
株式会社ZIAIと大阪府豊中市が連携し、生成AIを用いた子育て相談チャットボットの実証実験を令和7年10月8日から開始します。傾聴・窓口案内・専門家AIの三段階機能を段階導入し、24時間で孤立しがちな子育て世帯を支える取り組みです。
生成AIを活用した「傾聴→案内→専門家回答」の実証概要
今回の実証実験は、ZIAIが開発した傾聴AIアルゴリズムを基盤に、豊中市内の子育て世帯を対象に実施されます。実施期間は令和7年10月8日から令和8年2月28日までで、24時間365日利用可能なチャットボットとして段階的に機能を開放します。背景には、核家族化や共働きの増加で「相談相手が近くにいない」「平日日中に相談できない」といった現代の子育て支援の構造的課題があります。SNS上のつながりが表面的で本音を打ち明けにくいといった心理的ハードルも見逃せません。こうした課に対して、AIによる常時の寄り添いを提供することで、潜在的なニーズを可視化し、支援につなげる狙いです。
実証ではまず「傾聴・共感機能」を提供し、話を聴くことで孤立感の軽減や心理的安定を図ります。その上で主訴を整理して適切な窓口やサービスへ自動的に案内する「窓口・サービス案内機能」を段階導入します。さらに、産婦人科医・小児科医・保育士・助産師が過去に回答したQ&Aデータを活用した「専門家AIによる回答機能」も実装し、利用者の困りごとに対してより具体的な意見提供を目指します。これら3つの機能を組み合わせることで、必要な支援を早期に発見し、適切な専門窓口へつなぐことが期待されています。
行政側のメリットとしては、軽微な相談をAIが一次対応することで職員は専門性の高い相談に集中でき、対面相談の質と効率が向上する点が挙げられます。事前に相談内容が整理されることで面談の時間短縮や的確な支援につながる見込みです。また、「もっと社会に頼っていい」というメッセージを一貫して発信することで、支援を求めることへの心理的抵抗を下げ、社会全体で子育てを支える文化づくりにも寄与することが期待されています。
提供事業者であるZIAIは、もともと自殺対策を目的とした非営利のAI研究機関として設立され、その傾聴アルゴリズムを社会実装するために事業会社としてスピンアウトした企業です。今回の実証は、住まいや年齢、経済状況にかかわらず誰もが悩みを相談できる社会の実現を目指すという同社のミッションにも合致します。実証の結果を踏まえ、どの程度の相談がAIで対応可能か、専門家や窓口への連携精度がどう向上するかが今後の焦点となります。
詳しくは「株式会社ZIAI」のページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權
