天気予報の現場では、科学的知見と予測技術のほか、経験に基づいた判断が必要になります。しかし、自然現象のため、時にはベテランの気象予報士でさえ「まさか!」と驚くような気象現象が発生することがあります。この記事では、今年1年の天気の中で、気象予報士が特に驚かされた気象現象や出来事のエピソードを通して、今年1年の顕著な気象関連ニュース3選を発表します。

国内歴代最高気温 一気に0.7℃も更新
2025年の夏は、国内の最高気温記録を一気に0.7℃も更新しました。
2024年までの国内最高気温は、静岡県浜松市で観測された41.1℃でしたが、今夏は7月30日に兵庫県丹波市柏原町で41.2℃を観測し、記録を塗り替えたかと思えば、そのたった6日後、8月5日には群馬県伊勢崎市で最高気温41.8℃を観測し、2025年の夏としては、国内最高気温を一気に0.7℃も更新することになりました。
その他、8月5日には埼玉県鳩山町で41.4℃、群馬県桐生市で41.2℃、6日にも静岡県静岡市で41.4℃と、各地で2024年までの記録を上回る気温を観測したほか、8月5日に40℃以上となった地点数は、関東地方を中心に14地点に上るなど、2025年の夏としては、全国25地点で計30回の酷暑日※を観測し、記録的な暑さとなりました。
国内歴代最高気温は、2007年に74年ぶりに更新されて以来、0.1℃ずつ小刻みに更新する形が多くなっていましたが、今年、一気に0.7℃も更新したことには、気象予報士の間でも驚きの声があがりました。
2025年の夏(6月~8月)は、日本の夏の平均気温の基準値からの偏差が+2.36℃となり、統計を開始した1898年以降の夏として1位の高温となるなど、異例の暑さとなったのは、様々な要因が重なったことが原因です。
6月以降、平年であれば日本の本州付近の上空に位置するはずの偏西風が、北海道よりも北側に位置したことにより、チベット高気圧が日本付近に大きく張り出したうえに、太平洋高気圧が早いうちに張り出しを強めたことにより、日本付近で2つの高気圧が重なりました。これにより、日本付近は暖かい空気に覆われて晴れやすく、地上付近の気温が高まりやすい状況となりました。また、この状況に加えて、地球温暖化の影響による気温自体の上昇がもとからあり、気温の高まりを助長したこと、ここ数年顕著に高くなっている、北半球中緯度帯の海面水温が大気を暖めたことなどもこの夏の高温に影響した可能性があります。

統計開始以来 最も早い梅雨入り・梅雨明け
2025年の各地の梅雨入りは、九州南部から東北南部にかけて平年よりかなり早く、1951年以降の記録として、近畿と北陸では最も早い梅雨入りとなりました。平年であれば6月7日頃に梅雨入りする関東甲信も、5月22日に記録的に早い梅雨入りとなりました。また、各地の梅雨明けは、沖縄から北陸にかけて平年よりかなり早く、1951年以降の記録として、沖縄や奄美、九州北部から近畿、関東甲信と北陸で最も早くなりました(タイ記録を含む)。
この記録的に早い梅雨入り、梅雨明けに関して、気象予報士からは、春から夏にかけての季節の歩みの速さは驚かされたという声が上がりました。
また、梅雨入りと梅雨明けに関しては、梅雨に入った(明けた)とみられるタイミングで、その直後に発表する「速報値」と、毎年9月初め頃に、その年の春から夏にかけての天候経過を総合的に検討した結果、発表される「確定値」があります。
今年はこの速報値が大きく修正され、確定値との差が大きくなったことに対しても、気象予報士から驚きの声が上がりました。
なお、記録的に早い梅雨入り、梅雨明けとなったのは、太平洋高気圧が早いうちに本州付近へ張り出しを強めたことが原因であると考えられます。

東京で豪雨 東京23区で警戒レベル5発令
9月11日は、湿った空気や日中の気温上昇により、関東甲信を中心に大気の状態が非常に不安定となり、東京都心でも活発な雨雲が発生しました。東京都内では、世田谷区付近や目黒区緑が丘、大田区付近、品川区付近、港区付近に記録的短時間大雨情報が相次いで発表されました。
局地的に猛烈な雨が降った影響で、大田区と品川区の複数の地域で警戒レベル5の緊急安全確保が発令される事態となりました。実際に目黒区緑が丘の近くに住んでいる気象予報士からは、都市部ほど防災対策・防災整備が十分という安全神話が崩壊するほどの危険な雨を、東京で実感したことに驚いたという声がありました。

2025年 気象予報士が驚いた瞬間3選 まとめ
天気に関する言葉の中には、複雑なものやあまり聞きなれない言葉もあったことでしょう。今回選出された言葉の中で皆さんの印象に残っていた言葉はありましたか?
天気に関する言葉を通じて、より多くの方に天気をもっと身近に感じていただければ幸いです。
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<調査概要>
調査対象:日本気象協会所属の気象予報士120名
調査期間:2025年11月4日(火)~11月14日(金)
