ショートムービープラットフォーム「TikTok」を運営するTikTok Japanが、「#ちょっとよくするムービーコンテスト」授賞式を11月25日に東京都内で開催。同コンテストでアンバサダーを務めるAKB48の込山榛香、審査員を務める社会活動家の湯浅誠、評論家の荻上チキらが登場した。会場では授賞式に加えて、デジタル世界の在り方に関するトークセッションも行われ、若者にとってサードプレイスとなっているSNSやオンラインコミュニティのより良い形を描く、さまざまなアイデアが提言された。
AKB48込山榛香ら4名のインフルエンサーが授賞式に登場
「#ちょっとよくするムービーコンテスト」は、TikTokが発足した「TikTok 第3の居場所プロジェクト」の一環となる企画。SNSやオンラインコミュニティが若者たちのサードプレイス(第3の居場所)になっている現代。そこでのつながりが世代や距離を越えた交流のきっかけや孤独の解消になっているという人も多いだろう。しかし、その反面で、デジタルの世界は誹謗中傷など不安や恐怖のもととなる危険もはらんでいる。そうした中で、デジタルの世界をもっと安心できる場所にするために、若者から募集した「ちょっとよくするムービー」を通じて、より良いアイデアを出し合うきっかけを作ることが本コンテストの趣旨だ。
授賞式のオープニングでは、TikTok Japanの金子陽子氏が主催者を代表して挨拶をした。
「TikTokというと、少し前までは若い女の子が好むものという印象をお持ちの方が多かったかもしれませんが、最近は生活の中で感じたちょっとした思いや悩み、あるいは新しいアイデアなど、いろんな動画が集まる場所になっています」と初めに語った金子氏。その上で同氏は「多様な思いや考えを表現する場所だからこそ、誹謗中傷や性的な被害に遭わないなど、安全な場所であり続ける必要があります」と本コンテストに込めた思いを述べ、「今回受賞された動画には、今の若い方々が安心・安全なデジタル世界をどういう風に作っていきたいのか、そんな思いやアイデアがあふれているので、今日は皆様と動画を見ながらデジタル世界の明るい未来を感じたいと思います」とコメントした。
続いて、本コンテストのアンバサダーを務めるAKB48の込山榛香、TikTokクリエイターのISSEI、ginjiro、Erikaの4名が登壇し、会場に集まった約100名の観衆を前にそれぞれ挨拶。その中で最近では女優としての活躍も目覚ましい込山は、「私はTikTokを始めて1年くらいでまだまだ未熟なんですが、TikTokが大好きで、元気をもらうこともたくさんあるので、今日はアンバサダーとしてこの場にいられることが光栄です」と笑顔で語った。
10組の若者クリエイターがデジタル世界をよくするメッセージを発信
その後、本コンテストで審査員を務めた、東京大学特任教授で社会活動家の湯浅誠、経済学者で国際大学GLOCOM准教授の山口真一、評論家でNPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事の荻上チキが登壇。同じく審査員を務め、この日は残念ながら会場には不参加だったクリエイティブディレクターの辻愛沙子のビデオメッセージに続いて授賞式が行われ、次の10組のクリエイターに記念の楯と副賞が贈られた。
【「#ちょっとよくするムービーコンテスト」受賞作品】
#ちょっとよくする賞/高知学園 高知中学高等学校
#みんなでよくする賞/Haruki and Ashley
Good Place賞/みか@ライスペーパーネキ
Innovative Safety賞/かずくん
Change the Future賞/ゆみ
Inspire Creativity賞/やすこうぴ
審査員特別賞/なの
審査員特別賞/のんちぇる
審査員特別賞/えみごん
審査員特別賞/タイガの振り付け
このうち、男性メイクを通じて「みんなが好きなことを認め合える社会」を提唱する動画でInnovative Safety賞を受賞した、かずくんさんは「『美容は女性のもの』という固定概念が強い中で、僕も『男性なのにメイクしているのはどうなの?』みたいに、いろんなコメントをもらうことがあります。そうした中で誹謗中傷のようなことが少しでもなくなればいいなと思って、この動画を投稿しました」とコメント。
一方で、ゲームセンターにあるパンチングマシンをヒントにした“アンパンチングマシン”という手法でアンチから喰らう心の傷の重みを表現し、Inspire Creativity賞を受賞したやすこうぴさんは「アンチコメントというのは捉え方によって重みが変わると思います。デジタルのアンチコメントは発言した表情が見えないからこそ、受け取る人の反応も変わる。そういうことをわかってほしいと思って、この動画を作りました」と述べ、それぞれの受賞者が自らの思いを披露した。
SNSなどに届くアンチコメント、どうやって対処する?
後半にはアンバサダーと審査員によるトークセッションが行われ、荻上を進行役に「デジタル世界の居場所について」と「デジタル世界にとって大切なこと」という2つのテーマによるトークが展開された。
初めに荻上から「インターネットとはどんな場所か?」という質問が投げかけられたアンバサダーたちは、「自分自身を発信する場所」(ISSEI)、「発信する場所でもあり、勉強する場所でもあり、楽しむ場所でもあり、今やなくてはならない場所」(ginjiro)、「学校に馴染めなかった自分が見つけた第二の居場所」(Erika)とそれぞれ回答。
一方、同じ問いに対して込山は「AKB48では、SNSは個人で管理することになっていて、好きなことが投稿できるので、グループとは違う形で自分自身を発信できる場所」と答え、「今はさまざまなSNSが登場して、私たちが発信することもありますし、ファンの方の投稿を見ることもあります。SNSで私のことを知って好きになったと言ってくださる方もいて、本当に世界の中心にSNSがあると感じます」とコメントした。
彼らの答えを受けて荻上は「一般的にサードプレイスは、家を第一の場所、職場や学校を第二の場所として、それ以外の場所にも時間を割いてネットワークを広げていこうという言葉だが、今ではインターネットがそうした第3の、あるいは第4、第5の場所になっているように感じます」と分析。さらに応募作品の中にアンチコメントへの対処に関する動画が多かったことについて言及すると、ファンから「ネガティブなコメントやちょっとおっせかいと感じるコメントをもらうこともある」という込山が、「でも、自分にコメントをくれるということは少しでも関心を持ってくれているということなので、出会ってくれたことが今後プラスになるかもしれないと思って自分の中でポジティブに変換しています。もちろん、それでも受け取れないと思う言葉をもらった時にはすぐにブロックします」と自信の対処法を紹介した。
その後、若い世代の意見を聞いた湯浅は「勉強になります」と感心の様子。「私も活動の中でいろいろな批判をいただくことがあるけれど、それで活動をやめるかといえばやめない。つまり活動することは息をすることと同じで、きっと皆さんにとってはSNSがそういう存在になっているんでしょうね」と述べて、若い世代とデジタル世界のつながり方に興味深い表情を見せていた。
さらにこの日は、アンバサダーの4人を生徒役に、湯浅による「つながり・居場所の重要性と現代の特徴について」、山口による「安全・安心なデジタル世界を作っていくために」と題したスペシャル講義も行われた。デジタル世界が“ちょっとよくなる”ことを目指して多様な世代が語り合う場は、さまざまな共感と提案があふれる機会になっていた。