冬と言えば風邪やインフルエンザといった感染症が流行する季節。
気温の急激な低下や乾燥によりウイルスが増殖し、かかりやすくなってしまう季節でもあります。特効薬がない風邪の原因であるウイルス対策には、体の免疫を高めて整えることが何よりも大切。風邪になってから対処するのでは無く、風邪にならない体作りが大切なんです。
免疫を高める大切な要素が「睡眠」「運動」「食事」の3つ。今回はその中でもすぐに変えられる「食事」で摂るべき栄養素や、それらの栄養素を摂取出来る食事をご紹介します。
冬の感染症対策は免疫を高められる「3大栄養素」を意識して摂取しよう!
冬に風邪をひきやすい理由とは
風邪をひきやすい季節の代名詞は冬、そしてインフルエンザが大流行する季節も冬ですよね。
風邪やインフルエンザといった感染症が流行する時期ということもあり、免疫が一番落ちている季節は「冬」だと思われがちですが、実は免疫が一番低下してしまう季節は「夏」なのだとか。
私たち人間を含む生物は、厳しい冬を乗り切るために秋に栄養を蓄える傾向にあるそうで、免疫力が最も高い時期は「秋から冬にかけて」なのだそう。
その蓄えた栄養素を春から夏にかけて消費して生活するため、消費し切ってしまう夏の終わり頃が最も免疫力が低下している時期。
しかし、本来休息する時期である冬でも人間は他の季節同様の生活を行っているため、免疫力を過剰に消費。さらに乾燥した空気で増殖したウイルスに晒されてしまい、体内に侵入されることで風邪等の感染症にかかりやすくなってします。
免疫システムは様々な免疫細胞が担っていますが、その約7割が「腸」に集まっているそう。
摂取した食物を消化・吸収するだけではなく、免疫細胞の大半が集まる腸は「第二の脳・心臓」とも呼ばれることがある程大切な臓器なんです。
腸内の環境を保ち、免疫を整えるために必要な3大栄養素と呼ばれるものが“亜鉛・ビタミンD・マグネシウム”の3種。これら栄養素を意識的に摂取することを心がけることが大切になってくるそう。
では、この3大栄養素を摂取するためにはどのような食物を摂れば良いのでしょうか。
免疫を整える亜鉛・ビタミンD・マグネシウムの効率的な摂取方法
免疫細胞の7割が集中する腸。
腸の健康が免疫力に直接影響してくるため、睡眠や運動と並んで「しっかりした食生活」が非常に重要になってきます。
今回は免疫力を高め整えるために大切と言われる亜鉛・ビタミンD・マグネシウムの3大栄養素と、効率良くそれぞれの栄養素を摂取出来る食材をご紹介します。
●亜鉛
亜鉛は体内で作ることが出来ない「必須微量ミネラル」と呼ばれる栄養素で、体内の歯や骨・肝臓などに約2〜4g程度存在。
200種以上の酵素の構成や酵素反応の活性化、ホルモンの合成や分泌の調整・DNA合成・タンパク質合成・免疫反応の調節等に作用しており、身体の成長と維持に必要な栄養素となっています。
また、亜鉛は体内に入り込んだ異物やウイルス等を駆除する免疫細胞の働きを正常にするサポートを行なっており、活性酸素を除去する酵素の働きを助けることも分かっているのだとか。
つまり、亜鉛不足になると免疫細胞だけでなく抗酸化作用も正常に働かなくなり、細胞老化の原因である参加ストレスの上昇を招くことにも繋がります。
その亜鉛を摂取するのにおすすめな、亜鉛含有量が多い食材は「牡蠣」「からすみ」「牛肉」など。他にもうなぎの蒲焼き等も亜鉛が含まれる食材。
亜鉛は高級食材や普段あまり手に入らない食材に含まれていることが多いそうで、1日の摂取推奨量は30歳〜49歳の男性で11mg、女性で8mg程。
しかし実際の摂取量は平均して1日に8mgと少なく、若い女性では7mg以下というデータも。日本は先進国で唯一、亜鉛欠乏者が10〜30%もいるのだとか。
動物性タンパク質・クエン酸・ビタミンCといった栄養素と一緒に摂取することで、亜鉛の吸収を高めてくれるので、一緒に摂取することがおすすめです。
●ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収促進・骨の成長促進・血中カルシウム濃度を調節する重要な役割のある栄養素で、健康な骨を維持するために欠かせない脂溶性のビタミン。
殺菌作用を発揮する抗菌ペプチドを作る働きをし、体内に侵入したウィルスや細菌などに対して必要な免疫機能を促進してくれるため、風邪やインフルエンザ、気管支炎や肺炎などの感染症の発症、悪化の予防にも関与すると言われている栄養素です。
また、ビタミンDは腸粘膜を修復する働きがあることから、免疫に多大な影響力を持っている腸にとって欠かせないビタミン。
ビタミンDはサンマ・鮭・アジ等の魚類に比較的多く含まれているほか、きのこ類・卵・肉類からも摂取が可能。
