
MDの「世界デジタル競争力ランキング2024」で日本は前年より1つ上がって31位。首位はシンガポール、スイスは5位から2位へ躍進しました。技術面の改善は見られる一方で、人材や経営層の国際経験など根深い課題が浮き彫りになっています。なぜ日本は世界の潮流に追いつけないのか、ランキングの中身から読み解きます。
IMD評価の構造と日本・スイスの明暗
IMDランキングは67カ国・地域を対象に「知識」「技術」「将来への準備」の3要素、さらに9のサブ要素と59の評価基準で国別のデジタル競争力を測っています。単なるインフラの有無だけでなく、教育・規制・社会の準備度合いまで含めた包括的な指標です。今回の結果は各国の「強み」と「弱点」を細かく可視化しています。
スイスは「知識」で4年連続首を維持し、「技術」は前年10位から4位へ大幅改善、「将来への準備」も6位から5位に上がりました。9つのサブ要素のうち7つが上位10位以内に入り、人材(3位)、規制枠組み(2位)、科学的集中(2位)などで高評価です。ハイテク輸出9位、サイバーセキュリティ11位、オンライン行政サービスの活用は11ランク上昇して27位になるなど、研究・産業・規制が連動した成果が表れています。
一方、日本は総合で31位。要素別では「技術」が26位へ6ランク改善した反面、「知識」は31位に3ランク低下、「将来への準備」は38位へ6ランク下落しました。高等教育の教師1人当たりの学生数(3位)や無線ブロードバンド普及(2位)、オンライン行政サービスの活用(1位)など一部指標は強いものの、上級管理職の国際経験やデジタルスキル獲得、企業の俊敏性、ビッグデータ活用といった項目で極めて低い評価が続いています。特に「経営層の国際経験=67位」「デジタルスキル習得=67位」「企業の俊敏性=67位」は、日本のDXが組織・人材面で大きな課題を抱えていることを示します。
今回の結果は、日本がハード面や一部インフラで優位性を持ちながらも、人と組織の変革で遅れを取っている現実を浮き彫りにしました。技術投資だけで全体順位は押し上げられないことが明確です。世界上位の国々が示すように、高度外国人材の受け入れ、知的財産の執行力、産学連携など多面的な取り組みが総合力を形成します。日本は評価の分解結果を踏まえ、人材育成と経営層の国際経験をどう補うかが今後の焦点となるでしょう。
ランキングは単なる順位表ではなく、改善の「優先地図」です。日本はインフラや教育面の強みを生かしつつ、経営層の国際経験とデジタルスキルの底上げに集中的に投資すべきです。人と組織の変革を進めれば、総合的なDX競争力は確実に向上できると考えます。
レポート/DXマガジン編集部
