芙蓉リース Research Memo(7):各事業分野における基本戦略と目標
2. 各事業分野における基本戦略と目標
(1) モビリティ/ロジスティクス(RT分野)
カーボンニュートラルの実現に向けたEV・FCVに注目が集まる一方、ドライバー不足や長時間労働など、物流業界における社会課題が深刻化する環境を踏まえ、車両領域と物流領域を中心に、パートナー連携を軸としたワンストップ型サービスを国内外で展開する戦略である。車両領域では、EVワンストップサービス※1などの新たなビジネスモデルの構築や、フリートBPO※2を中心とするノンアセットビジネスの拡充を図る。ロジスティクス領域では、ヤマトグループとの連携による協業案件の創出、海外グループ会社との連携によるグローバルなモビリティ事業の強化に加え、新たにグループインしたワコーパレットや日本パレットレンタル等との連携を進め、アセットサービスからDXまで物流領域におけるワンストップサービスの提供体制を目指していく。財務目標(見直し後※3)は、経常利益100億円(2022年3月期比67億円増)、ROA3.7%(同1.8ポイント増)を目指す。非財務目標は、EV普及を取り巻く環境変化を踏まえ、目標項目を「EV・FCV保有比率」から「新規成約台数におけるEV・FCV比率」(目標5%)に見直した。
※1 パートナー企業との連携により、EV導入検討コンサルから充電器導入コンサル・工事、ファイナンス・車両管理、エネルギーマネジメントまでをワンストップサービスとして提供。同社の強みである「エネルギー環境」との親和性も高い。
※2 テレマティクスサービスや車両稼働率の最適化コンサルなどを通じて、省人化をはじめとする業務効率化向上を支援するもの。
※3 経常利益目標を70億円から100億円、ROA目標を2.5%から3.7%にそれぞれ引き上げた。
(2) サーキュラーエコノミー(RT分野)
サーキュラーエコノミーとは、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済システム。成長が見込まれる市場において先進的な取り組みを進め、高度なサーキュラーエコノミーのプラットフォーム構築を目指す。財務目標は現時点で設定していないが、非財務目標として、1) 返却物件のリユース・リサイクル率100%(2022年3月期比横ばい)、2) 廃プラスチックのマテリアル/ケミカルリサイクル率100%(同100ポイント増)を掲げている。
(3) エネルギー環境(AT分野)
グローバルベースでの再生可能エネルギー事業の拡大と、二次エネルギー分野における新規ビジネスの確立を目指す戦略。再生可能エネルギーでは、エネルギー種別・取り組み形態を限定せず、国内外で事業規模を3倍まで拡大。パートナー企業(大手エネルギー事業者等)との共同投資を加速するとともに、顧客の脱炭素ツールとしてPPA事業にも引き続き注力。二次エネルギーは、蓄電池分野のLCMビジネス(一次利用→再利用のリサイクル等)や、順次拡大する需給調整市場※への参画を見据えた取り組みを継続。財務目標(見直しなし)は、経常利益50億円(2022年3月期比34億円増)、ROA2.0%(同0.2ポイント増)を目指す。非財務目標(見直しなし)は、1) 再生可能エネルギー発電容量1,000MW(同682MW増)、2) 脱炭素資金投下額3,000億円(5年間累計)。
※ 2021年4月から開始、発電所等での電気の需給調整に必要な電力(調整力)を全国一体的な市場で取り引きする制度。
(4) BPO/ICT(AT分野)
人手不足や働き方改革を背景に、DXやノンコア業務の見直しなど生産性向上に向けた取り組みが加速するなかで、オペレーションとシステムの両面から顧客の業務改革実現をサポートするBPS(ビジネス・プロセス・サービス)の提供を目指す。具体的には、BPO(業務コンサル+ソリューション)とICT(システムコンサル+ITソリューション)の相互連携により、業務のアウトソーシングとDXによるトータルソリューションを推進。財務目標(見直し後※)、経常利益75億円(2022年3月期比41億円増)、ROA5.1%(同3.6ポイント増)を目指す。非財務目標(見直しなし)は、お客様の業務量削減時間100万時間を掲げている。
※ 経常利益目標を85億円から75億円、ROA目標を5.4%から5.1%にそれぞれ引き下げ。
(5) ヘルスケア(AT分野)
医業収入の減少や人手不足・後継者不足といった経営課題、2025年問題※1による医療・福祉ニーズの拡大・高度化が見込まれる。引き続き「芙蓉リースプラットフォーム構想」に基づくワンストップサービスの提供、医療・介護・調剤等ヘルスケアマーケットにおける事業者の経営資源の価値最大化に貢献する戦略。財務目標(見直し後※2)として、経常利益25億円(2022年3月期比7億円増)、ROA2.1%(同0.1ポイント増)を目指すとともに、非財務目標(見直しなし)には、1) 高齢者介護施設1,330室、2) 医療・福祉マーケットの経営支援に資するファイナンス560億円(同327億円増)を掲げている。
※1 日本が「超高齢社会」となり、社会構造や体制が大きな分岐点を迎え、雇用、医療、福祉など、様々な分野への影響が予想されること。
※2 経常利益目標を45億円から25億円、ROA目標を3.3%から2.1%にそれぞれ引き下げた。
(6) 不動産(GP分野)
事業の高度化・差別化に軸足を置き、収益性の向上を通じた安定した利益成長を目指す戦略。大都市圏を中心とする堅調な不動産マーケットを背景に、パートナーとの連携強化やビジネス領域のさらなる深化により収益力強化を進め、事業拡大を図る。脱炭素社会の実現に向け、環境配慮型不動産※1を対象とする取り組みも進める。財務目標(見直し後※2)として、経常利益240億円(2022年3月期比37億円増)、ROA2.3%(同横ばい)を目指す。
※1 グリーンビル、CASBEE評価認証や環境配慮設備(省エネ、太陽光パネル等)を設置している不動産。
※2 経常利益目標を230億円から240億円に引き上げ。
(7) 航空機(GP分野)
事業環境の緩やかな回復を想定しており、新型コロナウイルス感染症拡大の影響からの脱却と資産回転型ビジネスの推進により着実な利益成長を図る戦略である。長期保有前提のビジネスモデルから、マーケット環境などを踏まえた機動的な機体売却を行う資産回転型ビジネスへの転換を図る一方、競争力の強化を通じた優良資産の積み上げにより、収益体質の強化を図る。また、持続可能な航空燃料(SAF)など、「社会課題の解決」に資する新技術分野への取り組みも進める。財務目標(見直し後※)として、経常利益90億円(2022年3月期比75億円増)、ROA2.4%(同1.7ポイント増)を目指す。
※ 経常利益目標を70億円から90億円に引き上げ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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