サーラ Research Memo(7):非エネルギー分野を伸ばし“暮らしのSALA”の確立を目指す
1. 2030年ビジョンと第5次中期経営計画の進捗
サーラコーポレーション<2734>では、2030年ビジョンとして「私のまちにSALA、暮らしとともにSALA」を掲げ、その実現を目指している。目指す姿として、1) SALAブランドの確立、2) 質の向上、3) 住まい分野の飛躍的成長、4) 自ら考え、行動する人づくり、5) 社会価値向上の5つを定めた。エネルギー領域を主力として成長してきた同社であるが、2030年ビジョンでは、非エネルギー事業(住まいやエンジニアリング分野など)を伸ばしつつ、事業ユニットの枠を越えた総合力を発揮し、暮らしの新しい価値を提供する戦略を明確にしている。数値目標としては、2030年11月期に売上高で2,800億円、営業利益で120億円を目指す。この目標は、2024年11月期の実績と比較すると、売上高で1.16倍、営業利益で1.90倍となる。これまでは、安江工務店の連結子会社化によるリフォーム事業の拡大、電力事業やエンジニアリング&メンテナンス事業の成長など顕著な成果を挙げており、目標達成に期待が持てる。
第5次中期経営計画では、新しい価値の創造と事業変革を実現するため、3年間累計で150億円の積極的な成長投資を計画した。2年半を終了した時点で累計147億円の投資を完了し、順調に進捗している。内訳としては、GX・新分野への投資(系統用蓄電所など)が70 億円、DX投資が 16 億円、人的資本投資が15 億円、資本提携・M&A 投資が46 億円である。
2. 蓄電事業開始により電力事業の成長加速へ
同社は2016年より電力小売り事業に参入し、事業の育成を図ってきた。これまで、電力小売りに加え、太陽光発電、蓄電池、コジェネレーションシステムなど顧客の省エネやカーボンニュートラル化を支援する取り組みを行ってきた。2025年11月期中には、系統用蓄電所2ヶ所の稼働を開始する。具体的には、サーラ浜松蓄電所(NAS(R)電池、出力11,400kW、容量69,600kWh)、サーラ東三河蓄電所(リチウムイオン電池、出力1,999kW、容量7,520kWh)で、再生可能エネルギー普及に向けた調整力の提供や電力品質の維持などが目的である。将来的には、顧客の節電量(ネガワット)を電力市場で売買するアグリゲーションビジネスへの参入も視野に入る。顧客の電気料金削減メリットを還元することで新規顧客の拡大につなげ、新たな収益源として確立するねらいがある。長期ビジョンにおいては、売上高を現状の160億円から40%以上伸ばし、2030年に230億円規模を目指す。
3. 安江工務店の子会社化とインテグレーションの進行
同社は、2025年2月に安江工務店を完全子会社化した。2024年12月期の安江工務店の売上高は8,082百万円、営業利益は340百万円、純資産は2,588百万円である。売上構成比の80%以上を占める住宅リフォーム事業では、戸建住宅やマンション等の網戸の張り替えやメンテナンスから、自然素材を使用したデザイン性の高いリフォーム・リノベーションや増改築に至るまで、幅広い価格帯や客層に対応した総合的なサービスを提供している。安江工務店のグループ化により同社のリフォーム事業売上高は100億円から 160 億円規模に拡大する。
現在、安江工務店とのインテグレーションが進行中である。安江工務店が保有するデザイン、設計、積算、施工、現場管理等バックヤード業務の高度なノウハウを既存リフォーム事業へ移植することで事業モデルの収益性の底上げを図る。また、安江工務店は名古屋・尾張地域を主力エリアとするため、顧客基盤(約50万件)の相互活用により収益機会を拡大するほか、新たなマーケットの開拓(周辺エリアの拡大、高単価リフォーム)、施工店や職人の共通化による人手不足への対応、資材購入の共同化によるコストダウンなどの取り組みも検討し、順次実行に移されている。双方の強みを生かした事業シナジーを創出することで、ストック住宅ビジネスモデル(住宅取得→リフォームなど維持管理→住替・相続)を強化する考えだ。
4. 資本コストや株価を意識した経営
同社は、PBRの改善を重要な経営課題と認識し、取締役会や指名・報酬委員会で議論を重ね矢継ぎ早に対策を打ち出している。
長年にわたり利益が積み上がり、自己資本が増加したことに伴い、ROEは伸び悩みの傾向にある。2024年11月期末のROEは前期末比1.7ポイント低下の6.5%である。今後はROEを向上すべく資本効率の向上を図り、積極的な成長投資及び財務戦略を実行し、2030年までにROE10%以上を目指す。
PBRの改善については、2025年7月17日に開催された決算説明会の質疑において、投資家からPBR1倍の達成時期について質問があったところ、同社からは「遅くとも 3 年以内の実現を目指す」との回答があった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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