- BUBKA(ブブカ) 2018年6月号 (2018年04月28日発売)
Fujisan.co.jpより
今年結成10周年を迎えた、ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)。
5月22、23日、東京ドームで「10th Anniversaryコンサート The Diamond Four -in桃響導夢-」を開催し、2日間合計8万2907人を動員した。今や、日本の女性アイドルにおける年間コンサート観客動員数は、1,2位を争う。苦節10年、まさに業界屈指のトップアーチストへと成長を遂げた。
10週年を記念する東京ドームライブということもあって、いくつかの雑誌では特集を組まれるほど大々的に取り上げられ、またライブの模様は翌朝のTVワイドショーやスポーツ紙でも報じられた。ももクロに興味がなくてもそのフィーバーぶりを聞いて知った人は多かっただろう。
観客140人!?
そんな東京ドームコンサートから11日後の6月4日(月)、4人は再び都内のステージに降臨する。ファンじゃない人は知らないかもしれないが、場所は、なぜかデパートの松屋銀座・屋上である。
「デパートの屋上? そんなに広いの?」
「チャリティーライブ? お客さん1000人くらい?」
なんて、思う人もいるかもしれない。
観客は、たった140人。
ステージは、なんとビアガーデンに設置された小さなステージ。
— momoiroclover (@momowgp) 2018年6月4日
デパートの屋上といえば、昔は新人アイドルのキャンペーンの定番。ビアガーデンのステージといえば地元バンドや芸人の営業などが賑やかす場だ。つい数日前、ドームで8万人を集めたアーチストが一転デパートの屋上で140人を前に歌う。このギャップに違和感タップリだ。
ただ、実はコレ、松屋銀座で開催していた「ももクロ結成10周年記念展 ~サイリウムが照らす未来~」という展示イベントの最終日を飾るプレミアムライブとして行われたものだった。
オープニングでは観客と一緒に乾杯。またこの日はメンバーの玉井詩織さんが23歳の誕生日ということもあって小さな空間はしばし祝賀ムードに包まれた。
そしてももクロはその小さなステージで12曲を歌って踊った。なんと言っても客との距離が近い。広いドームではフロートという派手な装飾を施したトロッコに乗ってホールを周回したが、この屋上ではデパートらしく荷物を搬入する台車をフロートに見立て、これに乗って歌うという演出で笑いも誘った。
— momoiroclover (@momowgp) 2018年6月4日
トである(笑)。しかしももクロ陣営は、デビュー時の路上ライブやデパート広場、電気量販店でのドサ回りライブ時代を決して忘れず、時として「初心」に戻る。何より、彼女たちもそれを楽しんでいるところが愛らしい。性別年令問わず広いファン層を誇るももクロ、好かれるワケがそこにあるのかもしれない。
ももクロも天狗!?
ももクロは芸能界レベル的にはVIPである。話を少し変える。
芸能界は特殊な世界で、人気があれば10代の若いタレントでも大人がVIP扱いしてくれる。そうなると、“自分は偉い・凄い”と勘違いして天狗になるのは珍しくない。特に一昔前は多かったし、少しくらい生意気じゃないと売れない、と言われる時代もあった。
これは、ある芸人さんが話してくれたのだが
「売れると勘違いするもの。勘違いするほど売れるって凄いけどね。でも早めに勘違いに気づかないとダメ。一度勘違いを経験すると“あ~勘違いしてるな~”って人がよく分かるから反面教師になるよ」
自分で勘違いに気づけるか、あるいは周囲から気付かされるか、天狗の鼻は早めにへし折られたほうがいい、それが重要だと言っていた。
ももクロは天狗か? これは数年前にあったエピソード。人気が急上昇してきた頃、所属事務所のアイドルが一同に集うイベントのリハーサル中に、ももクロの一人が「これ、私達じゃなくてもよくない?」などという発言をしたそうだ。あるスタッフは「これはいけない」と思った。
“天狗”とも受け取れるが、本人は後輩に譲って出番を与えるほうが良いと考えたのかもしれない。真相はわからないが、スタッフはそのメンバーを諭した。気づいてくれる素晴らしいスタッフがそこにいた___。
好かれるということ
ももクロも10年間のどこかで天狗になった時期はあったかもしれないし、あっても不思議じゃない。でも確実に言える、今はない。というのも、ももクロを悪く言う業界人を知らない(知らないだけで0とは言い切らない)。
例えば、タレントは主にプロデューサーやディレクターと接するのでその人の名前は覚えるが、ももクロは技術さんや若いスタッフの名前まで覚えるそうだ。もちろん全員ではないだろうが、ただ、これは裏方からするとかなり嬉しいこと。彼女たちは人を色眼鏡で見ない。
こんな話もある。バラエティ番組等に出演する際は、必ず自分たちで考えた“ネタ”を用意してくる。それはトーク内容だったりパフォーマンスだったり色々だが、コレ、ゲストなら当たり前の準備と思われるかもしれないが、“どうせMCがいじってくれるだろう、自分を助けてくれるだろう”と甘えてノープランで来る者は結構多い。逆に言うと、爪痕を必ず残そうという貪欲さがあるわけだ。
更に、地方のテレビなどに出演する際は、ローカルなタレントの名前も局アナの名前も事前に覚え、番組のコーナーのことなども下調べしてくることもあるそう。このように、プロ根性とサービス精神には感心させられるそうだ。
また、ももクロは、どんな大御所有名人でも新人でも、そして素人でも、一緒に仕事をする演者に対し別け隔てなく接する。そして、本番前の楽屋挨拶では、ステージでもお馴染みの決め文句「私たち今会えるアイドル、週末ヒロインももいろクローバーZ!ヨロシクお願いします」とポーズを決め、どんな人にも頭を下げることを欠かさないとか。
THE・ALFEEの坂崎幸之助さんは、音楽番組のレギュラーを一緒にやることになり、最初は仕事のパートナーくらいにしか思っていなかったが、みんなの人柄や音楽に対する姿勢、パフォーマンスの凄さを見て、お父さんのような目線でどっぷりハマった一人。
さだまさしさんは、「ももクロはいいね、礼儀正しいし、適度にバカだし」(笑)とプチディスりつつ、いろんな場所でももクロのことを話すほど気に入っているらしい。このように、ももクロと出会って、彼女たちの虜になってしまった芸能人は一人や二人じゃない、“業界内モノノフ”は増殖し続けている。
考察だったが、ももクロが業界で好かれるワケがわかっていただけただろうか。
出典:http://www.fujitv.co.jp/FOLKMURA/
おとしよりからこどもまで
「ももクロは、お年寄りから子どもまで、おはようとおやすみを届ける活動を推進して参ります」とは、ビアガーデンのステージで、高城れにさんがオープニングの挨拶として放った言葉である。
ドームもデパート屋上も、数万人も140人も同じ、フィールドを選ばずそのシチュエーションで魅せられる最高のパフォーマンスでみんなを笑顔にする。ももクロはどんなビッグアーチストに成り上がっても、尊いVIPではなく、今会える庶民派アイドルでいてくれるはずである。