
超高齢化と過疎化で通院が困難になる日本。AWSジャパンと神戸大学は、生成AIやクラウドで「医療MaaS」を構築し、移動・データ・医療の一体化で医療アクセスを再設計します。教育・研究・臨床を横断する包括連携の全貌を解説します。
クラウドと生成AIでつなぐ「人・モノ・データ」の流れ
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)と神戸大学が締結した包括連携協定は、日本が直面する超高齢化や地域の過疎化による院困難、地域医療格差の解消を狙いとしています。本連携の中核は「医療MaaS(Medical Mobility as a Service)」。患者・医療スタッフ・検体・薬・診療データといった「人・モノ・データ」を、自宅から病院、在宅ケアまで切れ目なく行き来させる次世代医療インフラの構築です。AWSのクラウド基盤を用い、移動を単なる交通ではなく医療資源の連続的な受け渡しと定義し、病院中心の医療から患者中心の医療へ転換を図ります。
具体的には、Amazon Bedrock による生成AI基盤と、Amazon SageMaker を活用した予測モデル、Amazon S3 による安全なデータ保管、AWS IoT を通じた生体データ収集、そして Amazon QuickSight による可視化など、AWSの各種マネージドサービスを組み合わせて『医療MaaS』プラットフォームを構築します。これにより、患者一人ひとりに最適な医療機関や移動手段の推奨、診療予約のシームレス化、薬の受け渡し効率化など日常的な利便性の向上が期待されます。神戸大学は医学生や研究者が実データを用いて医療アクセス最適化の研究に携われるよう教育・研究環境も整備します。
連携は医療MaaSに留まらず、スポーツメディカル分野や高度な研究基盤、医学教育のデジタル化、国際共同研究、地域医療連携、メディカル・アントレプレナーシップ育成まで7分野に及びます。スポーツ分野ではヴィッセル神戸等の知見を活かし、IoTデバイスとAWS IoT によりアスリートの生体データをリアルタイムで収集・解析し、SageMaker で怪我予測モデルを開発、生成AIで競技パフォーマンス予測や早期警告システムの実現を目指します。研究面では医療画像診断AIや臨床・研究データの安全な保管・分析、生成AIを活用した研究業務効率化も掲げられています。
運用面ではHIPAA 準拠レベルの高度なセキュリティを備えたAWS環境を前提に、神戸大学と神戸市が連携して「神戸医療DXモデル」を実装します。さらにAWSのグローバルインフラを活用して、アジア諸国など高齢化や医療アクセス課題を抱える地域への展開も視野に入れています。教育面ではAWS Academy を通じたデジタルスキルトレーニングや、医療系スタートアップ支援、医工連携人材育成も推進されます。これらを統合することで、地域の医療提供体制の再設計と、次世代の医療人材育成が同時に進むことが期待されます。
詳しくは「アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權
