本コラムでは、不動産投資における延滞率や、延滞リスク、破産リスクを低減するためのポイントについて詳しく解説します。特に、延滞発生から破産までの流れについて触れながら、不動産投資で成功するための具体的な対策を解説します。
不動産投資における延滞率は1.27%以下
不動産投資における延滞率は、具体的な統計データが公表されていないため正確な数値は不明です。しかし、各金融機関が公表している開示債権比率から延滞率がどれくらいかの目安を推測することができます。開示債権比率とは、金融機関が貸し出した資金のうち、返済が滞っている債権の割合を示す指標です。
東京商工リサーチが行った「国内106銀行「金融再生法開示債権」の状況調査(2023年8月15日発表)」では開示債権比率が1.27%となっています。ただし、この比率には不動産投資ローン以外の個人向け貸し出し、企業向け貸し出しなども含まれており、詳細な数値はわからないものの不動産投資で返済が滞った人の割合は、この1.27%よりも低いといえます。
投資家は不動産投資のリスクを理解し、適切なリスク管理と準備を行うことで、延滞リスクを減らすことができます。また、延滞率が低いからといって安心せず、常に市場動向や経済状況を監視し、自身の投資状況を定期的に見直すことが重要です。さらに、専門家のアドバイスを受けることで、より安全かつ効果的な投資が可能となります。
不動産投資では自己破産できない可能性が高い
不動産投資で借金をした場合、原則としては自己破産による免責が認められないことが多いです。不動産投資は、免責不許可事由の1つである「浪費または賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと」(破産法252条1項4号)に該当する可能性が高くなります。
しかし、裁判所に申し立てを行い、破産手続きと免責手続きを経ると、以下のケースにおいては債務が免責されることがあります。
不可抗力による経済的困窮
自然災害や経済危機など、投資家自身の過失ではない外部要因による破産の場合は、免責が認められることがあります。例えば、地震や台風などの自然災害によって物件が損壊し、大幅な修繕費が必要になった場合や、リーマンショックのような予測不可能な経済危機が発生した場合が該当します。
適正な投資判断
投資家が誠実に投資活動を行い、適切なリスク管理を行っていたが、予期せぬ経済状況の変化によって破産に至った場合も、免責が認められることがあります。例えば、慎重な市場調査やリスク評価を行い、適切な投資計画を立てていたにもかかわらず、突発的な市場崩壊により収益が見込めなくなった場合などが該当します。
協力的な態度
裁判所の調査に対して誠実に協力し、資産の隠匿や不正行為が認められなかった場合は、免責が認められる可能性があります。これは、投資家が破産手続きにおいて透明性を保ち、正直に財産状況を報告し、裁判所の調査に全面的に協力することが重要です。
不動産投資で延滞し破産するまで
不動産投資による延滞発生から破産までは、以下のように進行します。
・収入の減少
・ローン返済の滞り
・金融機関からの督促
・担保物件の競売
・自己破産の選択
収入の減少
まず、賃貸物件の空室率が増加したり家賃が下落したりすると賃貸収入が減少します。また、突発的な設備の故障により修繕費用がかかり賃貸収入で得た収益が圧迫されることも考えられます。さらに不動産業で収入が減少している状態で、設備の故障や修繕が発生すると、本業の給与収入で賄うことになりますが、勤務先の業績が芳しくなく給与収入が減っていたり、子供の教育費負担が大きくなるタイミングと重なっていたりすると返済は苦しくなります。
賃貸収入の減少は計画していたキャッシュフローに大きな影響を与え、ローンの返済が困難になる大きな原因となります。収入の減少を防ぐためには、まずは購入検討段階でしっかりとその物件の周辺環境の分析や周辺物件の賃料相場との比較を行った上で、中長期的な賃貸ニーズを分析することが必要です。また、購入後については、物件の定期的なメンテナンスや入居者入れ替わりのタイミングでリフォームを行うなども対策として有効です。
ローン返済の滞り
収入が減少するとローンの返済が困難になります。貯金や他の収入で補填できない場合は返済が滞ってしまいます。
ローンの返済が滞ると、金融機関からの督促が始まり、返済が遅れるほど個人信用情報に悪影響を与えます。これにより、他の金融機関からの借入もしにくくなります。
金融機関からの督促
返済が滞ると金融機関から督促が届きます。金融機関からの督促に対しては、できる限り早期に対応することが大切で、金融機関に対して自身の状況をしっかり伝えることで、返済計画の見直しなどに応じてもらえるケースもあります。
