クオルテック Research Memo(4):高い財務健全性と潤沢な成長投資余力
3. 財務状況
(1) 財政状態
2025年6月期末における資産合計は4,346百万円となり、前期末比205百万円増加した。流動資産は2,522百万円となり、同371百万円減少した。主な要因は、売掛金の増加106百万円の一方、現金及び預金の減少367百万円、電子記録債権の減少60百万円、仕掛品の減少53百万円によるものである。固定資産は1,823百万円となり、同576百万円増加した。主にパワエレテクノセンター開設に係る工事や分析・試験設備等の取得に伴う工具、器具及び備品の増加272百万円、建物の増加265百万円、リース資産の増加96百万円、及び投資有価証券の減少49百万円によるものである。
一方、負債合計は1,068百万円となり、同84百万円増加した。流動負債は665百万円となり、同23百万円減少した。主な要因は、分析・試験設備の取得等に伴う未払金の増加109百万円、未払費用の減少61百万円、未払法人税等の減少52百万円、及び1年内返済予定の長期借入金の減少12百万円である。固定負債は403百万円となり、同107百万円増加した。主な要因はリース債務の増加76百万円、退職給付引当金の増加21百万円によるものである。
純資産合計は3,277百万円となり、同121百万円増加した。主な要因は、当期純利益の計上219百万円、及び配当の支払98百万円によるものである。この結果、2025年6月期末の自己資本比率は75.4%と、前期末比0.8ポイント低下したものの、上場に伴う資本の充実とともに剰余利益の蓄積も進んでおり、引き続き高い財務安全性を有している。
(2) キャッシュ・フロー
2025年6月期末時点の現金及び現金同等物は1,370百万円となり、前期末比367百万円減少した。営業活動によるキャッシュ・フローは514百万円の収入(前期は637百万円の収入)となった。主に税引前当期純利益314百万円、減価償却費346百万円、法人税等の支払額157百万円などによるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは738百万円の支出(前期は429百万円の支出)となった。主にパワエレテクノセンター開設などに伴う有形固定資産の取得による支出734百万円があったことによるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは143百万円の支出(前期は431百万円の収入)となった。主に配当金の支払額98百万円、及び長期借入金の返済による支出30百万円などがあったことによるものである。
売上規模の増加傾向に伴い、営業活動によるキャッシュ・フローは安定して獲得できており、加えて株式上場などによって潤沢なキャッシュを確保している状況である。現在、研究開発や設備への投資を積極的に進めており、今後はこの潤沢なキャッシュを成長投資に向けて有効に活用していくことが課題となるだろう。
■今後の見通し
2026年6月期は増収増益予想。信頼性評価事業に加え、微細加工事業の伸長に期待
1. 2026年6月期の業績見通し
2026年6月期の業績は、売上高4,400百万円(前期比9.3%増)、営業利益405百万円(同5.4%増)、経常利益404百万円(同5.2%増)、当期純利益271百万円(同23.4%増)と増収増益を見込む。信頼性評価事業に加えて、業績が拡大している微細加工事業を中心に成長を図ることで目標を達成する考えだ。同社の主要顧客である自動車業界や電子部品、半導体関連業界等では米国の関税政策の行方等の懸念材料があるものの、これら業界での将来に向けた研究開発投資は引き続き順調に推移するものと同社は見ており、積極的な営業活動や応需に向けた研究開発投資を進めることで受注機会を漏らさず対応し、業績拡大につなげる。利益面では、営業体制強化に伴う人件費増加のほか、次世代事業への研究開発投資を前期から増やし、252百万円規模とすることで販管費・研究開発費が同274百万円増加することとなるが、計画で見込む増収に伴う売上総利益の増加295百万円で費用増をカバーする考えだ。
2. セグメント別業績見通し
(1) 信頼性評価事業
売上高は前期比8.6%増の3,859百万円、営業利益は同24.3%増の1,319百万円を見込む。パワー半導体向けパワーサイクル試験の受注は主要顧客を中心に今2026年6月期も好調に推移すると見ており、同10.5%増を見込んでいる。信頼性試験については試験メニューを拡大し、多様化する顧客からの試験・分析ニーズに応える体制強化を図る。例として、分析・故障解析分野では二次電池解析事業の拡充としてリチウムイオン電池の解析事業を拡大する。また環境試験分野では、欧州の自動車メーカーが車載向けパワーモジュール(複数のパワー半導体を1つのパッケージに集積化した製品)の品質と信頼性を評価するために用いる規格である「AQG-324」に対応する試験メニューを追加し、顧客の需要に応える体制整備と受注拡大を進める。また新規に営業所を開設した九州地区や北海道・東北・中四国といった同業他社空白地帯での販路拡大により増収を図る。売上予想としては同9.5%増収を見込んでいる。断面研磨については前2025年6月期に引き続き堅調な受注を見込んでおり、同5.9%の増収予想となった。利益面では成長戦略に向けた人員や設備増強を織り込み減価償却費等の増加を見込むものの、増収効果により前期比大幅な増益を予想している。
(2) 微細加工事業
売上高は前期比18.0%増の488百万円と2ケタ増収、営業利益は同11.3%増の205百万円を見込む。売上面では、表面処理技術については前期の大手メーカーからの受注等の継続が見込まれ、同1.3%増を予想している。レーザ加工については既存顧客からの受注のほか、新たに医療機器関係の案件獲得に向けた活動を推進することで同26.1%増と大きな伸びを見込んでいる。利益面では拡販活動に伴う人件費増等を見込むものの、増収効果がそれを上回り増益となる予想である。
(3) その他事業
売上高は前期比8.5%減の53百万円、営業利益は3百万円(前期は13百万円の損失)を見込む。バイオ遺伝子検査案件が終息し減収の見通しであるが、バイオ信頼性試験は堅調に推移することが予想されており、販路拡大で増収への足掛かりを掴みたい。利益面では減収を見込む中で費用抑制を図ることで黒字転換を目指す。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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