EY調査、2025年上半期の世界のIPOは市場のボラティリティが高まる中で回復力を示す
- 中華圏(中国本土、香港、台湾)が世界全体のIPO調達額の3分の1を占めている一方、米国は109件とIPOの件数で首位に立ち、2021年以来、最も好調な上半期のパフォーマンスを記録
- クロスボーダー上場の件数は2025年上半期に過去最高を記録し、米国における上場の62%が外国企業によるもの
EYは、2025年上半期のIPOに関する調査結果「EY Global IPO Trends Q2 2025」を発表したことをお知らせします。2025年上半期の世界のIPO市場は回復力を示し、539件のIPOにより614億米ドルを調達し、前年同期比で調達額は17%増加しました。政策の不確実性や市場のボラティリティが高まる中でIPOの実績が持続したことは、戦略的に優位な立場をとり、準備を整えた上場準備企業の回復力および変化する資本市場への適応力を浮き彫りにしています。特に、中華圏は主要なプレーヤーとして再浮上し、世界全体の調達額の3分の1を占めた一方で、欧州のシェアは10%まで減少しました。
2025年上半期はこのような市場環境により、多くの企業は出口戦略を再考し、上場を先延ばしにするか、より小規模での上場を目指すかの判断を迫られました。2025年上半期のクロスボーダーIPOは過去最高を記録し、世界全体の取引件数の14%を占めました。地理的に明確な傾向が現れており、中華圏とシンガポールがIPOを実施する企業の主要な拠点、米国は上場先として最も多く選ばれています。
EY Global IPOリーダーのGeorge Chanのコメント:
「地域やセクターを超えてIPO市場が再構築されているのは、世界の資本フローと投資家心理の大きな変化を反映しています。市場が目まぐるしく変動する中で、企業がIPO戦略を長期的なマクロトレンドと整合させながら短期的なボラティリティを乗り切るには、IPOの準備を万全に整えることが不可欠となるでしょう」
IPO市場の地域別の変化
2025年上半期は、IPO市場の地理別の変化が顕著でした。米国では109件のIPOが実施され、2021年のピーク以来、上半期としては最も好調な実績を記録しました。中華圏の市場は、数年にわたる低迷期を経て、大幅に回復中です。特に香港は、調達額が前年同期比7倍増となり、香港取引所はIPOの調達額で世界トップの座を奪還しました。欧州の主要市場の大半は、4月初旬の市場の混乱以来足踏み状態にあるものの、スウェーデンではメガIPOがありました。中東では好調な勢いが持続し、インドは取引件数が減少したにもかかわらず、高水準の資金調達を維持しました。
地政学的動向に影響を受ける、複雑なセクター別の傾向
地政学的動向や各国の戦略的優先事項は、セクター別IPOの環境に大きな影響を与えており、特定分野に絞った新たな上場機会が生まれています。製造業セクターの中でも特にモビリティのIPOは、リショアリングやサプライチェーンの現地化の恩恵を受けています。エネルギーセクターでは、IPOは戦略的インフラに重点を移しつつあり、防衛技術のIPOは、世界的に防衛予算が増加する中で勢いを増しています。ライフサイエンスセクターは、バイオテクノロジーの革新を通じて関心を集めています。テクノロジーセクターは引き続きIPO市場の基盤となっており、米国と日本がソフトウェア関連のIPOでリード、中華圏がハードウェア関連の上場で貢献しています。デジタル資産とフィンテックは、ステーブルコインのパイオニア的企業やプロジェクトが中心となってIPOの勢いを取り戻しています。
2025年下半期は慎重でかつ前向きな見通し
世界のIPO市場は2025年上半期に回復力を見せました。下半期については、引き続き課題はあるものの、慎重で前向きな見通しが示されています。世界のIPO市場が回復する可能性は、より協調的な貿易体制、金融緩和政策、インフレの抑制、地政学的緊張の緩和にかかっています。国家の優先課題やイノベーションに沿った戦略を掲げ、現実的なバリュエーションと柔軟なタイミングをもって、説得力あるエクイティストーリーを描ける企業は、この複雑な環境下でも成功を収めやすいでしょう。
EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター 副センター長の善方 正義(ぜんぽう まさよし)のコメント:
「2025年上半期の日本のIPO件数は、前年同期の38社から10社減し、28社(前年同期比26%減)にとどまりました。特にグロース市場では、グロース市場の株価低迷や東京証券取引所によるグロース市場の上場維持基準の見直し報道などの影響を受け、前年の34社から約50%減の18社に減少しました。これに加えて、米国の関税政策を背景とした国際的な経済・金融市場の不透明感の高まりも、IPO市場の停滞に拍車をかけたと考えられます。
一方、プライム市場では、上半期の非鉄金属企業による大型上場が実現したほか、下半期で複数の金融機関による大型IPO案件が予定されており、一定の活況が見込まれます。2025年通期のIPO件数は、70社前後にとどまり、前年の86社を大きく下回る見通しです」
2025年上半期の日本のIPO
2025年上半期の日本国内のIPO状況はこちらをご覧ください。
日本の新規上場動向 - 2025年1月~6月
より詳細なEYのインサイトは、EY Global IPO Trendsレポートからご確認いただけます。
※本ニュースリリースは、2025 年7月17日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳し、日本の状況を追加したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:H1 2025 global IPO activity shows resilience amid market volatility
[データについて]
本レポートに示されたデータは、ey.com/ipo/trendsでご覧いただけます。
本レポートにおける2025年2Qとは、2025年第2四半期のことを指し、2025年4月1日から6月30日までに完了しているIPOを含んでいます。本レポートにおける2024年2Qとは、2024年第2四半期のことを指し、2024年4月1日から6月30日に完了しているIPOを含んでいます。本レポートにおける2025年H1とは、2025年上半期のことを指し、2025年1月1日から2025年6月30日までに完了しているIPOを含んでいます。本レポートにおける2024年H1とは、2024年上半期のことを指し、2024年1月1日から6月30日までに完了しているIPOを含んでいます。本レポートにおける2024年とは、2024年暦年全体のことを指し、2024年1月1日から2024年12月31日に完了しているIPOを含んでいます。
本レポートに含まれるすべてのデータは、特に断りのない限り、Dealogic、Mergermarket、S&P Capital IQ、LSEGおよびEYを出典としています。Dealogicのデータは、IONがライセンスを保有し、当該データに関するすべての権利をIONが保持しています。SPAC(特別買収目的会社)に関するデータは、特に記載のない限り、本レポートのすべてのデータから除外されています。
[EYについて]
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