
昨シーズン、クラブ史上初のB3リーグ・プレーオフ進出を決めるなど、充実のシーズンを過ごした岐阜スゥープス。今シーズンは小林康法HCの退任、エースの高橋快成やハンター・コート、ライアン・ローガンの退団と厳しい状況が続く中で、新しくチームの指揮を任されたのが早水将希氏だ。
横浜エクセレンスや東京八王子ビートレインズで指揮を執ったほか、クラブ創設初年度となる22年からは東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(TUBC)で2シーズン指揮を執り、昨シーズンはWリーグ・三菱電機コアラーズでアシスタントコーチとして活躍。満を持して岐阜のHCに就任した早水氏に、チームへの加入の経緯や、選手やスタッフへの思い、B3リーグ最終年度への意気込みなどを聞いた。
昨季はWリーグ三菱電機コアラーズでAC
――岐阜スゥープスとの契約の経緯と決め手は
妻の実家が岐阜ということで縁があったのと、「いつかは岐阜のチームで」という気持ちはずっとあったんですよ。その中で、今回アシスタントコーチの水野コーチが、もともと僕がTUBCでHCの時にインターンで来ていた方だったんです。チームとしてヘッドコーチを探している中で、水野君が「早水コーチがいます。僕、一緒にやってました」という形で繋いでいただいて。そこからチームとコミュニケーションを取って、という経緯です。
(決め手としては)僕のバスケットのコーチをする上での考えとチームの考えが合致したというところ。「チームづくり」を僕は重視するので、岐阜もずっと人との関わりとかで少しずつ成長してきたチームだったので、親和性があるし、考え方もすごく似ていました。僕はこういうチームでやりたいし、こういうチームで勝ちたいと思えたところが最大の決め手ですね。
横浜エクセレンスもそうですし、TUBCもそうですけど、エクセレンスに関しては、クラブからプロチームになったっていう経緯があって、クラブ時代からいろいろちょっとずつ築き上げて大きなクラブになっていった。TUBCはHCとして0から1を作り上げるときに携わらせていただいて、こつこつとみんなで何か作っていくっていうのが、もともと好きでした。岐阜もそうですけど、クラブチームの時からずっと、少しずつ地域に根ざして、一歩ずつ一歩ずつ歩みを進めているというところが僕に合うのかなと。歴史を含めて、ここでやってみたいなって思えたのが決め手ですね。

――昨シーズンはWリーグで指揮を執りましたが、Wリーグで得たものや今後に生かしていきたい点はありますか
そもそも初めての女子(チームでのコーチング)で、男女の違いや、三菱電機コアラーズは企業チームなので、プロと企業の形態が違ったりとか、考え方が違ったりする中で、いろんな学びは非常にありました。
女子と男子の違いのところでイメージであったのは、表現が難しいですけど、女子は形通りやることはすごく上手で、黙々とずっと同じことを繰り返すことができる。男子は逆にアイデアとか、そういうのが得意なのかなって、なんとなく思っていましたが、明確に分かりました。アプローチの仕方が全然違うなと。特に男子だと、基礎的なところをどんどん落とし込んでいくし、女子の選手には「もっとこういうプレーあるよ」とかユーモア的なところとか、プラスアルファの話はしていくので、アプローチの仕方は全然違いました。
男女の違いとかではないですけど、三菱は専用体育館あって、ウエイトルームもあって、食事も充実していて、遠征に行くのもしっかり体制が整っているところと、今までいたB 3はまだまだそこは改善していかなきゃいけないところなので、そういった違いとかも感じられました。逆に言えば、岐阜や今までのB 3のチームがもう一つステップアップするために、三菱や名古屋ダイヤモンドドルフィンズのこういうところも見習わなきゃいけないなという部分を体験して知ることができたので、今後はそういうことを落とし込んでいければいいかなって思います。できる範囲のことで、僕が気づいたことを伝えたりとか、クラブが本当の意味でプロクラブになるための最低基準だったりとかっていうのを少しずつ伝えるようにはしています。
「いい意味で自分たちにフォーカスできている」
――今シーズンはどんなチームにしていきたいですか
「選手もスタッフもやりがいがあるチーム」。いつも念頭に置いているのは、スタッフがいかにやり甲斐があって、自分ごととして捉えて、没入感のあるスタッフになれるかどうかというところ。そこが一番チームづくりで肝心なところで、どういうチームにしたいかというと、もちろんプロチームなので優勝を目指してやることはこれも絶対なんですけど、その中で「優勝したときに、スタッフも選手も全員が心底喜べるチーム」をつくりたいなと思っています。
シーズン中はうまくいかないこともあるんですけど、その中で全員でチームで戦って優勝したときに、プレータイムが少ない多い関係なく「本当にこのチームでやってよかった」と感じられるかどうか。もちろん結果を求めるけど、結果通りにいかないシーズンも絶対に出てくるので。その時に、それでもこのチームでやるべきことやったと思えるかどうか。なので、「選手、スタッフのやりがい」をとにかく重視して、全員が優勝したときに心底喜べているチームにはしていきたいですね。それは選手たちも常に伝えています。やっぱり選手に人生があるし、スタッフにも人生があるので。

