超不運体質な男子高生と心配性な女子高生をはじめとするクラスメイトたちの日常を描く田村結衣の人気ラブコメ漫画 「矢野くんの普通の日々」(「コミックDAYS」連載)が、ダンス&ボーカルグループFANTASTICSのボーカルを務め、俳優としても活躍する八木勇征を主演に迎え、実写映画化。『矢野くんの普通の日々』が11月15日より公開となります。
見れば誰もがハッピーになる、この冬、一番の“ピュアキュン”ムービー。新城毅彦監督に撮影の思い出や、こだわりなどお話しを伺いました。
――本作とても楽しく拝見させていただきました!原作を読まれた時はどの様な感想を抱きましたか?
原作を読んだ時はこれまで手がけてきた作品のテイストと違うなと。少女漫画原作の映画を手掛けることが多かったのですが、今回は少年誌の漫画で、テイストが異なるのでグッとコミカルに振った方が良いのかなと一瞬思ったのですが、それは自分らしくないなと。映画を観に来てくれる方の多くは女性だと思うので、少年誌の漫画ということはあまり意識しないで、今までやってきたことをプラッシュアップしていこうと思ったのが最初でした。超不運体質で何をしていてもアクシデントに見舞われるという矢野くんのキャラクターは、やりすぎると笑えないのですが、ドタバタしないと成立しないですし、そのすり合わせが結構難しかったです。
――おっしゃるとおり、少女漫画的な展開では無いんですよね。
王道のキラキラ系というか、学園ラブコメラブストーリーといった作品を続けて撮っていると、言い方が悪いですが、少し飽きてくる部分もあります。やらなきゃいけないことは分かっているので、そこは迷わないのですが、違うことをやりたがる自分もいて。一瞬「全く別のテイストを入れてみようかな」とか思うのですが、求められているのそうじゃないと立ち止まって考える時間がありましたね。本作は特に違うことが出来そうなにおいがするし、そこに食いつくんですけど、それは違うなって。僕がキャスティングされている理由があるし、その中で何が出来るだろうということを考えました。
――映画監督というお仕事にはクリエイターとしての部分と、職人である部分両方があると思うのですが、新城監督の中のバランスはいかがですか?
職人ですかね。クリエイター型の監督の中には、自分で本を書かれている方、撮影や技術的なことに詳しい方もいらっしゃると思うんですけど、僕はそれらの部分はプロの方に委ねて、その人たちに乗っかっていけばいいという感じで。じゃあ僕は何を考えるかというと、作品におけるテーマやメッセージをどう伝えて、観る人の気持ちにどう寄り添っていくかということですね。なので、クリエイターという意識はあまり無いのですが、「仕事だから」とドライにやっているわけではありません。
「映画」と一括りに言っても、エンターテイメント作品、芸術的なもの、インディーズのもの、色々ありますよね。僕はテレビドラマの制作から始まって基本的にエンタメ路線で来ていますし、入口が柔らかく楽しめて、笑ったり切なくなっているうちに伝えたいメッセージを受け取ってもらえるという作品作りをしたいなとおもっています。映画作りって少し間違うと自己満足になると思っているので、ちゃんと楽しんでもらって、何かを持って帰ってもらえるように。
――まさに本作は楽しみながら、優しい気持ちにもあたたかい気持ちにもなりますし、日々の幸せを感じさせてくれる作品ですよね。映像化する際に工夫したことを教えてください。
コミックは 1話読み切りだったりとかするので、それで成立していくんですけど、映画の場合は起承転結じゃないですけれど、動きがないと観る人間が飽きちゃうじゃないですか。そこは結構大変でしたね。分かりやすく敵が出てきたり、意地悪なライバルがいたほうがメリハリはつけやすいのですが、それはこのお話と違ってしまいますし。脚本家の杉原(憲明)くんとも、軸がぶれない様に気をつけて話ながら脚本をつくっていきました。羽柴のキャラクターも、千輝くん(『なのに、千輝くんが甘すぎる。』)の様なタイプにした方が矢野くんとの差も出るのですが、羽柴は違うタイプで、すごくいいやつなんですよね。悪い人がいないので、その中で話を組み立てていく難しさがありました。
――主人公の2人も自分の気持ちに無自覚だったりして、可愛いですよね。
