エージェントIGHD Research Memo(1):2025年12月期中間期は営業赤字も通期は計画達成へ
エージェントIGホールディングス<377a>は、個人及び法人に損害保険(ストック収益)と生命保険(フロー収益)をワンストップで提供している。同社は、保険業法の改正や損害保険会社による手数料ポイント制度(詳細は後述)の導入、保険代理店店主の高齢化などを背景に統廃合の進む保険代理店業界に対し、「保険代理店支援プラットフォーム」を提供し、積極的なM&A及び事業承継を推進し成長してきた。2016年1月~2025年6月に636件の保険代理店を事業承継している。これらの多くは中小規模の損害保険代理店であるが、2024年4月には同社グループよりも売上規模の大きい、生命保険を主軸とする総合保険代理店ファイナンシャル・ジャパン(株)の全株式を(株)SBI新生銀行から取得した。なお、同社は2025年7月1日に持株会社体制へと移行し、上場親会社は(株)エージェント・インシュアランス・グループから同社へと変更された。
1. 2025年12月期中間期の業績概要
2025年12月期中間期の業績は、営業収益が前年同期比226.4%増の6,275百万円、営業損失が44百万円(前年同期は91百万円の利益)、経常損失が49百万円(同86百万円の利益)、親会社株主に帰属する中間純損失が40百万円(同45百万円の利益)となった。営業収益は、国内事業が2024年4月に買収したファイナンシャル・ジャパンの新規連結効果及び事業承継の実施に伴う事業規模拡大により前年同期比252.5%増の6,104百万円、海外事業は新規保険獲得件数や既存顧客に対するクロスセルなどが堅調であったものの、為替影響により同10.2%減の171百万円となった。コスト面は、ファイナンシャル・ジャパンの新規連結効果、業務品質及びガバナンス体制強化に向けた投資の実施などにより、人件費は同121.2%増、管理費は同348.7%増と急拡大し、営業損失は44百万円と赤字転落した。ただし、営業損益を四半期ごとに見ると、第1四半期は51百万円の損失であったのに対し、中間期は6百万円の利益と黒字転換している。下期は営業収益の積み上げによる挽回が期待される。
2. 2025年12月期の業績見通し
2025年12月期通期の連結業績は、営業収益が前期比51.2%増の12,340百万円、営業利益が同85.3%増の265百万円、経常利益が同90.9%増の255百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同162.4%増の140百万円と、増収増益の見通しである。営業収益は、2024年12月期に買収したファイナンシャル・ジャパンの通期連結寄与及び取扱保険料の拡大などにより、前期に引き続き大幅増収局面が続くと見込まれる。特に、保険代理店のM&A及び事業承継の積極展開が順調に進んでおり、事業基盤の拡充と収益力の強化が一層進むと見込まれる。営業利益は増収効果により大幅増益となり、営業利益率は2.1%と同0.3ポイント改善する計画である。中間期は内部管理体制の強化に向けた先行投資や一過性のコストの発生により営業損失を計上したものの、通期では既存顧客に対するアップセル・クロスセルの推進、新規顧客の開拓や事業譲受に伴う顧客基盤の拡大などにより、利益計画の達成を目指すものとしている。
3. 中長期の成長戦略
同社は2025年12月期以降、M&A及び事業承継を成長戦略の柱に据え、事業規模の拡大を図る。従来どおり専業代理店の取り込みを進めつつ、兼業代理店との協業にも注力する。国内損保市場9.6兆円のうち兼業代理店は約6割を占めるが、中古車販売業界の不祥事を背景に規制強化の可能性があり、専業代理店である同社にとって大きなビジネスチャンスとなり得る。また、中長期的には海外事業の拡大を推進する。特に米国は国内の30倍超の市場規模と高い手数料水準を有する。代理店の高齢化・後継者不足が課題となっており、同社は国内で培ったプラットフォームを展開し解決策を提供する方針である。既に世界大手ブローカーとの連携が進んでおり、将来の成長ドライバーとしての地位の確立を進めていく。
加えて、足元のトピックとして子会社エージェント・インシュアランス・グループがM&A総合研究所と業務提携し、中小企業の事業承継問題を解決する「M&Aサポートサービス」を開始した。AIマッチングと専門アドバイザーによる迅速な戦略立案、保険分野を活用したアフターサポート、包括的なPMI支援を強みとし、保険ビジネスとM&A仲介を組み合わせた新たな収益モデルを構築する。既存の保険契約を基点にM&A需要を取り込み、ワンストップ型ソリューションとして競合との差別化を図るねらいである。
■Key Points
・2025年12月期中間期は先行投資や一過性のコスト計上により営業赤字に
・2025年12月期通期は営業収益100億円突破へ、コスト増を増収効果で打ち返して利益計画の達成へ
・事業承継、M&A支援、IT活用、海外事業拡大により成長加速へ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
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