
いしだあゆみさん(本名・石田良子=いしだ・よしこ)が11日午前4時48分、甲状腺機能低下症のため都内の病院で死去した。76歳。葬儀は近親者で行われた。近年は役者としての活動が中心も、歌手として「ブルー・ライト・ヨコハマ」など多くのヒット曲を歌った。同曲を作詞の橋本淳氏や和田アキ子、秋元康氏らゆかりの著名人も故人を悼んだ。
◇ ◇ ◇
抑揚をそれほどつけず、クールに歌う。いしださんの歌手の原点はジャズにある。
14歳で上京し、いずみたくさんに師事した。学校が終わると、東京・赤坂のナイトクラブで制服をロングドレスに着替えて前座歌手を務めた。歌ったのは「ソフト・アンド・クールな歌声」と評されたペギー・リーや、クリス・コナーの曲。1年で1000曲覚えた。かつてインタビューで「ジャズを歌っていた時の方が今よりうまかった。お金とか仕事とか考えなかったから」と話した。
代表曲は「ブルー・ライト・ヨコハマ」。横浜を舞台に選んだ作詞の橋本淳氏が夜、港の見える丘公園から、川崎の工業地帯を見た。発売された1968年当時、まだ周辺は暗く工場の明かりが海に青く揺れていた。タイトルは浮かんだが、歌詞が浮かばず、横浜の街を歩き回った。「歩いても 歩いても」という歌詞ができた。
歌詞には横浜を象徴する海や、異国情緒はまったく出てこない。いしださんはそれでも横浜を舞台とした男女の愛をクールに歌い上げた。この大ヒット以後、横浜の夜景は青色に変わり恋人の聖地となった。
後年、同曲を歌わなくなったいしださんは「ブルーライトは目に悪いって。ごめんね」と語り、周囲を笑わせたという。【笹森文彦】