Jストリーム Research Memo(6):一時的要因を除くと各領域とも売上堅調
2. 市場別の動向
Jストリーム<4308>の市場別の売上高は、医薬領域が1,659百万円(前年同期比4.0%減)、EVC領域(医薬以外)が1,511百万円(同4.3%増)、OTT領域が1,446百万円(同6.5%減)となった。各領域ともに、一時的要因を除いた売上高は堅調だった。
医薬領域においては、Web講演会向けのライブ配信や集客広告など関連業務の受注は継続したものの、薬価改定や製剤上市状況の影響により製薬企業のDX投資にばらつきが見られた。また、同社大口取引先では外資系企業の需要が比較的安定して推移したが、内資系企業では前年同期を下回る企業が多く見られた。こうした環境下、同社は、データ分析ツール「Webinar Analytics」や生成AIを活用した字幕生成などの提案を強化したほか、グループ会社による専門性の高いコンテンツ制作を組み合わせ、独自ルートでの案件獲得に努めた。この結果、Web等制作は比較的順調に推移したが、代理店経由の高単価案件の減少によりライブ配信案件の平均単価が下落、映像制作案件の減少も重なって、医薬領域の売上高は前年同期を下回った。このうち主力のWeb講演会については、大手上位顧客の一部が伸び悩むなど強弱はあったものの、中堅・新規取引先で計画を上回る受注を獲得した。また、7月〜8月には上位顧客を中心にWeb講演会の数が例年より増えて前四半期比で増収となるなど、コロナ禍以降の減少傾向に下げ止まりの兆しが見られた。
EVC領域(医薬以外)においては、イベントのリアル回帰が進む一方で、リアルと動画を併用するハイブリッド化や企業内部の動画利用が進んだ。こうした環境下、同社は、教育・情報共有を目的とした動画活用事例の開拓を進めるとともに、社内外向けのウェブセミナーやオンラインイベント関連の受注獲得に注力した。この結果、第1四半期は6月に需要が集中するバーチャル株主総会の実施企業が上場廃止やハイブリッド運営の負担忌避から減少、第2四半期になると、前年同期にあったメーカー等による販促・社内イベント関連の大口受注の反動減があったものの、顧客のWebサイトシステムや社内チャンネルの構築、映像制作の大口受注などを獲得できた。また、「J-Stream Equipmedia」は長期利用を中心に業種・用途を問わず堅調に推移、強化中の「Webinar Stream」では利用用途の広がりが見られ、販促マーケティングや社内外の情報共有を目的としたオンラインイベント向けが伸びた。
OTT領域においては、放送・メディア業界での動画配信サービス拡大の流れを背景に、システム開発、サイト運用、それらに関連する制作・運用業務、配信ネットワークを中心に引き続き高い需要が見られた。こうした環境下、メディア・放送局向けのうち、大口キー局には開発・運用に関する提案を継続し、その他民放やローカル・BS・CS局には追加機能開発の受注に注力した。また、公営競技・その他コンテンツプロバイダでは、前年同期に納品した大口機器の運用保守が2026年3月期より開始され、長期的に売上貢献する見込みとなった。この結果、ネットワーク売上での一部失客と前年同期に納品した大口納品の反動の影響が大きく、売上高は前年同期を下回ったが、コロナ禍後の調整も他領域に比べて小さく、定常的な受注は堅調だったと言える。
通期業績予想は期初予想を据え置き、下期に巻き返しを図る
3. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の業績について、同社は売上高12,136百万円(前期比2.8%増)、営業利益933百万円(同1.8%増)、経常利益952百万円(同横ばい)、親会社株主に帰属する当期純利益546百万円(同0.9%減)と見込んでいる。中間期業績の進捗率が低かったが、医薬領域でWeb講演会シーズンの11月~12月を控えており、内資系については2月~3月の予算消化も期待できるほか、EVC領域(医薬以外)で顧客が着実に積み上がっており、OTT領域での新たな開発案件に加えて、売上総利益率はミックス次第だが、期中の人員強化が終了したことで下期は中間期ほどに販管費が増えないため、下期に巻き返す可能性が高く通期業績予想を期初据え置きとした。なお、一時要因を除いた経常的な売上高が安定しているため、2027年3月期も増収増益が期待される。
下期に向けた施策として、医薬領域におけるWeb講演会で、大手上位顧客中心に引き続き取引先の動向把握を進める(最大手顧客とは契約継続の見通し)ほか、売上が拡大している中堅・新規取引先へのアプローチを強化、ハイブリッド型講演会の提案も積極化する。デジタルマーケティング支援では、大手企業のほか、中堅・新興企業に向けて「Webinar Analytics」のトライアルを提案して利用の拡大を図るほか、「Webinar Lounge」などWeb講演会付随サービスを強化する。同社はWeb講演会の不確実性を考慮して保守的な予想としており、足もとでは外資系企業の年度末予算消化を含めたWeb講演会ハイシーズンでの案件獲得に注力しているようだ。
EVC領域(医薬以外)においては、「J-Stream Equipmedia」で引き続き顧客層の拡大に向けて大手に次ぐ中堅顧客の拡大と代理店の開拓を推進、「Webinar Stream」では販促マーケティング用途などを中心に提案を強化する予定である。また、子会社化したアイ・ピー・エルの「クラストリーム」と「J-Stream Equipmedia」の技術ノウハウや営業リソースの相互活用を通じて、OVP(オンライン動画プラットフォーム)事業への進化・拡大を目指す。同社は大企業向けの展開や子会社の活用などを通じて堅調な推移を予想しているが、足もとでは実際に堅実な動きとなっているようだ。
OTT領域においては、メディア・放送局向けについては、大口キー局を中心にシステム開発や配信体制改善のための提案を継続して長期売上の積み上げを図る。また、冬季五輪などの各種スポーツイベントの案件獲得や、メディアアセット管理システム「Stream MAM」など注力プロダクトの拡販を推進する。公営競技・その他コンテンツプロバイダ向けでは、既存顧客の配信システムの安定化や運用保守案件の維持、開発要望の確保などを進めるほか、新規案件創出に向けた提案も継続する。同社は前中間期の大型案件の反動を他の案件でカバーする予定だが、足もとの状況としては冬季五輪などのスポーツイベントにおけるOTT領域活性化の恩恵を受けつつあるようだ。
■株主還元策
2026年3月期1株当たり配当金は14.0円を継続する予定
同社は、株主に対する利益還元を経営の最重要課題の1つとして位置付けている。2026年3月期については、事業拡大への投資水準を踏まえつつも、過去の支払実績を前提に、安定性・継続性に配慮して利益還元を積極的に実施するという方針の下、期末配当金は前期と同額の1株当たり14.0円を予定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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