日水コン:水インフラ特化で安定成長を続ける建設コンサルティング企業
同社の強みは、第一に、水インフラに特化した専門領域における卓越した技術と実績である。全国上下水道コンサルタント協会など水専門コミュニティでの存在感は大きく、水道・下水道・河川を一体で設計できる点は総合建設コンサルとは異なる価値を持つ。水専業の領域ではNJS<2325>などが競合とされるが、同社は専門性と提案力で優位性を確立している。第二に、高度な有資格者を多数擁する技術者集団であることである。同社は「中央官庁・地方自治体との信頼」「総合力と人材」「技術力」を強みとして掲げ、とりわけ技術士を中心とした専門資格者の多さが品質と提案力の裏付けとなり、全国の高度案件や国土交通省案件を数多く任されている。第三に、PPP・PFIなど事業設計や経営支援まで踏み込むビジネスモデルである。技術ベースのみならず、官民連携における制度設計やアドバイザリーにも対応し、会計・経営コンサルタントと連携して官側・民側双方から関与できる。
2025年12月期第3四半期累計業績は、売上高18,033百万円(前年同期比3.0%増)、営業利益1,889百万円(同8.8%増)と増収増益を確保した。売上総利益率の改善や採算性の高い案件の増加により営業利益率は9.9%から10.5%へ上昇した。サービス別には、上水道6,391百万円(同2.7%増)、下水道9,613百万円(同6.2%増)と中核領域が堅調であった一方、河川その他は2,028百万円(同9.3%減)と減収となった。これは砂防エンジニアリング子会社での案件発注遅れや新規事業進捗の遅延による影響であるが、会社は受注遅れの挽回を進め、水インフラ主力領域の伸長で全体としての増収を維持した。
また、連結受注高は23,456百万円(同15.1%増)、受注残高は28,077百万円(同11.6%増)と高水準で推移。ウォーターPPP案件(事業期間10年)の受注により、受注計画を達成し、上記を除いた計画進捗率は87.4%となっている。一方、第3四半期単体では季節性に加え業務補償損失引当金200百万円を計上した結果、営業利益率はマイナスとなった。ただ、官公庁を顧客にしている特性から第1四半期に利益が集中し、第3四半期は売上計上が少なくなる季節変動性のもと固定比率が高まり利益率が低下したが、あくまで一過性であり累計では堅調な増益基調を保っている。通期計画は、売上高24,700百万円(前期比5.0%増)、営業利益2,300百万円(同5.7%増)を見込んでいる。
市場環境は、防災・減災や老朽化設備更新、気候変動対応、水質問題など構造的な追い風が続く。民主党政権下で抑制された投資の反動に加え、近年の水道施設事故を契機に各地で予算配分が見直され、案件が複雑化・高度化する中で提案力を持つ同社に案件が集中する状況が続いている。
今後の成長見通しでは、国土強靭化の継続を前提に既存領域の安定成長、人材拡充、官民連携の深化が軸となる。採算性の高い大型案件を中心に受注件数の積み上げを図っていくほか、官民連携促進の政府方針を背景に同社では官側・民側2つの立ち位置から参画していく。また、海外技術との連携による産業廃水分野の開拓や、海外展開では東南アジアの有望案件を選別しながら収益化を図る。半導体やEVバッテリー、製薬など気候変動に伴う水リスクを軽減する水リサイクル技術の提案・装置の提供を行っていくようだ。トピックとして、リアルタイム雨水管理システム「Blitz GIS」をベトナムで実証予定であり、DX技術の活用で気候変動・都市浸水といった社会課題にも対応しており、今後の事業拡大余地は大きい。一方で、受注キャパシティが成長の制約となる懸念があり、質・量両面での人材強化が急務となっている。
株主還元は、配当性向50%を目安とした安定的な配当方針を掲げる。2025年12月期の年間配当は1株当たり64.00円を予定し、配当性向は50.6%と高水準である。利益成長と株主還元を両立する姿勢を明確にしているほか、役員向けの株式交付信託を導入し、中長期的な企業価値向上と株主価値の方向性を一致させる制度設計も進めている。
総じて、日水コンは水インフラに専門特化した技術力と提案力、そして高水準の受注残高を強みに、社会インフラ更新と気候変動対応を背景とした中長期の成長が期待できる企業である。「日水コングループビジョン2030」を策定中であるが、老朽化施設の更新需要やPPPの進展で安定的な事業環境が続くなか、同社には着実な成長と企業価値向上が期待されよう。
<HM>
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