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計画運休、どんな天気で列車が止まる?影響を受けやすい路線は?


気象災害の可能性がある場合に、事故防止・安全確保や急な運転見合わせによる混乱を避けるために近年増えている鉄道の計画運休。

当記事では、鉄道における計画運休の基本的な概要から、計画運休が発生する条件や開始・終了のタイミング、過去の事例や気象災害が起こりやすい地域及び条件についても取り上げます。更に、行程変更の対処にあたってのコツや注意点も紹介します。


計画運休とは

計画運休とは、台風や大雪等の気象災害が見込まれる場合、安全確保や混乱防止のために公共交通機関(主に鉄道)が事前に計画・周知して運休することです。
地方では昔から台風や豪雪時に計画運休することがあった一方、大都市では完全に運行を停止せず駅間停車を防ぐための間引き運転という形態をとることが多くなっていました。

しかし、近年は気象予測の精度向上を背景に、事故や運行途中での立往生等の事態を未然に防ぐべく、事前に完全運休を決める場合が増えています。
細かい流れは鉄道会社により異なりますが、国土交通省は図の通り段階ごとに細かく情報を提供・周知することが望ましいとしています。

国土交通省が示す計画運休のガイドライン

国土交通省が示す計画運休のガイドライン


計画運休の可能性がある気象条件

鉄道路線の地域特性や設備規格によって、影響を受けやすく計画運休の原因となりやすい気象現象は異なります。

大雨は、土砂災害や冠水、河川の氾濫や橋梁の流出を引き起こします。
このうち土砂災害は、山間部などの切通のほか、築堤を多く走る路線も影響を受けやすいです(切通:山や丘を切り開いて造られた区間のこと。築堤:低地や海上で土砂等を盛って造られた区間のこと。)。山間部のローカル線は、設備規格の低さもあり台風や集中豪雨で大きな被害を受けやすいです。東海道新幹線も築堤区間が多いため、主に高架橋を走る他の新幹線より大雨の影響を受けやすくなっています。
一方で冠水は低地で起こりやすく、隧道内を走る地下鉄等は集中豪雨により線路や駅が冠水被害を受けることがあります(隧道:トンネルのこと。)。
また、洪水で流木が橋梁に堰き止められると、大きな水圧が橋梁にかかり流出する怖れがあります。

強風は線路内への支障物飛来や、列車の転覆・橋梁からの転落を引き起こすこともあります。
高架区間や海沿い、また長大橋梁が存在するなど強風が吹きやすい区間は運休しやすくなっています。主な例としては大半が海沿いの埋め立て地を高架で走る首都圏の京葉線や、備讃瀬戸の海を渡る瀬戸大橋線、日本海のすぐ近くを走る区間が長く冬は強い季節風が直接吹きつける五能線・羽越本線、山陰本線のほか、「比良おろし」(おろし/颪:冬季に山地から太平洋側へ吹き下ろす強風。)と呼ばれる局地的な風が吹きやすい滋賀県の湖西線、同じく局地的な「山風」が吹きやすい愛媛県の予讃線が挙げられます。

雪は、ポイントの凍結や大雪による立ち往生、ブレーキ故障や雪崩も引き起こすことがあります。
豪雪地帯は融雪・除雪設備の導入が進んでおり、若干の降雪では通常通り運転されますが、大雪で除雪作業が間に合わない場合は運休となります。湿った雪は乾燥した雪より重くて除雪しにくく、影響が大きくなりやすいです。雪が止んだ後も気温が大きく上昇すると、雪融けが急速に進むことで雪崩の可能性があります。
一方、通常雪が少ない地域は費用対効果の問題もあり設備が貧弱なため、少量の雪でも大きな影響を受けやすくなっています。滅多に雪が降らない首都圏や京阪神では、10cm程度の積雪でもダイヤが乱れることがあります。

計画運休の可能性がある気象条件の概要

計画運休の可能性がある気象条件の概要


近年の悪天候による鉄道事故と計画運休の事例

悪天候での無理な運行は、事故のもとになります。

近年の大雨による主な事故としては、2010年7月の岩泉線脱線事故と2012年9月の京急本線脱線事故が挙げられます。ともに線路上に崩れた土砂に列車が突っ込み脱線したものでした。特に岩泉線は、元々大赤字であり復旧した場合安全確保の対策工事費用が見合わないとして、復旧せずにそのまま廃止になってしまうという重大な影響を生じました。

大雪による主な事故は、2014年2月の東急東横線追突事故が挙げられます。ブレーキに雪が入り込んで故障した列車が停まれずに先行列車に追突し、東京と横浜の二大都市を結ぶ主要路線が丸一日運転を見合わせる事態になりました。
また、事故ではありませんが、2023年1月には京都府内の大雪でポイントが凍結して切り替わらなくなったため、JR琵琶湖・京都線で多くの列車が立ち往生して乗客が深夜まで長時間閉じ込められました。

強風による主な事故は、2005年12月のJR羽越本線脱線転覆事故が近年最も大規模なものでした。特急列車が鉄橋通過中に強風にあおられて脱線し、勢いで対岸の小屋に突っ込みました。また、2025年5月の長野電鉄長野線衝突事故では、突風で線路上に飛ばされた小屋に列車が衝突しました。この2事故は共に死者が出る事態となりました。