可愛いらしい思考ですよね。だからと言って矢野くんのことをダサく描きたいわけではないし、八木勇征さんが演じるのだからそもそもが可愛いわけじゃないですか。そこからどうやってキャラクターに振り幅を作るかということをみんな悩むと思うのですが、本作は幸い眼帯や傷が増えていくことで、チャーミングさを演出することが出来たので。試行錯誤しながらですけど、血の出具合がグロくならいように、傷も痛々しくならない様に作っていました。
――八木さんの魅力を活かしつつ、普段の八木さんとは全く違うところも素敵ですよね。
違う役者さんがやったら、違う矢野くんとか(吉田)清子になるわけじゃないですか。ということは、やっぱりどこかに俳優本人のキャラクターや育ってきた背景が投影されると思っています。たくさん引き出しを持っていて、色々な角度から演じられる方もいるとは思うのですが、本作のみなさんはまだ若いですし、素の良さを出してもらった方が良いなと思っていました。
――現場で素の良さを引き出す演出もされているのですが、
あまり細かいことは言わないです。俳優がキャラクターをどう受け止めて、どう表現してくるのかというのは最初はお任せです。現場でやりながら、最低限のことは説明しますけれど、「うまくやろうと思わないで全く構わない」といったことはよく言っていました。テクニックが欲しいわけではなくて、10点満点中の7点くらいは欲しいかな、という。撮影をやりやすくしてあげたいなという気持ちと、締めるところは締めないといけないなという気持ち両方があるので、やりながらバランスを探っていくのですが、基本的にはやりたい様にやってもらって、良かったらOKだし、ダメだったら調整をしていく。俳優という仕事をしているからには、当然向上心とか、上手くなりたいという気持ちはあると思うし、そうすると悔しいと思うこともあるわけじゃないですか。そういう気持ちを大事にしてもらいたいなとは思っています。
本作での皆さんは、自分なりに感じて、受け止めて、葛藤とか、すごく大変だったと思うのですが、頑張っているから良さが出ているのだと思います。こちらの方が勉強になることもありますしね。
――なるほど。映画作りやお芝居だけではなくて、あらゆる仕事論につながりそうなお話ですごく面白いです。
映画作り自体も、技術的なことよりも、モニターを見て鳥肌が立った感覚を大切にしたいというか。計算して作れないところも映画の良さだったりするなと思います。映画館に映画を観に行くと、皆さん意外と落ち着きないんですけど、良い映画は本当に動かないですからね。そういう感覚が理屈より大事だなと思います。本当は理屈がなきゃいけないし、理屈が無いと説明出来ないからまずいんですけど、スタッフでも俳優でもそのニュアンスを共有出来るか・出来ないかにかかっている気がします。
もちろん、観た人が素直に受けいれられる動きじゃないといけないですし、どこかで1回引っかかっちゃうとそこで集中力や感情が切れちゃう気がするので、説得力のある演出も大事だと思っています。
――先日八木さんにお話を伺ったのですが、ザリガニのシーンがとてもい印象に残っているそうです。
ザリガニが指に挟まるとか、野球のボールが頭に当たるとか、清子が白目剥いて倒れるとか、そんなバカみたいなことばかりやっていて大丈夫だろうか?とはちょっと思いました(笑)。2人とも本当に思い切ってやってくれるから、すごく楽しかったですね。八木さんと池端さんがあそこまで振り切って変顔をしてくれるなんて、この先に2度と無いかもしれませんから、ぜひ皆さんにも楽しんでいただきたいです。
――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
「矢野くんの普通の日々」
主演:八木勇征
出演:池端杏慈 中村海人 白宮みずほ 新沼凜空 伊藤圭吾 筒井あやめ
原作:田村結衣「矢野くんの普通の日々」(講談社「コミックDAYS」連載)
監督:新城毅彦 脚本:杉原憲明 渡辺啓 伊吹一 音楽:信澤宣明
主題歌:Yellow Yellow/FANTASTICS from EXILE TRIBE (RhythmZONE)
挿入歌:Staying with you/Travis Japan (キャピトル・レコード/ユニバーサルミュージックジャパン) 企画製作:HI-AX 制作プロダクション:ダブ 配給:松竹
クレジット:©2024 映画「矢野くんの普通の日々」製作委員会 ©田村結衣/講談社
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