精工技研 Research Memo(8):株主還元と成長投資を両立し、資本効率を改善(1)
精工技研は、サステナビリティ戦略を軸に経営基盤を強化し、SDGsの達成を目指しています。同社の中期経営計画では、多様な人材が働ける環境の整備、DX対応、資源循環型社会の構築、脱炭素化への貢献を強化しています。具体的には、クラウド化やペーパーレス化の促進、働き方改革や多様性推進を進め、さらに車載用部品や医療デバイスなどの開発を通じて社会の進歩を支えていく方針です。また、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて温室効果ガス排出量の削減を目指し、省エネ機器の導入や環境負荷の少ない製品を優先的に購入しています。同社は地域と連携し、脱炭素化の先進的事例として地域社会における持続可能な成長を支える取り組みを推進しています。
(4) 経営基盤の強化
同社は経営基盤の強化の施策として、サステナビリティ戦略を打ち出した。事業活動(商品・サービス)と企業活動(制度・取り組み)を通じて、持続可能な社会の実現を目指す世界目標「SDGs」の達成に貢献していく。中期経営計画では、1) 多様な人材がいきいきと働ける環境整備、2) クラウド化、ペーパーレス化、DX対応、3) 脱炭素、資源循環型社会構築への貢献を軸に経営基盤の強化に取り組み、企業価値向上につなげる考えである。そしてグループ全体のサステナビリティ活動の進捗管理や推進強化のために、社長直轄の「サステナビリティ推進室」を2022年5月に新設した。今後達成状況を取締役会やステークホルダーに報告していく。
(a) 「働きがいも 経済成長も」(SDGs目標8)
多様な人材がいきいきと働ける環境整備を推進している。具体的な取り組みは、1) ダイバーシティとグローバル化の推進、2) 継続的成長を実現する人事制度の構築、3) DX・ペーパーレス化・クラウド化の推進などがある。主な成果として2019年3月期に働き方改革「メリハリワーク」を導入し、社員の能力向上・業務効率化に取り組み、2020年3月期には有給休暇を1時間単位で取得できる制度を導入した。中期経営計画でも定年・再雇用制度や出産育児支援制度の見直し、グローバル人材などの採用育成、評価/報酬/教育・育成/異動などの制度の見直し、生産管理や財務会計システムなどのクラウド化の推進、電子決裁化の推進、製造工程の自動化推進など、労働環境の整備に努める。
(b) 「産業と技術革新の基盤をつくろう」(SDGs目標9)
同社はこれまで、光ディスク成形用金型の製造によりCDやDVDなどの記録メディアの普及に貢献してきたことに加え、光コネクタ研磨機の開発によりインターネットの普及にも大きく貢献してきた。今後もさらに、1) より快適なインターネット環境の構築、2) EVの普及や自動運転の進化を促す車載用部品の開発、3) 人々の健康や暮らしを支える医療・バイオ分野におけるデバイスの開発、など同社の事業や製品・サービスを通じて時代が求める商品やサービスを市場に提供し、社会の進歩発展を支えていく。
(c) 「つくる責任 つかう責任」(SDGs目標12)
3R(リデュース、リユース、リサイクル)を推進し、資源循環型社会の構築への貢献を目指す。今後の具体的な取り組みとして、1) リサイクル樹脂の活用により廃棄物を削減、2) 環境に配慮した製品の開発・設計、3) 環境負荷となる有害化学物質の削減と管理の徹底、4) 環境関連法の規制の遵守、を挙げている。量産成形時に樹脂材料の使用量を削減することができる「ホットランナー金型」などを積極的に活用していく。
(d) 「気候変動に具体的な対策を」(SDGs目標13)
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2027年3月期には同社の温室効果ガス排出量を2021年3月期比で17%削減することを目指している。そのために、1) 省エネルギー・紙削減などの活動を推進、2) 環境負荷の少ない製品・サービスを優先的に購入、3) 経年設備を省電力設備へ更新、4) 自家発電、蓄電設備の活用を検討、5) 再生可能エネルギーの活用を検討、6) BCP※訓練の実施により実効性を向上、7) パンデミックを想定したBCPの再構築、8) クラウド化の推進により有事の際の事業継続を強化、などを挙げている。
※ Business Continuity Plan(事業継続計画)。組織や企業が災害や緊急事態などの予期せぬ状態に備えて、事業継続を確保するための計画や手順を策定するプロセスのこと。
なお同社は2023年3月期に、環境省主導による「COOL CHOICE賛同企業」及び千葉県松戸市の「まつど脱炭素社会推進事業所」へ登録した。カーボンニュートラルの実現に向けて積極的に取り組む姿勢を表明している。
2025年3月期において、同社は持続可能な成長を支える「経営基盤の強化」に注力し、脱炭素化・デジタル化・人材戦略の各分野で具体的な取り組みを推進した。まず、環境対応では2027年3月期までに温室効果ガス排出量を2021年3月期比で17%削減する目標を掲げ、ミニキャブEVの導入や省エネ型空調機器・LED照明への更新などを実施。松戸市の「まつど脱炭素社会推進事業所」としても登録され、地域と連携した脱炭素化の先進事例としての位置付けを確立した。また、人的資本投資として、厚生労働省より「くるみん認定」(子育てサポート企業)を取得。健康経営優良法人(中小規模法人部門)にも認定され、社員の健康増進に向けてウォーキングイベントやポイント制度の導入を行った。多様な人材がいきいきと働ける環境整備を進め、働きがいと企業価値の両立を図っている。さらに、クラウド化やペーパーレス推進といったDX対応を通じて業務効率化にも着手しており、経営インフラ全体の強靭化が進展している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
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