一方、そのような気象災害による鉄道事故を防ぐべく、計画運休が浸透したのはここ10年ほどです。

大規模な事例としては、大阪・和歌山で記録的な暴風となった2018年台風21号や、関東・甲信・南東北で記録的な大雨となった令和元年東日本台風(2019年台風19号)が挙げられます。
また、2019年台風10号と2023年台風7号は、接近時期がお盆の連休中になったため、帰省・旅行客に大きな影響を及ぼしました。


気象災害が起こりやすい地域や広域的な気象条件

大雨は、台風・前線のほか不安定性降水等の集中豪雨によって引き起こされます。
台風による大雨は、暖かく湿った風が当たりやすい太平洋側の南東向きの斜面で、特に進行速度が遅い場合に長時間持続しやすくなっています。南から前線に湿った暖気が流れ込む場合も、同様の地形効果により南向きの斜面で雨が多くなります。特に、海の近くまで山地が迫る四国や紀伊半島等で雨量が多くなりやすいです。線状降水帯による大雨は、東南アジア方面からの暖かい湿った空気が流れ込んで発生する場合が多いため、九州など南西ほど起こりやすくなっています。また、不安定性降水による大雨は寒冷渦や気圧の谷により上空に冷たい空気が流れ込んだ場合にどこでも起こることがありますが、特に晴天時に地表の気温が高くなりやすい内陸、特に広大な平野が存在する関東等で多いです。

強風は、夏から秋にかけての暖候期は台風、冬から春にかけての寒候期は冬型気圧配置や発達した温帯低気圧によって引き起こされます。
一般的には周囲に遮るものがない海沿い(特に突出した岬)や山で風速が大きくなりやすい一方、周りの山々に遮られる内陸の盆地や高層ビルによって遮られる大都市は影響を受けにくいです。また、特殊な地形の効果により低気圧通過時等に吹き込む風が局地的に強くなりやすい地域も存在します。前述の「比良おろし」「山風」のほか、寿都の出し風や美作の広戸風、阪神地域の六甲おろしも有名です。

大雪は、日本海側は強い冬型気圧(特にJPCZ:日本海寒帯気団収束帯)、東日本の太平洋側は南岸低気圧、北日本の太平洋側は爆弾低気圧によって引き起こされます。
里雪型の冬型気圧配置では、日本海上で雪雲が発達して平野部で大雪となります。山雪型の冬型気圧配置では、強い風が山地に当たって上昇気流となることで雪雲が発達するため、山間部で大雪となります。また、弱い冬型気圧配置や南岸低気圧では、雪になるか雨になるか微妙な気温の時に気温の低い山間部で雪となる一方、気温の高い平地では雨になることも多いです。なお、西日本太平洋側では基本的に大雪にならないですが、四国や中国では強い冬型の気圧配置の際に中国山地の標高が低い鞍部や関門海峡を通り抜けた線状の雪雲により、風向き次第で稀に局地的な大雪となることもあります。


計画運休の対処法・注意点

気象災害により移動予定が影響を受ける可能性がある場合は、まずは影響を受けにくい迂回経路があるか調べることが重要です。新幹線の事故や設備故障等による運転見合わせ時は並行する在来線への迂回が有効ですが、気象災害時は近接した路線も共に影響を受ける可能性が高いため、並行せず全く異なる地域を走る路線に変更しましょう。

例として、東名阪におけるJR東海道新幹線の迂回経路を図に示しています。
東京と名古屋を行き来する経路は、JR中央本線があります。塩尻駅で特急「あずさ」と特急「しなの」を乗り継ぎます。なお、特急「あずさ」は全席指定です。迂回客の混雑で満席の場合、塩尻駅までは普通列車を乗り継ぐ必要があり、高尾駅・大月駅・甲府駅・小淵沢駅のうち約2回乗り換えとなります。
名古屋と大阪を行き来する経路は、JR関西本線と近鉄線があります。JR関西本線経由は基本的に亀山駅と加茂駅の2回乗り継ぎますが、早朝深夜は奈良でも乗り換えとなる場合があります。亀山駅から加茂駅までは全て普通列車ですが、その他の区間は日中時間帯を中心に快速系列車が走っています。特急列車は走っておりません。近鉄線経由は特急「ひのとり」「アーバンライナー」が直通します。それ以外の特急列車や急行系列車は、中川駅で乗り換えとなります。一部の急行系列車は名張駅でも乗り換えとなります。なお、近鉄の特急列車は全席指定です。
名古屋を通らずに東京と大阪を行き来する経路は、JR北陸新幹線があります。敦賀駅で北陸新幹線「かがやき」「はくたか」と在来線の特急「サンダーバード」または新快速列車を乗り継ぎます。なお、新幹線で停車駅の少ない「かがやき」及び在来線の特急「サンダーバード」は全席指定です。

経路を変更できず日時をずらす場合は、被害を受けて運転見合わせが続く可能性がある後ろ倒しよりも前倒しの方が安全です。紙の切符は窓口での変更や払い戻しの対応が長蛇の行列になるため、特急や新幹線は近年導入が進んでいるチケットレス特急券の利用が便利です。
同様に、旅先の宿も電話やメールよりネット予約の方が迅速に対応できます。

気象災害の影響が見込まれるときは、計画運休の予告時間外も急な気象状況の変化により、突然運転見合わせになることが少なくありません。できれば余裕を持った行程を組み、随時最新の状況をご確認ください。

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