テリロジーHD Research Memo(7):2026年3月期通期は大幅増収増益予想
● 2026年3月期連結業績予想の概要
2026年3月期の連結業績予想は売上高が前期比12.1%増の9,700百万円、営業利益が同64.7%増の450百万円、経常利益が同37.5%増の450百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同59.1%増の280百万円とし、大幅増収増益予想としている。売上面は高水準の需要を背景に各事業とも伸長し、特にセキュリティ部門の大幅伸長がけん引する見込みだ。事業別売上高の計画は、ネットワーク部門が同3.0%増の1,707百万円(売上高構成比17.6%)、セキュリティ部門が同22.7%増の4,141百万円(同42.7%)、ソリューションサービス部門が同6.4%増の3,850百万円(同39.7%)としている。利益面は引き続き人的資本投資に伴って人件費などが増加するが大幅増収効果で吸収する。一部製品の価格改定も進める方針だ。為替レートについてはおおむね前期並みの水準を前提としている。なお米国関税政策の影響については、同社グループにとって直接的な影響は小さいものの、世界的な景気動向の不透明感を考慮して各利益はやや保守的な予想としている。需要が堅調であり、為替が前期よりも円高・ドル安水準で推移していることなども勘案すれば、好業績が期待できると弊社では考えている。
■成長戦略
グループ事業ポートフォリオ拡充やストック型ビジネスモデルへの転換を推進
1. テリロジーグループ新3ヵ年中期経営計画(2026年3月期〜2028年3月期)
同社グループは事業環境の変化に対応すべく、毎年度改定するローリング方式によって中期経営計画の目標数値見直しを行っている。2025年6月に公表した2026年3月期〜2028年3月期を対象年度とする「テリロジーグループ新3ヵ年中期経営計画」では、目標数値として2026年3月期の売上高97億円、経常利益4.5億円、2027年3月期の売上高110億円、経常利益6.0億円、2028年3月期の売上高120億円、経常利益10.0億円を掲げている。
基本方針に大きな変更はなく、目指す集団像を「自由な発想力、着実な行動力、そして実現力を保有するプロフェッショナルなイノベーション力溢れる企業集団を目指します」としている。事業環境としては産業のDXが急速に進むなか、産業構造も大きく変化・進化することを想定している。そして同社グループは、このデジタル変革の期を大きなチャンスと捉え、「安心・安全なデジタルの活用を支えるサイバーセキュリティ技術の提供」「簡単で負担を感じないクラウドサービスの提供」「ログ解析・管理からデータマネジメント技術の提供」を挑戦領域の軸として、国内外の市場を問わず顧客のDX推進に貢献する方針だ。
目標達成に向けての重要施策としては、(1) グループ連携によるストック型事業モデルへの強化・人材育成、(2) グループ事業ポートフォリオのさらなる拡充・拡大、(3) グローバルな事業展開を推進する。顧客が抱える情報システムやセキュリティに関わる現場課題の解決にとどまらず、観光DXや環境DXに関わる社会課題解決など、今後の社会にとって「必要不可欠な新たな課題領域」に向けての意欲的な挑戦も推進する。また、同社グループにとって従来はやや手薄だった製造業向けについても、高千穂交易との協業等により、産業制御システム分野(OT/IoTシステム分野)を中心に営業を強化する。さらに、新商材の投入や人材活用も積極化し、若い世代を中心とする新プロジェクト等も推進する。今後のM&A・アライアンス戦略の基準については、対象領域をIT技術・専門商社・販売系領域、アジア圏・新興IT系技術商社、セキュリティソリューション領域、クラウド技術領域など、獲得年商を1案件当たり5~10億円の規模感、投資予算規模を約10~20億円規模としている。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応では、株主・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの期待に応え、同社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現していくため、資本コストを意識し、健全な財務体質を維持させていくことが重要な経営課題であると認識している。そしてROE(自己資本利益率)を重要な指標と捉え、中長期的にROE10.0%(2025年3月期実績6.6%)を目指す方針だ。事業展開を加速させるための従業員エンゲージメント向上への取り組みとしては、従業員の賃金引き上げに加え、従業員持株会の奨励金付与率の引き上げなども実施している。
株主還元は業績に基づいた配当を実施
2. 株主還元策
株主還元については、株主尊重を経営戦略の重要課題と認識し、業績に基づいた配当を実施することにより、株主への利益還元に取り組むことを基本方針としている。この基本方針に基づいて2025年3月期の配当は前期(普通配当5.00円+記念配当2.00円)比2.00円減配の年間5.00円(期末一括)とした。2024年3月期に実施した記念配当2.00円を落とした形であり、普通配当ベースでは同額となる。配当性向は47.7%となる。2026年3月期の配当予想は前期と同額の年間5.00円(期末一括)で、予想配当性向は30.5%となる。
持続的な利益成長・利益率向上施策の進捗に期待
3. 弊社の視点
同社グループは「目利き力と市場対応力」をコアコンピタンスとして、海外先端技術の日本市場への導入・普及に豊富な実績を持っている。この点を弊社では評価しているが、一方で、為替変動リスクの低減やストック収益の拡大による持続的な利益成長及び利益率向上を実現することが同社グループの課題と考えられる。こうした課題に対して同社グループは、M&A・アライアンスを積極活用し、グループ連携による事業ポートフォリオの拡充やストック型事業モデルの拡大という方向性と、2028年3月期に経常利益率を8.3%(2025年3月期実績は3.8%)に上昇させる計画を打ち出している。DXの進展に伴ってセキュリティ対策ニーズが高まるなど、同社グループを取り巻く事業環境は良好であるだけに、持続的な利益成長・利益率向上施策(為替変動リスク低減策、ストック収益拡大戦略、売上ミックス改善戦略など)の進捗に期待したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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