クリレスHD Research Memo(4):2025年2月期は既存店の堅調な推移及びM&Aにより2期連続の増収増益
クリエイト・レストランツ・ホールディングス(クリレスHD)は、2025年2月期において連続で増収増益を達成しました。この成長は、既存店の堅調な運営とM&Aによるもので、売上収益は過去最高を記録し、営業利益も大幅に増加しました。既存店の売上高は顧客数と単価の向上により計画を上回り、さらにアリゾナ州のベーカリーレストラン「Wildflower」や北海道のラーメン店「えびそば一幻」の買収が業績を後押ししました。一方で、原材料費の上昇が利益を圧迫しましたが、適正価格化により吸収されました。店舗数は1,116店となり、財務状態も改善し、親会社所有者帰属持分比率は29.3%に増加しました。財務の健全性を維持しつつ、M&Aと新規出店による成長を続けています。
1. これまでの「グループ連邦経営」の進捗と業績推移
コロナ禍前の2020年2月期までは新規出店及びM&Aによる店舗数の拡大が同社の業績の伸びをけん引してきた。特に、2013年2月期から「グループ連邦経営」による新たな成長戦略に舵を切ったことが転機となった。成長性のある様々な業態をグループ化するとともに、さらなる出店拡大をバックアップすることで成長しながら、立地の多様性と専門ブランドの拡充を続けてきた。ただ、2021年2月期以降はコロナ禍の影響を受けて不採算店舗を大幅に整理したことから、店舗数は一旦頭打ちとなっている。一方、立地別店舗数の構成比では、2012年2月期末には商業施設(郊外SCと都市型SCの合計)が78.4%を占めていたが、2025年2月期末は商業施設が48.1%に縮小した一方で、駅前・繁華街(21.1%)やロードサイド(14.1%)、スポーツ&レジャー(7.3%)と分散し、バランス型の立地ポートフォリオを築いた。
財務面では、財務基盤の安定性を示す親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率に相当)は、2012年2月期までは35%を超える水準を確保していたものの、2013年2月期末には、三菱商事が保有していた株式をTOBにより取得し、そのうちの約8割を消却したことにより19.7%にまで低下した。2014年2月期に自己株式の売却による親会社の所有者に帰属する持分の増強を行い、2015年2月期末には連結子会社のSFPダイニングの株式上場に伴い新株発行したことで親会社所有者帰属持分比率は32.4%にまで改善したが、2016年2月期末に「KRフードサービス」のM&Aにより再び24.1%に低下すると、その後も「いっちょう」や「Il Fornaio (America)」など大型M&Aの実現やIFRS適用(リース会計基準の変更)の影響により、2020年2月期末の親会社所有者帰属持分比率は10.8%にまで低下した。2021年2月期以降はコロナ禍の影響を受けたものの、その後に永久劣後ローンによる資金調達や公募増資を実施(永久劣後ローンは返済)したことに加え、業績の回復による内部留保の積み増しに伴って、2025年2月期末の親会社所有者帰属持分比率は29.3%に改善した。
キャッシュ・フローに目を向けると、2014年2月期から2016年2月期にかけては、積極的な新規出店やM&Aによる投資キャッシュ・フローの支出が営業キャッシュ・フローの収入を上回る状態が続いたが、それが業績の伸びをけん引してきたと言える。2018年2月期から2019年2月期については、新規出店の抑制等により投資キャッシュ・フローの支出を一旦抑えたものの、2020年2月期は相次ぐM&Aの実現により投資キャッシュ・フローの支出は大きく拡大した。2021年2月期はコロナ禍の影響により営業キャッシュ・フローの収入及び投資キャッシュ・フローの支出はともに縮小したが、永久劣後ローンによる資金調達を通じて現金及び現金同等物は大きく増加した。2022年2月期以降については、協力金等の計上やコスト抑制、収益力の回復などによりフリーキャッシュ・フロー※はプラスの状態が続いている。
※ 営業キャッシュ・フロー - 投資キャッシュ・フロー
2. 2025年2月期決算の概要
2025年2月期の業績(IFRS)は、売上収益が前期比7.3%増の156,354百万円、営業利益が同20.2%増の8,504百万円、税引前利益が同15.5%増の7,659百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同10.9%増の5,590百万円と2期連続の増収増益となり、売上収益及び営業利益は過去最高を更新した。2024年10月11日に公表した修正予想に対しては、売上収益は達成できたものの、利益面では原材料費の増加などにより下回る着地となった。
メリハリ消費やインバウンド需要が続くなか、既存店を中心に堅調に推移したことにより、売上収益は全カテゴリーで伸長した。既存店売上高(通期平均)は客数及び客単価ともに伸び、前期比106.1%(計画は105.4%)と計画を上回った。また、期中に実施した2件のM&A※も業績の伸びに寄与した。
※ 2024年9月3日付で、米国アリゾナ州で展開しているベーカリーレストラン「Wildflower」の事業を取得したほか、2024年10月1日には、北海道を代表するラーメン店「えびそば一幻」を運営する(株)一幻フードカンパニーの株式を取得した。合計約41億円の増収要因となった。
出退店については、環境変化を見据えたポートフォリオの見直しを進める方針により新規出店32店舗、契約満了等により51店舗を退店し、2025年2月末の店舗数は1,116店舗となった。また、立地環境や顧客ニーズに合わせ、16店舗の業態変更を行った。
利益面では、予想を上回る原材料費率の上昇や保守的な減損損失等により計画には届かなかったものの、増収効果に加え、適正価格化の継続によりコスト上昇やM&Aのアドバイザリー費用を吸収し大幅な営業増益を実現した。営業利益率も5.4%(前期は4.9%)に改善した。
財政状態については、2件のM&Aに伴って資産合計が前期末比4.9%増の137,168百万円に拡大した。そのうち、のれん(固定資産)は同11.9%増の26,544百万円を計上した。一方、親会社の所有者に帰属する持分も内部留保の積み増しにより同11.7%増の40,167百万円に拡大したことから、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率に相当)は29.3%(前期末は27.5%)に改善した。また、有利子負債(社債及び借入金合計)は同5.0%減の26,216百万円に減少し、ネットD/Eレシオは1.15倍(前期末は1.29倍)に抑えられており、M&Aや新規出店などの成長投資を実施しつつ、財務の健全性も維持できている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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