――来シーズンからは新しいリーグになるため、今シーズンは昇格のないシーズンとなります。モチベーションをどうつくっていきますか
モチベーションに関しては、そんなに変わらないというか。僕らはもう、これを生業にしてるので。常に優勝を目指して、昇格があるにしろ、ないにしろ、優勝を目指してるので。モチベーションが低いなと思う選手やスタッフは一人もいないです。なんだったら、「最後のシリーズを優勝しよう」と話していますし、チームの目標で「優勝」ともう一つ「ホームでプレーオフを開催する」という目標があるので、そこに向かっては全員がすごく高いモチベーションでやってくれています。
昇格うんぬんは僕自身も全く気にしていないので。やるからにはプライドをかけて、このシーズンを戦いたいですし、全員やる気満々でいます。
ーー昨シーズンからは大きくチームが変わりました。チームづくりの上で大変だったことはありますか
今の段階で大変だったことはないです。昨シーズンは昨シーズンで、どういうことをやっていたかというのは、正直、引きずることもなくできています。やることは一緒なので、そこで何かを感じることはあまりないです。逆に、例えば周りで(主力選手が)抜けたからどうだって思っている人がいるんだったら、それを見返すためには、特別なことをせずに、自分たちがやるべきことを徹底してやることです。今は多分このチームで勝つためにどうするかというところにフォーカスできていると思うので、そういう話もだいぶ減ってきたというか、去年がどうだったという話は全く最近は聞かなくなってきました。いい意味で自分たちにフォーカスできてきているのかなと感じますね。
――チームの雰囲気は
雰囲気ももちろんいいですし、とにかく全員が自分たちのやるべきことを理解して、それをコートで体現してくれています。練習試合とか練習の中でも本当にチームがやるべきことに徹してくれていて、全員がそれに対して全力でやってくれているので、現段階の仕上がりとしてはいいなと思っています。
――「スゥーピー」(岐阜ブースター)の印象は
岐阜はそれこそ初年度から昨シーズン以外はずっと対戦相手として試合をしていて、初年度から岐阜のホームコートの雰囲気は良い雰囲気を感じるんですよね。アウェーの選手にとっても、おもてなしも含めて、ゲームをいい雰囲気で成り立たせようっていう空気感を感じるので。僕も対戦相手のときからいい雰囲気の会場、ファンの人の熱量だなって思っていたので、それを味方にできるのは楽しみですし、ホームで戦えるのを楽しみにしています。
――最後に、ファンやブースターへのメッセージをお願いします
優勝を目指して戦っていきます。この前の公開練習でも少しお話したんですけど、僕らは「応援してください」とかっていうレベルでもまだまだないと思うので、「一緒に戦っていただきたい」という気持ちがあります。一緒に戦いたいと思わせる僕たちのプレーだったり、振る舞いだったりを見ていただいて、一緒に戦って没入してもらって、優勝したときに同じ気持ちで優勝を喜べるチームにしていきたいなと思います。ぜひ一緒に戦っていただいて、最高のシーズンにしていきましょう!

(榊原かよこ)
