作所」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權
