
24年の日本映画界を席巻した「侍タイムスリッパー」(侍タイ)のスピンオフドラマ「心配無用ノ介天下御免」(全6話)が制作され、BS-TBSで26年7月に放送することが7日、同局から発表された。
「侍タイ」で劇中テレビ時代劇として描かれたキャラクター「心配無用ノ介」が主人公の連続時代劇ドラマで、主人公の心配無用ノ介は、映画版に続き俳優の田村ツトム(51)が演じる。映画版で脚本、原作、撮影、照明、編集など11役以上を務めた安田淳一監督(58)が、14年に設立した「未来映画社」とBS-TBSが企画し、同監督が監督・脚本・撮影も手がける。
撮影は、監督が愛車まで売り払い2600万円もの製作費を捻出し、自主映画として22年5月に企画が始動した時から全面協力した東映京都撮影所にある、東映太秦映画村が再び全面協力。26年3月28日にリニューアルオープンする同所で、同春に撮影を開始。助監督の山本優子役と並行し、製作スタッフの1人として実際に助監督も務め、製作費の一部として約240万円を立て替えた沙倉ゆうの(46)も同役で出演する。
「心配無用ノ介天下御免」は、主演の山口馬木也(52)が演じた映画版の主人公・高坂新左衛門に比肩する人気を誇った劇中劇のスター・心配無用ノ介が満を持して主人公として描かれる。心配無用ノ介は、どこからともなく現れ、決めゼリフの「心配ご無用!」を口にして悪を成敗する、飄々として掴みどころのない一流の剣客の役どころだ。物語は、超定番のベタな展開から、ベタさ自体にツッコミを入れる回、さらには制作の裏側を描く回など多岐に渡るという。昔ながらの勧善懲悪型の気楽に楽しめる娯楽時代劇を、令和の時代に斬新な仕掛けと共に復活させる狙いがある。
東映太秦映画村の全面協力を受けた撮影は、映画版同様、低予算での制作を実現しつつ、従来の時代劇とは一線を画した斬新な試みとして、撮影現場の一般への公開と、来場者による写真・動画撮影やSNSへの投稿を許可する。来場者自身が“広報マン”となることで、積極的な情報拡散と話題性の獲得を目指す。加えて、ドラマの制作を通じて映画村の撮影見学コンテンツ(ツアー)の復活も目指し、修学旅行生、海外旅行客ほか、映画村を盛り上げる、イベントの1つのイベント化も目指す。
「侍タイムスリッパー」は、24年8月17日に“インディーズ映画の聖地”と呼ばれる東京・池袋シネマ・ロサ1館で封切られ、全国380館超へと拡大公開し、興行収入10億円を突破。同年末の日刊スポーツ映画大賞で作品賞、安田監督の監督賞、山口の主演男優賞の3冠を獲得。さらに25年にはブルーリボン賞でも作品賞、主演男優賞、日本アカデミー賞でも最優秀作品賞、同編集賞と、それぞれ2冠に輝くなど、国内の映画賞を席巻した。さらに、徳間書店の月刊アニメ誌「アニメージュ」9月号(8月7日発売)で、作品のファンの、こりす氏によりコミカライズされ、11月には佐野晶氏の手によりKADOKAWAからノベライズ本も発売された。勢いは、まだまだ止まらない。
◆「侍タイムスリッパー」時は幕末、京の夜。会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、密命のターゲットである長州藩士と刃を交えた瞬間、落雷により気を失う。眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。行く先々で騒ぎを起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだと知りがくぜんとなる新左衛門。1度は死を覚悟したものの、やがて「わが身を立てられるのはこれのみ」と、磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくために撮影所の門をたたく。
