NexTone Research Memo(5):中間期営業利益は大幅拡大も、著作権管理のミックス悪化で会社予想下振れ
1. 2026年3月期中間期の業績概要
NexTone<7094>の2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比9.0%増の10,267百万円、営業利益が同55.4%増の587百万円、経常利益が同50.6%増の599百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同28.4%増の376百万円であり、増収増益となった。営業利益の増減要因を見ると、増収要因として全セグメントともに増収を確保したことによる効果が2.9億円、減収要因として人件費増加が0.4億円、システム・その他コスト増加が0.4億円となる。他方で、会社予想比では売上高は0.6%上回ったものの、営業利益は13.4%減と下振れして着地した。下振れの主因は著作権管理事業における売上ミックスの悪化であり、特にヒット曲の取り扱いが例年より少なく再生数が伸び悩んだこと等によりインタラクティブ配信収入が想定を下回った。もっとも、この要因は一過性の側面が強く、下期には新規権利者の獲得や取扱高の拡大が見込まれる。したがって、下期での挽回は十分に可能な範囲と見ている。
2. 事業セグメント別動向
(1) 著作権管理事業
著作権管理事業の売上高は前年同期比5.7%増の767百万円、セグメント利益は同1.6%減の326百万円となった。売上高は、録音権の使用料徴収についてアイドル系楽曲の音楽ソフト等での利用が堅調だったほか、2024年7月から開始した全世界のYouTube動画視聴における使用料の直接徴収や、各国の著作権管理事業者との直接契約の拡大などにより海外地域での徴収額が拡大した。同社の2026年3月期中間期末の著作権管理楽曲数は同14.7万曲増の75.8万曲と拡大した。他方で、セグメント利益は人件費及びシステム関連費の増加に加え、2025年3月期第1四半期に発生した特殊要因である一部配信事業者への遡及徴収分(取扱高ベースで390百万円)の反動減も重なり、微減益となった。
(2) DD事業
DD事業の売上高は前年同期比7.2%増の5,043百万円、セグメント利益は同8.5%増の473百万円となった。売上高は取扱原盤の増加、ストリーミング音楽配信市場・動画配信サービス市場の伸長、アニメ・ゲーム関連及びVTuber(ブイチューバー)などのネットクリエイター関連の原盤使用の増加などにより拡大した。2026年3月期中間期末の取扱原盤数は同22.0万原盤増の159.8万原盤と拡大した。セグメント利益は増収効果により拡大した。
(3) 音楽配信事業
音楽配信事業の売上高は前年同期比3.4%増の3,838百万円、セグメント利益は同24.1%増の794百万円となった。売上高は、主力サービスである個人向けの定額制音楽配信サービス「dヒッツ」の価格改定効果により増収となった。セグメント利益は、コスト効率化に加えて開発内製化の進展による外注費の減少、円高を背景としたクラウドサーバー利用料の低下などが寄与し、大幅増益となった。足元のトピックスとして、同社は2025年6月に法人向け原盤利用許諾スキーム「レコチョク play」を新たに構築し、カラオケ機器メーカーへの提供を開始した。まず「まねきねこ」を運営するコシダカホールディングス<2157>に対し、1都3県約200店舗への提供を開始した。2025年9月末時点では全国約700店舗のうち約400店舗まで導入が拡大している。今後は他のカラオケ事業者への提供を広げ、さらなる利用拡大を図る方針である。
(4) その他
その他事業の売上高は前年同期比48.1%増の1,070百万円、セグメント損失は176百万円(前期は237百万円の損失)となった。売上高は、キャスティング事業におけるライブビューイングの大型案件の実施などにより、大幅な増収となった。一方で、エージェント事業におけるシステム開発の先行投資などが重石となり、セグメント損失を計上した。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期中間期末の財務状況は、資産合計が前期末比215百万円減少の14,616百万円となった。流動資産が290百万円減少し、主にその他流動資産が370百万円減少した。その他流動資産の減少要因は、DD事業において海外取引増加に伴う消費税の還付及び子会社レコチョクグループの本社移転に伴う移転補償金の受領に関する未収入金減少などである。固定資産は同74百万円増加し、主に無形固定資産がシステム開発に伴い84百万円増加した。
負債合計は前期末比624百万円増加の8,492百万円となった。流動負債が473百万円増加し、主に買掛金が454百万円減少した。買掛金の減少要因は、レコチョクのソリューション事業などによる減少320百万円である。固定負債は151百万円減少し、主に取締役退任に伴う退職慰労金の支給により、長期未払金が119百万円減少した。純資産合計は、同408百万円増加の6,123百万円となった。主に親会社株主に帰属する中間純利益の計上に伴い利益剰余金が377百万円増加した。自己資本比率は利益創出に伴い35.2%と、同3.1ポイント改善した。また、キャッシュは9,615百万円と潤沢であり、今後も継続的な利益成長のために人員・システムへの投資及びM&Aなどを検討するとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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