ドーン Research Memo(1):2025年5月期中間期は過去最高の売上高・利益を達成
ドーンは、地理情報システム(GIS)を活用したシステム開発・販売を手掛ける企業で、特に防災や防犯関連のクラウドサービスでの成長が著しい。2025年5月期中間期では売上高が前年同期比15.3%増の635百万円、営業利益が191百万円と過去最高を記録。主力商品の「NET119緊急通報システム」は全国消防で広く採用され、人口カバー率が73.7%に達している。また、新たな映像通報システム「Live119」も拡大中。同社は今後も安定した成長を維持しつつ、消防向けの新サービスやIoT技術の活用でさらなる展開を見据えている。2025年5月期の業績も増収増益を見込み、株主への増配を継続する方針である。
ドーン<2303>は、地理情報システム(GIS)を活用したシステムの開発・販売を行う企業である。中央省庁や地方自治体、電力会社などでの採用実績が多く、信頼性の要求されるシステムに定評がある。GISエンジンソフトのライセンス販売や受託開発を長年にわたり事業の柱としてきたが、近年は防災や防犯関連のクラウドサービスで業績を伸ばしている。主力の「NET119緊急通報システム」が全国の消防で採用され、人口カバー率は73.7%(2024年11月末時点)とデファクトスタンダードとなっているが、次期の主力商品として、消防向けの映像通報システム「Live119」が拡大期に入っている。同様の映像通報技術を応用した映像通話システム「Live-X」、災害情報共有サービス「DMaCS」、自治体向けの「防災アプリ」も好調に推移している。2024年7月には、エッジAI技術を所有する(株)tiwakiと資本業務提携を行った。
1. 2025年5月期中間期の業績概要
2025年5月期中間期の売上高は635百万円(前年同期比15.3%増)、営業利益191百万円(同15.5%増)、経常利益195百万円(同10.6%増)、中間純利益138百万円(同10.3%増)と上半期の過去最高となる売上高及び各利益を達成した。中間期の売上高は、各種クラウドサービス・アプリの契約数が積み上がり、売上構成比で63.6%を占めるストック型の「クラウド利用料」が前年同期比8.1%増と順調に増加した。クラウドサービスは、主力の「NET119緊急通報システム」が、消防管轄人口カバー率7割を超えトップシェアを堅持したのに加え、第2の柱である映像通報システム「Live119」は人口カバー率45%を超えるまで導入拡大が進んでいる。「クラウド初期構築」収入はフロー型の収入であるが、前年同期比で21.8%増と高い伸びとなっており、今後ストック型の「クラウド利用料」につながる。営業利益増に関しては、クラウド利用料の増加などにより売上総利益が前年同期比11.6%増加したのに対し、販売費及び一般管理費は同8.6%増と相対的に伸びが抑制されたことが主な要因である。結果として、営業利益率は30.1%と高い水準を維持した。
2. 2025年5月期の業績予想
2025年5月期の業績は、売上高で前期比5.3%増の1,580百万円、営業利益で同5.1%増の560百万円、経常利益で同3.8%増の568百万円、当期純利益で同1.8%増の395百万円と、10期連続の増収増益を予想する(期初予想どおり)。主力のクラウドサービスである緊急通報システム「NET119」及び映像通報システム「Live119」が安定成長を支える基盤となる。新規の取り組みを並行して行っており、業績貢献まで時間がかかることもあり、増収率では前期比5.3%とやや低めの伸び予想となった。営業利益に関しても、前期比5.1%増(前期は20.3%増)と低めの伸びを予想する。費用面においては、人的資本の強化に伴う採用活動費・人件費等の増加を織り込んでいる。
同社の業績は、年度末に納期を迎える受託開発プロジェクトが多いため下期偏重となる。中間期を終えての進捗は、売上高が40.2%(前年同期は36.7%)、営業利益が34.2%(同31.1%)と前年同期を上回っており、順調に推移している。弊社では、自治体の防災・防犯DX投資の増加が見込まれるなか、同社がクラウド利用料を中心としたストック型の事業モデルを構築していることから、業績予想の下振れリスクは低いと考えている。進行期は、前期にM&Aや業務提携に着手した複数の案件を進展させるための研究開発が基本となるため戦略的な“踊り場”と位置付けており、上振れの可能性も限定的である。中長期的な観点では、エッジAI技術・特許技術と既存クラウド技術・サービスの融合によるサービスの進化に期待したい。
3. 株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題として位置付けており、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、累進配当を基本方針としている。この方針の下、2016年5月期以降は、好調な業績を背景に連続増配を続けてきた。2025年5月期の配当金は、前期比2.0円増の22.0円、配当性向17.1%を予想する。弊社では、業績の拡大による安定的な増益とともに、将来的には配当性向の上昇余地もあるため、増配ペースが上がることが期待できると考えている。
■Key Points
・中間期過去最高の売上高・利益を達成
・2025年5月期は10期連続の増収増益を予想。売上高・各利益ともに進捗は順調
・10期連続の増配に期待。2025年5月期の配当金は年22.0円(前期比2.0円増配)を予想
・映像通報サービス「Live118」が海上保安庁で運用開始。スマートスピーカーAmazon「Alexa」を防災目的等で活用できる新たなIoTサービスをリリース
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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