担保物件の競売
返済を求めても応じない場合や返済のメドが立たない場合など、最悪の場合には担保物件が競売にかけられます。
競売は市場価格よりも低い価格で売却されることが多く、低い価格で売却されるとローン残債を下回る価格となってしまうことがあります。競売を避けるためには、任意売却やリースバックなどほかの選択肢を検討することも重要です。
自己破産の選択
競売や任意売却で物件を売却しても残債が返済できない場合、自己破産を選択するケースもあります。裁判所に申し立てを行い、破産手続きと免責手続きを経て、債務が免除されます。
あくまでも自己破産は最終手段であり、他の手段が尽きた場合に行うものです。自己破産を選択する際には、専門家の助言を受け、適切な手続きを行うことが重要です。
不動産投資で成功するためのポイント
不動産投資では分析と対策をきちんとおこなうことでリスクをコントロールし、成功に近づくことができます。ここでは不動産投資で成功するための以下のポイントを解説します。
・適切な物件を選ぶ
・資金計画を立てる
・リスク管理を徹底する
・空室対策を行う
適切な物件を選ぶ
不動産投資で成功するために、まず大事なのは立地です。交通の便が良い場所や、大きな商業施設、学校、病院などが近くにある物件は周辺に人が集まりやすく一定の賃貸需要が見込めることが多いです。また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、クリーニング店、カフェなども揃っていれば、街としての完成度が高く住みやすい環境とも言えるでしょう。周辺環境をよく調査し、中長期的に根強い賃貸ニーズが見込める地域を選びましょう。将来的な都市計画や再開発予定などの情報に目を通しておくことも重要です。
また、物件の購入前には、建物の構造や設備、修繕履歴などを詳しく確認することも必要です。問題が見つかった場合は、その修繕費用を見積もり、事前に投資計画に組み込んで収支シミュレーションをしておきましょう。これにより、投資リスクの洗い出しと必要な対策を整理し、長期的な視野での堅実な投資判断が可能となります。
資金計画を立てる
ローンを利用する場合は、返済計画を慎重に立てることが重要です。金利の変動リスクや空室リスクなど不動産投資におけるさまざまなリスクを考慮し、収益がローンの返済を上回るように計画しましょう。また、投資を始める前に、緊急時の資金として一定の予備資金を確保することも重要です。これにより、予期せぬ出費が発生した場合でも柔軟に対応することができます。
きちんとローンの返済ができるようにするためにも、無理のない初期投資額を設定しましょう。自己資金を多めに用意し、借入額を抑えることで、金利負担を軽減することができますが、自己資金を投入することにより手元の資金が減り、急な出費に耐えられないという事態もあります。状況に応じた自己資金額と予備資金を用意することが重要です。
リスク管理を徹底する
不動産投資にはさまざまなリスクがあります。例えば火災や地震などの災害リスクです。災害は誰も予想ができないため、適切な保険に加入し万が一の事態に備えることが重要です。また、いきなり大きな規模の投資をするのではなく、小規模から不動産投資を始めて学んでいくことで不動産投資に潜むリスクをより早く的確に察知できるようにもなります。
リスク管理の一環として、定期的に物件の状態をチェックし、必要な修繕や改善を早めに行うことが大切です。また、市場動向を常に把握し、適時に戦略を見直すことも重要になります。例えば、物件の資産価値や賃料を維持・向上させるために、リフォームやリノベーションを計画的に実施することが有効です。
空室対策を行う
空室対策を行うことで、入居者からの信頼も高まり、安定的な収益を確保することができます。以下のような対策が考えられます。
・定期的にメンテナンスを行う
・インターネット無料など需要のある設備を追加する
・防犯カメラやセキュリティシステムを導入し、安全性を高める
・定期的な家賃見直しを行い長期的な入居を促進する
このように空室対策をしっかり行うことで、物件の魅力を高め、入居者の満足度を向上させることができます。特に、入居者のニーズを把握し、それに応じたサービスを提供することが重要です。また、空室発生時の入居者募集においては、賃貸物件を探している人に対して物件の魅力をわかりやすく伝えていく見せ方の工夫も大切です。
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