博展 Research Memo(9):新たな3ヶ年の中期経営計画を策定
博展<2173>は、2019年3月期を最終年度とする中期経営計画を推進してきたが、前期決算の状況や今期の業績見通し、市場環境等を踏まえ、これまでの計画を減額修正するとともに、新たに2020年3月期の計画を策定した。2020年3月期の目標として、売上高12,400百万円(3年間の平均成長率10.2%)、営業利益450百万円(営業利益率3.6%)と年率2ケタの売上成長を目指すとともに、営業利益率も将来に向けた投資を継続しながら毎年営業利益率1.0%程度の着実な改善を見込んでいる。
売上高は、6つの事業がそれぞれ伸長する計画である。主力の「展示会出展」を着実に伸ばす一方、市場拡大が予想される「イベントプロモーション」「商談会・プライベートショー」が、競争力を高めながら中期的な業績の伸びをけん引する想定となっている。また、次世代の基幹事業として期待される「カンファレンス・セミナー」「商環境」「デジタル・コンテンツ&マーケティング」についても体制強化により高い伸び率を見込んでいる。ただ、前回計画を減額修正したのは、市場環境にやや不透明感があることや異業種からの新規参入を含めた競争激化等が見られるなかで、若干慎重なスタンスをとったことが要因とみられる。無理に売上高を追いかけずに採算性を確保する一方、将来の競争優位性や事業拡大につながる投資は継続するシナリオとなっているようだ。
もっとも、中期ビジョン「Be a PARTNER of EXPERIENCE MARKETING」(経験価値提供マーケティング・パートナーとなる)を実現すべく、従来の「Face to Face マーケティング」の上位概念に当たる「Experience Marketing」※の提供を通じて、顧客のマーケティング・パートナーへの進化を目指す方向性に変更はない。中期経営計画の達成に向けて、引き続き、以下の3つの取り組みを推進する。
※人と人とが出会う場(空間)とそこで生み出される体験に焦点を当て、感動価値・経験価値を最大化し、顧客のブランド価値や商品価向上をともに実現していくこと。
1. 顧客との永続的な共存共栄を実現するマーケティング・パートナーへの進化
2016年3月期より継続してきた「点」から「線」のサポート、そして「面」のサポートへと顧客内シェアを拡大する取り組みをさらに推進することで、より効果的なセールス・マーケティング戦略を立案・実行し、潜在顧客の掘り起こしや見込顧客の創出等、直接的に顧客の売上増加に寄与していくマーケティング・パートナーへと進化を図る。顧客のビジネスの変化に即した新たなマーケティング手法の確立を目指し、イノベーション能力を高める取り組みも進めていくようだ。
2. 各事業とデジタル・テクノロジーの融合による新たなビジネスモデルへの進化
各サービスの更なるシェア拡大、提供価値及び収益性の向上を図るとともに、新たな市場・サービス領域への挑戦も積極的に推進していく。(株)アイアクトやタケロボ(株)、(株)スプラシアとの連携により、企業のデジタルマーケティングを支援する様々なソリューションの提供や、ロボット技術の活用による新たなコミュニケーション・ビジネスの構築等、デジタル・テクノロジーを最大限に駆使し各事業との相乗効果をより高め、今までにない新たなビジネスモデルの創出を行う。顧客のビジネス拡大に直接貢献できる付加価値の高いコンテンツ創出やIT・デジタル技術等を用いた新商品・サービスの開発を継続的に行っていくようだ。
3. グローバル対応が可能なパートナーへの進化
近年、顧客ニーズが高まっているグローバルでのマーケティングサポートサービスを提供できるインフラを構築し、サービスコンテンツ創出を継続して推進する。特に、日本企業による海外でのイベント展示会への出展や海外企業による日本国内でのイベント展示会への出展について、高品質なサービス提供ができる体制を整備する。また、グローバル企業によるアジア・パシフィック市場へのマーケティングサポートについても対応できる体制を構築していく。また、前述のとおり、世界において近年重要視されているサステナブル(持続可能な)活動を通じ、企業ブランドの持続的な価値向上を目指すサステナブル国際会議の運営など、世界市場でサービス提供できるビジネスインフラの確立も推進していく。
上記3つの取り組みを実現するため、業界研究、顧客研究をさらに深め、マーケティング・パートナーとして専門性を高め、差別化された付加価値の高い提案を行い、シェア拡大を進めていく方針である。
足元の利益水準が、積極的な先行投資や新しい分野への挑戦などにより低調に推移しているが、IT技術の急速な進展等を背景として、これまでの同社の強み(既存事業における実績やノウハウ、顧客基盤など)とデジタル分野との融合(キラーコンテンツの開発や新たなビジネスモデルの創出等)により他社との差別化を図り、シェア拡大を目指す同社の戦略には合理性があるものと評価している。外部環境にはやや懸念材料があるものの、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた広告・イベント市場の活性化期待などが追い風となるほか、同社の戦略が着実に進展していることから、持続的な成長を実現することは可能であるとみている。中長期的な視点から、収益力向上への道筋やデジタルマーケティング分野における新たな価値提案のほか、人材補強とその活用の成果(採用・育成や定着率の向上、稼働率の最適化等)が、業績の伸びにどのように結びついていくのかに注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<MW>
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