また日光に含まれている紫外線からも生成されるほか、天日干しした食品にもビタミンDが増加傾向にあるそうで、その中でも太陽光を当てた「天日干しの椎茸」は生のものに比べ、ビタミンDの代替成分「エルゴステロール」「ビタミンD」が豊富に含まれているそう。
干物を選ぶ際は天日干しを選ぶことが、ビタミンDを効率良く摂取するカギとなります。
●マグネシウム
マグネシウムは骨の成長・強化・維持に重要なミネラル。体内には25g程が存在しており、その半数以上が骨に含まれています。
マグネシウムにはおよそ300の酵素の働きを助けてくれる働きがあり、カルシウムの作用と深く関わりながら筋収縮を制御したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、血小板の凝集を抑え血栓を作りにくくするといった役目を果たしています。
また全ての細胞にも含まれ体内のミネラルバランスを調整する役割を持っているマグネシウムですが、上述したビタミンDの活性化になくてはならない栄養素。
マグネシウムは体内で活性酸素を分解する酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)を作り出すために欠かせない栄養素で、体を酸化ストレスから守ってくれています。
腸にとってなくてはならない機能である排便にも作用し、便秘薬の成分の1つにもマグネシウムが活用されています。
このマグネシウムはごまやアーモンド・カシューナッツなどの種実類をはじめ、あおさ・青のり・わかめ・とろろ昆布といった海藻類、豆腐・納豆などの豆類・大豆加工食品の3カテゴリーに多く含まれています。
昔ながらの日本食には多く含まれているものの、ファストフードや冷凍食品を頻繁に食べる機会が多い現代人はマグネシウムが不足しがち。
カルシウムの過剰摂取でも体内のマグネシウムが過剰に排出されてしまうそうなので「マグネシウム1:カルシウム2」の比率で摂取するのがおすすめなのだとか。
3大栄養素を効率良く摂取!専門家が教える旬の食材を使ったおすすめメニュー
これらの3大栄養素をしっかり摂取するために旬の食材を取り入れた免疫アップメニューに、細川モモ先生は「牡蠣の和風チャウダー」を紹介されています。
“海のミルク”と呼ばれるほど栄養豊富な牡蠣は亜鉛を豊富に含んでおり、特に感染症に気をつけたい冬(11〜4月)に旬を迎える食材。
牡蠣に発酵食品である味噌とオリゴ糖を含む豆乳や玉ねぎを加えることで、腸が喜ぶレシピ。
酪酸を作ってくれる食物繊維が豊富なきのこ、ポリフェノールが豊富な野菜もバランス良く摂ることが出来るメニューとなっています。
●【材料】2人分
・牡蠣…8粒
・にんじん…1/2本
・玉ねぎ…1/2個
・ほうれん草…1/4束
・しめじ…1/4パック
※お好みでコーンも
・バター…20g
・だし汁…200cc
・米粉あるいは小麦粉大さじ2
●【調味料A】
・豆乳…100cc
・味噌…大さじ1
・塩、こしょう…少々
“海のミルク”と呼ばれるほど栄養豊富な牡蠣は亜鉛が豊富に含まれている食材。とくに感染症に気をつけたい冬(11〜4月)に旬を迎えます。
その牡蠣に発酵食品である味噌とオリゴ糖を含む豆乳や玉ねぎを加えることで、腸が喜ぶレシピにしました。酪酸をつくる食物繊維リッチなきのことポリフェノール豊富な野菜も追加されているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
【作り方】
調理時間…30分
・1:玉ねぎ、にんじんを食べやすいサイズに切る。ほうれん草は3cm程度の長さにざっくり切る。しめじは石づきをとり、長さ
を1/2にカットしてほぐしておく。
・2:フライパンにバターを溶かし、玉ねぎ・にんじん・しめじを炒め、しんなりとしてきたら米粉を入れ、粉っぽさがなくなるまで炒め、だし汁を入れて2〜3分煮る。
・3:(2)に牡蠣を加えて火が通ったらほうれん草と調味料を少しずつ入れ、味を調えて完成。
毎日気をつけて食事をするのが難しい人に
「睡眠」「運動」と同じくらい大切な毎日の「食事」。生きていく上での生命活動に必要な栄養素を摂取する、健康の原点とも言えるものと言えます。
これらの栄養素は定期的に摂取すればいいものではなく、本来は毎日継続的に摂取することが重要。それもそれぞれの栄養素単体で摂取するよりも、合わせて摂取することで働きが強くなるためまとめて摂取するのが望ましいのだそう。
しかし、毎日栄養の偏りなく食事をするのは簡単ではありません。食事のみで効率的な摂取を行うのは難しいのが現状です。
1人暮らしや普段あまり料理をしない方は、足りない栄養素をサプリメント等に頼るという選択肢も視野に入れてみて、栄養バランスを整え風邪やインフルエンザといった感染症予防を行なってみてはいかがでしょうか。