テリロジーHD Research Memo(6):2025年3月期は円安影響等で営業利益横ばいだが大幅増収
1. 2025年3月期連結業績の概要
2025年3月期の連結業績は売上高が前期比25.8%増の8,653百万円、営業利益が同0.3%増の273百万円、経常利益が同17.6%減の327百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.7%減の176百万円となった。受注高は同34.2%増の10,021百万円で、期末受注残高は同56.1%増の3,807百万円となった。平均為替レートは1米ドル=152.62円(前期比8.05円のドル高・円安)となった。営業利益は為替の円安影響によって輸入商品の仕入価格(ライセンス料)が上昇したほか、人的資本投資に伴う費用の増加などで同横ばいにとどまったが、売上面は各部門の需要が堅調に推移したほか、ソリューションサービス部門におけるM&A効果(ログイットの新規連結)も寄与して大幅増収と順調だった。
事業別の売上高はネットワーク部門が前期比6.2%増の1,657百万円、セキュリティ部門が同12.3%増の3,375百万円、ソリューションサービス部門が同56.4%増の3,620百万円となった。売上総利益は同22.9%増加したが、売上総利益率は同0.7ポイント低下して32.6%となった。販管費は同25.9%増加したが、販管比率は同横ばいの29.4%となった。営業利益率は同0.8ポイント低下して3.2%となった。なお営業外では為替予約によって為替差益が同7百万円増加(前期は83百万円、当期は91百万円)した。またデリバティブ評価損益が同56百万円悪化(前期は評価益29百万円、当期は評価損26百万円)したほか、通貨スワップ評価損失23百万円を計上した。この結果、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は減益となった。
セキュリティ部門、ソリューションサービス部門が大幅伸長
2. 事業別の動向
ネットワーク部門はおおむね堅調に推移して増収となった。昨今のサイバー脅威の変化に対して、安心・安全なネットワーク環境構築需要、DDoS攻撃からWebサイトやサーバを守るネットワークセキュリティ対策需要が高水準に推移した。主要商材であるIPアドレス管理サーバ製品「Infoblox」は既存顧客のリプレイス案件、追加導入案件、バージョンアップ作業などにより大幅増収となった。DDoS攻撃対策等の「Radware」は減収となったが、新規顧客獲得に向けた営業活動を強化し、引き合いが増加傾向である。安心・安全なネットワーク環境構築に向けたクラウド型無線LANシステム「Extreme」は大幅増収となった。柔軟なモビリティが求められる無線LANにおいて、長年利用されたアクセスポイントのリプレイス案件が増加した。
セキュリティ部門はセキュリティ対策ニーズの高まりを背景に2ケタ増益と好調だった。特に、産業制御システム分野のOT/IoTセキュリティ関連の「Nozomi Networks」が大幅増収となった。電力会社をはじめとする社会インフラ事業者において対策強化の動きが広がった。CTIセキュリティサービスも大幅増収となった。ネット上で発信・拡散される偽情報による世論操作などのリスクが高まっていることなどを背景に官公庁からの受注が好調だった。このほか、ログ情報から脅威をいち早く正確に捉えることができる「Sumo Logic」も伸長した。一方で、ネットワーク不正侵入防御セキュリティ製品「TippingPoint」、不正取引対策のワンタイムパスワード製品「OneSpan」は減収となった。
ソリューションサービス部門はログイットの新規連結も寄与して大幅増収となった。同社グループ独自開発のRPAツール「EzAvater」は認知度の高まりにより、業界・業種・規模を問わず採用が拡大基調となっている。多言語リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」は、訪日外国人旅行客・インバウンド需要の増加に伴い、百貨店・小売店舗、駅・空港、宿泊施設など1件当たりID数の多い施設での導入が進展している。訪日インバウンドメディアを活用したプロモーション事業を展開するIGLOOOも訪日外国人旅行客・インバウンド需要の増加に伴い、官公庁・自治体・民間企業からのPR需要が拡大している。情報システム業支援・システム受託開発のクレシードは、DX推進支援に関連するサーバのリプレイス案件やネットワークの追加案件などが増加した。企業向けコンタクトセンターソリューションを展開するログイットも、新たに金融コンプライアンス向け通話録音ソリューションを受注するなど順調だった。
財務面の健全性を維持
3. 財務の状況
財務面で見ると、2025年3月期末の資産合計は前期末比210百万円増加して7,109百万円となった。主に現金及び預金が同254百万円減少した一方で、受取手形・売掛金及び契約資産が同149百万円増加、前渡金が同286百万円増加した。負債合計は同95百万円減少して4,238百万円となった。主に未払法人税等が同111百万円減少したほか、有利子負債残高(長短借入金合計)が同91百万円減少して277百万円となった。純資産合計は同306百万円増加して2,870百万円となった。資本剰余金が同119百万円減少した一方で、利益剰余金が176百万円増加、自己株式(減算)が255百万円減少した。この結果、自己資本比率は3.0ポイント上昇して39.7%となった。特に大きな変動項目は見当たらず、キャッシュ・フローの状況にも特に懸念される点は見当たらない。財務面に配慮した規律ある企業価値向上戦略を推進し、財務の健全性が維持されていると弊社では評価している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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