
次代の君たちへ-。西武栗山巧外野手(42)が14日、後輩たちに思いを伝えた。神戸G7スタジアムでの「栗山巧杯 少年野球大会」の閉会式に出席し、少年野球教室も行った。白熱の決勝戦で見つめたのは、日の当たらない部分。少年たちに伝えたのは技術以上に感謝の大切さ。プロ25年目の来季終了をもって現役引退するベテランが、愛する地元神戸に愛を届けた。
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栗山の席からは死角に近かったはずなのに、栗山はちゃんと見ていた。
「今日、負けたチームがみんな泣いてて、あれがすごく印象的で」
決勝戦が終わり、グラウンドは閉会式の準備へ。タイブレークで敗れた「宮本上筒井A」の6年生たちがベンチ隅で突っ伏して号泣したことに気付いた人は、決して多くなかった。
「優勝する、勝つって気持ちを強く持ってやってくれたと思う。優勝は目指してほしい。でもそれ以上に、どれだけ一生懸命やれたか。そこは思い出として残ると思うんで、大事にしてほしいですね。悔しかったらもう1回練習するだけやと思います」
来季限りで現役引退する。問われても「そこは」と制する。少年たちに「少しずつでもいいから毎日こつこつと」と伝えたように、こつこつ準備するだけ。
神戸での“栗山少年”の頃からそうだった。恩師もそういう人。「厳しい時は厳しい。でも時間をかけて一緒に練習することを、特にやってくれた人でした」。小寺少年団野球部の顧問だった牧野栄一さんは今春、病で逝去した。
「いま僕が実践していること、子どもたちに教えてることは、まさに牧野さんに教わったこと。同じようなことはできないかもしれないですけど、次の世代につなげていきたいです。僕は僕なりに」
今回も遺影と向き合い、そう決意した。子どもたちにも真剣に伝えた。
「うれしそうに芝生でスライディングしとった子もいっぱいおったけど、洗濯してくれてるの誰? お母さん? お父さん? ちょっと土を払って家にあがるくらい、感謝の気持ちを持ってやっていこう!」
野球教室前に「うちに栗山を持ち帰りたい」と大胆宣言をしていた小学生が「はい!」と至って真剣な表情で答えた。【金子真仁】
