今仙電機製作所 Research Memo(3):2025年3月期は上方修正
今仙電機製作所の2025年3月期第3四半期の業績は売上減少と営業損失の拡大を示したが、北米市場での円安効果やコスト削減が利益回復に貢献しています。中国市場での販売不振の影響を受けたものの、構造改革による体質改善が進行しており、通期の業績予想を上方修正しました。売上高は94,500百万円、営業利益は250百万円に上昇すると見込まれています。北米では生産拠点の集約による効率向上が図られ、米ドル高も収益の押し上げ要因となりました。今後は北米でのさらなる営業強化とアジア地域への注力が予定されています。
1. 2025年3月期第3四半期累計の業績概要
2025年3月期第3四半期累計の業績は、売上高が69,700百万円(前年同期比4.9%減)、営業損益が463百万円の損失(前年同期は210百万円の損失)、経常損益が431百万円の損失(同328百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純利益が1,658百万円(同972百万円の損失)と、減収及び営業損失拡大となった。
国別で見ると、日本国内は売上高が28,420百万円(前年同期比6.2%減)、営業損益が832百万円の損失(前年同期は399百万円の損失)となった。また、アジア地域は売上高が17,993百万円(前年同期比17.4%減)、営業損益が27百万円の損失(前年同期は1,058百万円の利益)と大幅に落ち込んだが、その主因は中国における日本車販売の不振である。一方、北米は売上高が23,286百万円(前年同期比9.7%増)、営業利益が288百万円(前期は1,148百万円の損失)と、円安メリットもあり黒字転換した。さらに、北米は前期に計上した雇用問題による一過性費用が解消されたほか、原価低減活動を行った効果が現れた。
製品別では、シート関係が第3四半期累計で、売上高が55,632百万円(前年同期比3,494百万円減)、セグメント利益が829百万円の損失(同89百万円の損失拡大)となった。同社は北米・アジア・中国において、主に本田技研工業<7267>(ホンダ)、三菱自動車工業<7211>、日産自動車<7201>各社の現地生産向けに製品納入しているが、中国向けが落ち込んだ。電子部品については、売上高が10,697百万円(同156百万円減)、セグメント利益が329百万円(同220百万円減)となった。主にマツダ向けに納入しているが、減益の主因は新製品の開発費が先行していることによる。その他製品では、売上高は3,370百万円と前年同期並みだったが、セグメント利益は工作機械向けハーネスの受注増により前年同期の損失から36百万円の黒字化となった。
2. 財務状況
財務面では、総資産が75,989百万円(前期末比5,192百万円の減少)となった。このうち流動資産は、現金及び預金の増加(2,885百万円)、受取手形及び売掛金の減少(2,860百万円)などから51,245百万円(前期末比775百万円の増加)となり、固定資産は、投資その他の資産の減少(5,280百万円)などにより、24,743百万円(前期末比5,967百万円の減少)となった、負債は、25,513百万円(同4,398百万円の減少)と短期借入金の減少(2,845百万円)などから20,689百万円(同2,949百万円の減少)となった。純資産は、50,475百万円(同794百万円の減少)で、第3四半期末における自己資本比率は66.0%となっている。
3. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の業績は、第3四半期までは中国向けの不振が収益に影響を及ぼし苦戦したものの、足元では持ち直してきた。加えて、構造改革により原価率が改善し、円安もプラスに作用した。これらのことから、期初予想を上方修正し、売上高は93,500百万円から94,500百万円(前期比5.2%減)に、営業利益は100百万円から250百万円(前期の17.9倍)に、経常利益は300百万円から500百万円(前期比92.1%増)に、親会社株主に帰属する当期純利益は1,400百万円から2,000百万円(前期は71百万円の損失)と、減収ながら大幅増益を見込んでいる。
中国向けについては、日本車販売の不振により3~4割減少しており、増加に転じるのが難しい状況にあると同社は見ていた。そのため、縮小した市場に合わせて現地で希望退職を実施したが、その体質強化策の効果が業績面で現れ始めた。一方、北米に関しても、テネシー工場を2024年末に閉鎖、北米のシートアジャスタ生産をオハイオ工場へ集約、一拠点化して効率を高めることに成功し、原価率の低減を図ったことなどがプラスに寄与した。さらに、円安・ドル高の効果も収益を押し上げる要因となった。
このように構造改革を進めたことで利益率が向上し、業績の上方修正につながった。しばらく業績面で苦戦が続いたものの、利益を生み出す体質に転換したと言えよう。今後も利益を生み出す施策を進める考えだ。日本国内ではシート関連製品は頭打ちと見ているが、一方で電子事業は順調に拡大しておりさらに強化する。アジア地域では中国以外の地域、具体的にはインドにおいて日系メーカー主体で受注が増えているが、中国から他の地域への拡充が急がれる。北米に関しては、米国でトランプ大統領が就任して以降ビジネス環境の不透明感が増しているが、テイ・エス テックとの連携などにより米国自動車メーカーへの営業を強化する考えだ。また、北米での拠点を集約した効果が見込まれるだけに、今後は関税の状況も見据えた戦略を進める。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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