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劇場長編アニメーション『ひゃくえむ。』を観たらとにかくすごかった! 苦しくなるくらいアツいストーリーと疾走感溢れる表現方法に脱帽


「チ。―地球の運動について―」で手塚治虫文化賞マンガ大賞を 史上最年少受賞した新鋭・魚豊の連載デビュー作「ひゃくえむ。」(講談社刊)。 陸上競技の世界で、「100m」という一瞬の輝きに魅せられた者たちの狂気と情熱を描いた物語は多くの共感と驚きを呼び、 ついに劇場アニメ『ひゃくえむ。』が9月19日(金)より全国公開となります。

「チ。―地球の運動について―」は拝読しているものの、恥ずかしながら「ひゃくえむ。」という作品の存在を存じ上げず、今回まっさらな気持ちで映画を拝見しました。そうしたら、本当にちょっと面白すぎて、凄すぎたので、筆者が感動したポイントをいくつかご紹介させていただきます…!

あらすじ

⽣まれつき⾜が速く、「友達」も「居場所」も⼿に⼊れてきたトガシと、 ⾟い現実を忘れるため、ただがむしゃらに⾛っていた転校⽣の⼩宮。 トガシは、そんな⼩宮に速く⾛る⽅法を教え、放課後2 ⼈で練習を重ねる。 打ち込むものを⾒つけ、貪欲に記録を追うようになる⼩宮。 次第に2 ⼈は100m ⾛を通して、ライバルとも親友ともいえる関係になっていった。 数年後、天才スプリンターとして名を馳せるも、勝ち続けなければいけない恐怖に怯えるトガシの前に トップスプリンターの⼀⼈となった⼩宮が現れるー。

https://www.youtube.com/watch?v=Y-CJXEKZX4g

“走る”ことの疾走感、緊張感を表す作画のバリエーションがすごい

まず印象的だったのが、独特のアニメーション。ものすごい技術を使っているのにあえてイラストっぽく、2Dっぽく見せている様な感じがあり、何重にも重なる作業の重みを感じました。本作が面白すぎてすぐに原作を購入したのですが、魚豊先生の絵のタッチ、絵にこめられた力や気合いをアニメーションでも感じる様な、そんな気迫がありました。

監督は、2020年に『音楽』で長編デビューをした岩井澤健治さんで(『音楽』も超絶素晴らしいのでぜひご覧いただきたい)、アニメーション制作は岩井澤監督が代表を務めるロックンロール・マウンテン。エンドロールに「ロトスコープ(※)協力」でいくつかの方のお名前があったので、トガシたちが走っている姿はロトスコープを使用しているのだなと思いました。

※実写映像をフレームごとにトレースしてアニメーションにする手法。

そうでなければこの走行姿勢のリアルさは出ないのでしょう…!それでいて、キャラクターの表情はアニメーションらしく(あえて言うならば)誇張して描かれていて、そのバランスが素晴らしかったです。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、後半にトガシの感情が爆発するシーンでのアニメーション描写が圧倒的すぎて感動。

その他のシーンでも、作画、アングル、照明、色彩などなど全てが物語を盛り上げていて、これは映画館の大スクリーンで観るべき!と滾りました。

陸上競技のアツさと孤独さを感じるストーリー展開がすごい

本作を拝見して、陸上競技——特に100m走という競技は、最もシンプルで最も熱く、最も孤独なスポーツなのではないかと感じました。生まれつき足が速く、周りから一目置かれていて友達も多いけれどどこか冷めている少年期・トガシが、自分に自信の無い小宮に伝える「大抵のことは、100mを誰よりも速く走れば、全部解決する」という言葉。

これ、すごすぎませんか? 100mだけ速ければ、でもその100mを速く走る為に死ぬほどの努力をしている選手たち。そしてプレッシャー。どのスポーツにもプレッシャーはつきものですが、走るというシンプルな行為だからこそ、自己との向き合い、「なぜ速く走れないのだろう?」という絶望、それらが全くスポーツをしてこなった筆者にも少し想像出来てしまうあたりが、興味深いなあと感じました。

また、『ひゃくえむ。』には、少年期から学生時代を経て、社会人になってからのエピソードが入っている所がとても面白いなと思いました。9月13日から『東京2025世界陸上』がスタートしますが、選手の皆さんの活躍を会場やテレビで見て応援していても、その後の選手のことって、熱心に追っている方以外はあまり知らないと思うんです。これは自戒を含め、熱し易く冷め易いというか…。
エース、神、神童…様々な呼ばれ方をしてきた素晴らしい選手たちが、試合の後、大会の後、どんな想いを抱えて生活をしているのか。本作ではそこが痛いほどしっかり描かれていて、夢と才能と現実をガツンと見せつけられました。これは、陸上競技に限らず、あらゆるスポーツや芸術にも共通する所だと思います。

本作ではトガシを松坂桃李さん、小宮を染谷将太さんが演じていますが、社会人になってから特にお2人の芝居が効いていて、とても“人間”を感じました。2人以外のキャラクターも、全員めっちゃいいんですよ!

とにかく映画館で観て

アニメーション、ストーリーの他にも、音響も素晴らしく、走っている時のタタタタタタタタ…!という音をどう作っているのかが、今一番気になりました。スパイクにマイクを装着したり、実際にトラックに水を撒いて劇中と同じ状況にするなど実写撮影に近い状態で録音を行いリアルを追及しているそう。

Official髭男dismの書き下ろし主題歌「らしさ」も、映画の余韻をしっかり支えてくれて、歌詞を読んで「めちゃめちゃ『ひゃくえむ。』じゃん…(涙)」と感動してしまいました。至極失礼な言い方をしてしまうと、筆者的にはノーマークだった劇場アニメ『ひゃくえむ。』。大好きな作品になりました。関わってくださった皆さん、ありがとうございました!

作品情報

『ひゃくえむ。』
公開表記:2025 年9 ⽉19 ⽇(⾦)全国公開
コピーライト:⿂豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会

<CREDIT>
松坂桃李 染⾕将太
笠間 淳 ⾼橋李依 ⽥中有紀
種﨑敦美 悠⽊ 碧
内⽥雄⾺ 内⼭昂輝 津⽥健次郎
原作:⿂豊『ひゃくえむ。』(講談社「マガジンポケット」所載)
監督:岩井澤健治
脚本:むとうやすゆき
キャラクターデザイン・総作画監督:⼩嶋慶祐
⾳楽:堤博明
主題歌:Official 髭男dism「らしさ」(IRORI Records / PONY CANYON)
美術監督:⼭⼝渓観薫 ⾊彩設計:松島英⼦ 撮影監督:駒⽉⿇顕 編集:宮崎 歩
⾳楽ディレクター:池⽥貴博 サウンドデザイン:⼤河原 将 キャスティング:池⽥舞 松本晏純 ⾳響制作担当:今⻄栄介
プロデューサー:寺⽥悠輔 ⽚⼭悠樹 武次茜
アニメーション制作:ロックンロール・マウンテン
製作:『ひゃくえむ。』製作委員会(ポニーキャニオン/TBS テレビ/アスミック・エース/GKIDS)
配給:ポニーキャニオン/アスミック・エース
公式サイト:https://hyakuemu-anime.com
公式X: https://x.com/hyakuemu_anime
<原作情報>
『ひゃくえむ。』(講談社「マガジンポケット」所載)
著:⿂豊
コミックス全5 巻、新装版全2 巻:好評発売中

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