リネットジャパン Research Memo(9):2020年9月期は減収ながら経常増益を確保(期初予想据え置き)
1. 2020年9月期の業績見通し
2020年9月期の業績予想についてリネットジャパングループ<3556>は、期初予想を据え置き、営業収益を前期比11.7%減の7,568百万円、営業利益を同10.8%減の383百万円、経常利益を同6.7%増の412百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同4.9%増の259百万円と減収ながら経常増益を見込んでいる。
減収予想となっているのは、前述のとおり、期ずれ分のはく落や「車両販売事業」における計上方法の変更(割賦販売からリースへの切り替え)※が理由であり、その点では業績の後退を示すものではない。また、想定外のコロナ禍の影響を受けているにもかかわらず、期初予想を据え置いたのは、「海外事業」が苦戦する一方、「リユース事業」「小型家電リサイクル事業」は上振れペースで推移しており、プラス・マイナスを総合的に判断した結果と言える。
※例えば、100万円の自動車を割賦販売すれば、売上高100万円とそれに付随する利益が契約時に一括して計上される一方、3年間のリース契約となれば、毎年約33万円の売上高とそれに付随する利益が3年間に案分されて計上されることになる。したがって、契約時の売上高・利益は3分の1に一旦減少するが、3年間にわたって安定的な売上高・利益を計上することができ、「ストック型収益」のビジネスへの転換として捉えることができる。
利益面でも、将来に向けた積極投資(人材採用、送出し用研修センター兼寮の建設等)に加え、「車両販売事業」における計上方法変更やコロナ禍の影響により、「海外事業」が一旦大きく落ち込むものの、「リユース事業」及び「小型家電リサイクル事業」による利益の底上げでカバーし、経常増益を確保する想定である。経常利益率も5.4%(前期は4.5%)に改善する見通しである。
2. コロナ禍による影響(業績見通しの前提)
(1) リユース事業
巣ごもり需要(片付けを含む)が追い風となり、販売及び買取の両面でプラスの効果が働いている。特に、5月以降、日商1,100万円ペース(月間+60百万円の上積み)への引き上げを計画しており、それに応じた体制強化を実施した※。また、この傾向は少なくとも年内は続く見通しである。
※商品センターの稼働率を上げるため、パートアルバイト50人を新たに採用。コロナ禍により失業中の外国人留学生を積極的に受け入れている。
(2) 小型家電リサイクル事業
こちらも片付け需要が追い風となっており、これを契機として、自治体を始め、各企業との連携等により、宅配回収&リサイクルの普及を一気に進めていく方針である。
(3) 海外事業
1) 車両販売・リース
前述のとおり、活動制限を背景とした販売面での落ち込みに加え、購入者からのスケジュール変更申請も増加していることから、下期の営業も慎重な姿勢を継続する方針である。なお、支払遅延などにより回収可能性に懸念が生じてくれば、売掛債権に対する引当金の計上や減損処理などが費用として発生する可能性がある。
2) マイクロファイナンス
少額で分散したポートフォリオであり、コロナ禍の下でも大きな影響はなく、計画を少し下回る程度で推移する見込みである。
3) 外国人HR事業部(人材送出し事業)
入国制限期間などにおいては売上げが立たない状況が継続するものの、日本における自動車整備士への需要は高く、再開されれば、順調に立ち上がってくるものと想定される。また、2020年春頃の着工を予定していた自前の送出し用研修センター兼寮(1,500名規模)の建設に向けても、手続き的な遅れが生じているが、その間は職業訓練学校との提携を進める方針のようだ。そもそも業績へのインパクトではまだ小さいことから、ダウンサイドのリスクは限定的であり、来期以降の本格稼働に向けて体制を整えていく。
3. 弊社アナリストの見方
通期業績予想の達成のためには、下期の営業収益3,970百万円(前年同期は4,171百万円)、経常利益304百万円(前年同期は150百万円)が必要となる。引き続き、「海外事業」(車両販売事業)については、コロナ禍によるマイナスの影響を想定しておく必要がある上、計上方法の変更もマイナス要因となるものの、「リユース事業」の上振れや「小型家電リサイクル事業」の成長加速の動きにより、通期業績の達成は十分に可能であるとみている。当面の注目点は、コロナ禍の影響がいつまで続くのかという点はもちろん、コロナ(収束)後に向けた取り組みである。特に、足元での需要拡大に対応して体制強化を図った「リユース事業」が、ネット化の更なる進展を追い風として、巨大なリユース市場の中でいかにシェアを高めていくのか、アップル社製品の宅配便リサイクルサービスを開始した「小型家電リサイクル事業」がどのような形で成長を加速していくのかは、来期以降の業績を占ううえで重要なポイントとなるだろう。また、「海外事業」については、売上げがストップしている人材送出し事業の再開に向けた動きをフォローしたい。まずは年間250名の人材を送り出す計画(1年後には1,000名)を描いており、そうなれば年間数億円単位での収益が積み上がっていくことになるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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