CRI・MW Research Memo(4):2025年9月期業績は好調、期初予想を大幅に超過
1. 2025年9月期の業績動向
2025年9月期の業績は、売上高3,448百万円(前期比8.9%増)、営業利益554百万円(同50.5%増)、経常利益566百万円(同47.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益420百万円(前期比38.2%増)で大幅増益となった。期初予想との比較でも、売上高で88百万円、営業利益で170百万円の超過達成で好業績となった。
日本経済は、各国の通商政策などの影響を受けて一部に弱めの動きも見られたが、企業収益が全体的に高水準を持続、業況感も良好な水準を維持するなど、緩やかに回復した。同社を取り巻く事業環境については、モビリティ業界でSDV※の開発が注目を集めており、ゲーム業界におけるミドルウェアで培った同社の技術と知見を活用できる環境やタイミングが整いつつある。また、「2025大阪・関西万博」では、リアル会場での盛り上がりと同時に、併設されたバーチャル万博のオンライン空間上で大勢の人がコミュニケーションを行うなど、オンラインコミュニケーションはリアルとバーチャルのハイブリッドという形で着実に進展している。
※ SDV(Software Defined Vehicle):販売後もソフトウェア更新によって機能や価値が更新される自動車。
こうした環境下、同社は、モビリティやオンラインコミュニケーションなど今後成長が見込める市場と事業を見据えた研究開発体制を整備するとともに、新製品の創出や海外展開の推進など事業基盤の拡大、グループシナジーの創出に注力した。この結果、売上高はモビリティ分野が急伸、主力のミドルウェア/ツール分野も海外を中心に大きく伸びた。利益面では、好業績を背景に賞与引当金など人件費が増加したものの、許諾売上が増えたことから売上総利益率が改善し、営業利益は大幅増益を達成できた。期初予想との比較で業績が超過達成となったのは、モビリティで新製品、組込みでカジノ向け、音響制作で中国向けなどが想定を大きく上回ったことが要因で、中間決算発表時に通期業績予想を上方修正している。
モビリティと海外ミドルウェアが大きく伸長
2. セグメントの動向
セグメント別の業績は、ゲーム事業が売上高1,807百万円(前期比7.8%増)、セグメント利益186百万円(同59.5%増)、エンタープライズ事業が売上高1,641百万円(同10.1%増)、セグメント利益368百万円(同46.3%増)といずれの事業も好調に推移した。分野別では、組込み分野とクラウドソリューション分野が減収となったが、特にモビリティ分野とミドルウェア/ツール分野の海外が業績をけん引した。
(1) ゲーム事業
ミドルウェア/ツール分野の国内は、提案営業の強化により新規顧客を含む複数の一括許諾契約を獲得したことで増収となった。なお、一括許諾契約とは、従来のタイトルごとの許諾契約を変更し、数タイトルを一括して許諾する効率のよい契約方法で、音声系ミドルウェアに強い同社は積極的にシェア拡大を目指している。海外向けは、中国において第3のOS(HarmonyOS)がローンチ・急拡大していることから追加契約が発生、新規契約については2機種(アンドロイド、iOS)から3機種分の契約が一般的となった。また欧州ではドイツのDICO Deutschland GmbH(DICO)と代理店契約(台湾、韓国に続き3社目)を締結したほか、かつて本格的に進出していた米国では既存顧客の開拓を推進するなど、欧米における拡販も進んでいる。音響制作分野においては、日本市場を本国に次いで重視する中国企業からの大型の日本語ボイス収録業務を複数受注したことに加え、既存顧客からのリピートオーダーも堅調に推移した。このように順調な業績を反映して、各KPIはライセンス数が10,020(前期末比14.5%増)、スマホゲーム採用率が36%(同1ポイント上昇)、家庭用ゲーム採用率が30%(同6ポイン上昇)と好調に推移した。利益面では、海外ミドルウェア/ツール分野と音響制作分野の好調が寄与、中国では現地法人(CRI China)を通じた手厚いサービス提供が好評、欧米では海外ミドルウェアの許諾ライセンスが回復している模様である。なお、オンラインコミュニケーションミドルウェア「CRI TeleXus」への研究開発投資は、同セグメントにおいて継続して行っている。
(2) エンタープライズ事業
モビリティ分野は、「CRI ADXAT」の採用数が順調に増加、二輪車向けの好調を背景に新製品「CRI Glassco」の採用数も年間を通して想定を大きく上回り、大幅増収となった。組込み分野は、前期に計上した大型許諾売上の反動で減収となったが、中間期にカラオケの一括許諾やリアルカジノ向けの年間許諾の売上高が想定以上に計上された。クラウドソリューション分野の売上高は、R&Dフェーズ入りするため受託量を計画的に減らしており、おおむね予定どおりの減収となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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