1stコーポ Research Memo(1):2025年5月期は不動産事業がけん引し、売上高・利益とも過去最高を更新
1. 会社概要
ファーストコーポレーション<1430>は、マンション建設に特化したゼネコンである。創業は2011年6月で、2015年3月に東京証券取引所(以下、東証)マザーズへ上場、2016年12月には東証1部市場に指定替えとなり、創業からわずか5年半で1部上場企業になった。その後、2022年4月に東証の再編により東証プライム市場へ移行し、2023年10月には選択申請により東証スタンダード市場へ移行した。
「より良質な住宅を供給し、人々の豊かな住環境に貢献する」を社是とし、「安全・安心・堅実」をモットーに事業を展開している。主要事業エリアをマーケットの将来性が高い首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)とし、分譲マンション建設に特化した工事請負を主として事業を推進してきた。最近では、再開発事業、アクティブシニア向けマンション事業に注力しているほか、人生100年時代に対応した「ウェルビーイングシティ構想」に基づく自社分譲マンションブランド「CANVAS(キャンバス)」にも注力し、初の開発案件として京王相模原線多摩境駅に総戸数183戸に上る「CANVAS南大沢」を建設した。「ウェルビーイングシティ構想」とは、「住・食・働・学・遊・健・看」をキーワードに、様々な世代の人たちの生活の質を高めるサービスを提供する分譲マンションを開発する考えである。将来的にはこのコンセプトに基づく街づくりも計画している。
同社の急成長を支えているのが「造注方式」という事業モデルである。この方式は開発部隊がマンション用地を仕入れ、企画・設計を行い、事業主に提案し、特命で工事を受注する事業モデルである。主体的な企画提案ができるため、競争入札で建設工事を受注する場合と比較して契約条件が良くなる特徴がある。この事業モデルを採用することにより、事業運営の効率化と安定した利益確保を可能にしている。
同社には、ゼネコンとして土地開発の専任部隊を有している強みがある。加えて、スピーディな決裁プロセスが、競合他社に対する優位性を高めている。同社が主戦場としている首都圏は将来的にも市場開拓の余地が大きいことから、造注方式によって、中長期的な成長を目指していく方針である。コロナ禍以降、マンション販売価格の急上昇もあって、郊外案件を中心に手掛けてきたが、2024年に入ってからは工事受注、不動産の取得ともに都心部案件が増加した。足元では郊外案件と都心部案件をバランスよく、選別的に受注している。
2. 2025年5月期の業績概要
2025年5月期の連結業績は、売上高43,194百万円(前期比51.6%増)、営業利益2,579百万円(同77.5%増)、経常利益2,478百万円(同74.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,669百万円(同76.7%増)と大幅な増収増益となり、売上高・各利益ともに過去最高を更新した。不動産事業の売上高が同222.6%増の20,274百万円、セグメント利益(営業利益)が同113.1%増の2,187百万円と大きく増加したことが、同社全体での大幅増収増益に寄与した。同事業においては事業用地の販売が当初の想定を上回って好調に推移したことに加えて、共同事業※における分譲マンションの販売が順調に推移したことなどが業績を押し上げた。建設事業の売上高は、同3.0%増の22,641百万円、セグメント利益(営業利益)は同8.1%減の1,740百万円で着地した。事業活動は総じて順調に推移した一方で、建設コストの高騰により利益率が低下して減益となった。ただし、下期にかけては、利益率の高い造注方式の受注が増加したほか、一般受注の利益率も改善している。
※ デベロッパーと共同事業協定書を締結して、販売事業主としてデベロッパー事業に参画すること。
なお、中間期の時点で業績が想定を上回るペースで推移したことに加えて、期末に向けても順調な業績推移が見込まれたことから、2024年12月13日付で2025年5月期の連結業績予想を上方修正したが、売上高・各利益とも修正予想をさらに上回る形での着地となった。
3. 2026年5月期の業績見通し
2026年5月期の連結業績は、売上高40,000百万円(前期比7.4%減)、営業利益2,800百万円(同8.5%増)、経常利益2,530百万円(同2.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,750百万円(同4.8%増)を予想している。2025年5月期に不動産事業が好調に推移した反動により減収を見込むものの、利益面では完成工事総利益率の改善により、各利益段階で増益を見込んでいる。また、中期経営計画値との比較では、売上高・利益とも上回る見通しである。
■Key Points
・マンション建設特化型のゼネコンであり、「造注方式」が強み
・2025年5月期は不動産事業をけん引役として、大幅増収増益、売上高・利益とも過去最高を更新
・2026年5月期通期業績は減収ながら増益予想、中期経営計画値との比較では売上高・利益とも上回る見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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