日本情報C Research Memo(7):市場シェア拡大や顧客単価増を推進
1. 中期経営計画(2025年6月期〜)
日本情報クリエイト<4054>は成長戦略の基本方針を「仲介・管理2つのソリューション事業でシェア拡大を図る」としている。2024年8月に策定した中期経営計画では、2025年6月期~2027年6月期を前中期経営計画(2022年6月期~2024年6月期)の「成長投資期」に続く「成長推進期」と位置付けて、マーケット規模の大きい仲介市場でのシェア拡大、管理ソリューション領域のサービス深化による顧客単価増などを推進する。そして成長拡大期と位置付ける次期中期経営計画期間(2028年6月期~2030年6月期)につなげ、東証プライム市場への移行を目指す。
なお、業績目標値としては最終年度2027年6月期の売上高7,500百万円、営業利益2,000百万円、営業利益率26.6%を掲げていたが、「リアプロBB」の一部にシステム障害が発生し、再統合の時期が未定となった。このため、将来予測に影響を与える要素が多い状況で精緻な業績見通しの提示が適切でないと判断し、2027年6月期以降の数値計画を非公表とした。ただし中長期的な成長の基本方針・方向性に変化はない。
市場別の成長テーマとして、不動産仲介会社向けの仲介ソリューションでは新規顧客獲得やクロスセルを加速し、マーケット規模の大きい仲介市場におけるシェア拡大に注力する。賃貸管理会社向けの管理ソリューションでは、バージョンアップした「賃貸革命11」による競合優位性を維持しながら、既存の有償サービスの深化や新たな価値提供などにより、さらなる市場シェア拡大と顧客単価増に注力する。また仲介と管理を結ぶ一気通貫のサービスラインナップを強化するとともに、中長期成長に向けた第三の矢として、仲介・管理市場で得たデータを活用する新たな事業への投資を継続する。また開発・営業の強化に向けてM&Aやアライアンスも活用する。直近では2024年12月に、賃貸管理会社・マンションデベロッパー・ハウスメーカー・不動産仲介会社等向け福利厚生サービスや社宅コンサルを主力とするBcanと資本業務提携を締結したほか、Webシステムをワンストップで提供するシステム開発のYoufitを完全子会社化した。
2026年6月期は記念配当も実施して大幅増配予想
2. 株主還元策
株主への利益還元については、企業価値を継続的に拡大し、株主に対する利益還元を行うことを重要な経営課題と認識しており、企業体質の強化と将来の事業展開のために内部留保を確保しつつ、安定的かつ継続的に業績の成長に見合った成果を配当することを基本方針としている。この基本方針に基づいて、2025年6月期の配当は前期と同額の年間5.00円(期末一括)とした。配当性向は11.1%となる。2026年6月期の配当予想については、2025年8月22日に上方修正を公表し、1株当たり年間配当金を前期比6.00円増配の年間11.00円(期末普通配当8.00円に加え、上場5周年記念配当として3.00円の中間配当を実施)とした。修正後の配当性向は21.6%となる。
さらに株主優待制度を新設し、2024年12月31日時点の株主を対象としてQUOカード500円分を進呈した。今後は毎年12月31日時点で1単元(100株)以上を1年以上継続保有している株主を対象として、QUOカード500円分を進呈する予定だ。
なお同社は2025年8月22日付で、同社株式の流動性の向上とともに株主層の拡大を図ることを目的として株式売出しを発表した。同時に、株式売出しに伴う同社株式需給への影響を緩和するとともに、株主還元水準の向上及び資本効率の改善を図り、さらに経営環境の変化に対応した資本政策を遂行する観点から、自己株式取得(上限は200,000株又は200百万円、取得期間は2025年9月9日から2026年3月31日まで)を発表した。
事業を通じて社会課題の解決に貢献
3. サステナビリティ経営
同社はサステナビリティ経営に関して、現時点では具体的な目標や取り組みを設定していないが、中期ビジョンに「テクノロジーで不動産領域に革新的プラットフォームを創造する」を掲げているように、事業を通じて社会課題の解決に貢献する方針だ。なお持続的な成長、企業価値の向上、さらにコーポレート・ガバナンスを強化することを目的として、代表取締役2名体制としている。
高収益構造と中長期成長ポテンシャルを評価
4. 弊社の視点
同社はストック売上比率が7~8割で利益率の高い収益構造を特長としている。さらに同社が展開する不動産関連市場は規模が大きく、特に中小規模事業者の多い仲介市場ではDXによる業務効率化の流れが加速すると予想する。同社にとって事業環境は良好であり、仲介・管理の2つのソリューションにおいて市場シェア拡大余地も大きい。この高収益構造と中長期成長ポテンシャルを弊社では評価している。同社が成長ドライバーの一つと位置付けていた「リアプロBB」については本格展開が後ズレすることになったものの、その影響は限定的と考えられる。したがって引き続き高成長が期待できると弊社では注目している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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