unerry Research Memo(5):2024年6月期は増収増益、リカーリング顧客化が堅調に進捗
unerryは2024年6月期に売上高を2,834百万円(前年比36.5%増)、営業利益を179百万円(同409.3%増)と大幅な増収増益を達成しました。売上の90%を占めるリカーリング顧客の数は順調に増加し、クロスセル戦略によって顧客単価やNRRも前年同水準を維持しました。小売・外食向け事業、スマートシティ事業、リテールメディア事業がいずれも大幅に成長し、特に分析・可視化サービスが45.5%増加しました。効率的な販管費管理も利益に寄与しました。自己資本比率は77.4%と健全な財務状況を維持しています。
1. 2024年6月期の業績
2024年6月期の業績は、売上高2,834百万円(前期比36.5%増)、営業利益179百万円(同409.3%増)、経常利益134百万円(同286.5%増)、当期純利益68百万円(同629.5%増)と増収増益で着地した。期初計画に対する達成率は、売上高は97.8%とわずかに未達となったものの、売上総利益は103.6%、営業利益は153.0%、当期純利益は104.6%と計画を達成した。売上高の90%を占めるリカーリングの顧客数が堅調に伸び、前期比31社増の109社となったほか、リカーリング顧客に対するクロスセル施策を着実に実行したことで、年間顧客単価23百万円、NRR124%と、前年度同水準の高いレベルを維持し、売上増に寄与した。事業別に見ると、主力の小売・外食産業向けのリテールDX事業で顧客獲得が堅調に推移し、前期比15%増の2,025百万円を計上した。不動産・自治体・官公庁向けのスマートシティ事業は前期比129%増の519百万円を記録した。全国の自治体が行う街づくり関連等の事業を調査して同社サービスを積極的に提案した結果、公募案件の獲得が進み、売上面に大きく寄与した。また消費財メーカー向けのリテールメディア事業は、業務提携先や直販での受注が堅調に伸び、前期比288%増の283百万円となった。サービス別では分析・可視化サービスが大きく伸長し、売上高は870百万円(前期比45.5%増)となったほか、行動変容サービスの売上高は1,191百万円(同36.4%増)と成長した。One to Oneサービスの売上高は773百万円(同27.8%増)と前期比増加した。
同社はリカーリング顧客について、4四半期以上連続して取引のある顧客企業、及び直近3ヶ月以上連続で取引のある新規顧客企業と定義し、KPIとしてリカーリング売上高やリカーリング顧客1社売上高、リカーリング顧客数を設定している。大半の新規顧客が翌事業年度にリカーリング顧客となることから、1年契約が基本の分析・可視化サービスで獲得した新規顧客に対し、行動変容サービスやOne to Oneサービスのクロスセル、及び行動変容サービスのアップセルを展開し、リカーリングを生み出す収益モデルを構築している。新規顧客獲得ルートについては、直販、提携先からの紹介、トップリレーションによる取引の3パターンが主である。従来は各種イベント開催やマーケティング活動など直販での顧客開拓が多かったが、2024年6月期は提携先を通した紹介と協働による顧客開拓が成果を挙げた。提携先企業は同社のサービス内容を熟知していることから、見込み客を効率的に開拓でき、今後の売上増加に対する期待は大きい。
利益面については、粗利率(売上総利益)37.6%(前期比3.8ポイント増)のほか、特に粗利率の高い分析・可視化サービスが大きく伸びたことや、相対的に原価率の高い行動変容サービスの粗利率改善が寄与した。行動変容サービスに属する広告配信サービス領域については、メディアに支払う広告原価が含まれ、大手の広告代理店でも粗利率は20%程度と言われているが、同社の粗利率は足もと3期で30%半ば水準を維持している。粗利率のさらなる改善に向け、独自性が高く高粗利率であるメディアの利用比率が向上したほか、業務プロセス見直しなど地道な改善により成果を残した。販管費については、従業員採用等人件費に加え、売上拡大に伴って増加した取扱データを処理するサーバーの利用料、イベント等の認知向上活動のための広告宣伝費が増加した。その結果、前期比32.8%増の886百万円となったが、増収効果がそれを上回ったことで販管費率は前期比で0.8ポイント減と改善を見せ、営業利益の増益につながった。なお営業利益については業績予想を大幅に超えたが、要因としては前述の粗利率改善に加えて、サーバー費用の削減効果(37百万円)、間接人件費や業務委託費の削減効果(25百万円)が含まれる。サーバー費用削減については、データ分析時にデータ利用方法を見直し、分析頻度の高いデータを事前集計して効率化したほか、効率的な分析手法の社内共有により費用増加を抑制した。人件費や業務委託費については、削減効果だけでなく、フロントラインで生産性向上が進んだことも成果として表れた。経常利益については、2024年6月期において北米事業展開に想定以上の時間を要していることに伴い、投資全額に対して貸倒引当金(48百万円)を営業外費用に繰り入れたことにより営業利益の伸び率を下回った。
自己資本比率は77.4%と高水準。財務の健全化が進む
2. 財務状況と経営指標
2024年6月期末の総資産は前期末比592百万円増加し2,103百万円となった。このうち流動資産が656百万円増加し2,072百万円となった。主な要因は、現金及び預金531百万円の増加と、売掛金及び契約資産の120百万円増加である。固定資産は64百万円減少し30百万円となった。要因は、同期において北米事業に関する投資金額について貸倒引当金48百万円を計上したことや、繰延税金資産の減少(27百万円)である。
負債合計は前期末比60百万円増加し474百万円となった。主な要因は、買掛金21百万円の増加、1年内返済予定の長期借入金104百万円の減少である。これにより借入金はゼロとなった。
純資産は前期末比531百万円増加し1,629百万円となった。主な要因は、新株の発行に伴って資本準備金が230百万円増加したこと、その他資本剰余金が新株発行に伴う資本金からの振替や自己株式の処分により238百万円増加したこと、及び当期純利益68百万円の計上である。
経営指標では、流動比率は前期比94.6ポイント上昇し437.1%に、固定比率は前期比6.7ポイント減の1.9%と改善を見せた。増収等によって流動性が高く、自己資本比率も77.4%と高水準であり財務は健全である。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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