
薬剤耐性(AMR)が「サイレントパンデミック」として危機視される中、感染症DXスタートアップのカルタノバが国立健康危機管理研究機構(JIHS)と共同研究を開始しました。臨床AIアプリ「NOVA ID」を軸に、国内サーベイランスと現場での診療支援を一体化する取り組みが動き出します。何が変わるのか、その中身を追いました。
NOVA IDの狙いとJIHSとの共同研究の中身
カルタノバは、臨床意思決定支援システム(CDSS)アプリ「NOVA ID」を開発しています。本アプリは患者ごとの症例記録や診療ノート、検査結果の統合、抗菌薬適正使用(AMS)支援、サーベイランスのリアルタイム可視化などの機能を備えています。カルタノバは2025年11月より国立健康危機管理研究機構(JIHS)と共同研究を開始し、日本国内の耐性菌情報を収集・分析する枠組みを活用して、医師の診療判断に直ちに資する仕組みの開発・検証を目指します。共同研究の目的は、JANISの枠組みを活かしつつ、臨床現場で使える形に落とし込むことです。JIHSはNIIDとNCGMの統合により2025年4月に発足した国立機関であり、国内のサーベイランス知見と現場実装の接続が期待されています。
共同研究は、デジタル技術で感染症対策の支援と疫学情報の臨床活用を促進します。カルタノバは、国内外のAMR関連疫学データや臨床データを集約・統合し、NOVA ID上で診療補助とサーベイランス可視化を統合的に提供することを目指します。機能面では患者情報入力やダッシュボード、将来的な音声入力などを予定し、医療現場の負担軽減とデータ利活用を両立させる設計です。資金面ではシードラウンドで事業会社および個人投資家から2億円超を調達し、海外展開や現地検証の加速に充てています。実運用は既に11月からウクライナの医療現場でも開始しており、現地病院や保健当局と協働して有効性検証と運用設計を進めています。
国際展開と教育・キャパシティビルディングも重要な柱です。JIHSと共に、災害・紛争地をむ現場での抗菌薬適正使用(AMS)や感染予防管理(IPC)の高度化を目指します。JANISを基盤とした英語版耐性菌サーベイランスシステム(ASIARS-NET)などの知見を活用し、ルワンダ・ウガンダなどでの共同実証展開も視野に入れています。12月7日にはJIHS×CartaNova共催のサイドイベントを開催し、ウクライナの臨床ニーズやデジタル技術を活かしたAMR対策の最前線を議論しました。AMRは2050年に最大で年間1,000万人の関連死や2兆ドル超の経済損失が懸念される問題であり、日本でも年間8,000人超の関連死が推計されています。こうした危機感を背景に、デジタルでの個別最適化と国際的な連携強化が急務です。
NOVA IDとJIHSの連携は、現場主導でサーベイスと診療支援をつなぐ現実的な一歩です。資金調達と現地運用を踏まえた実装力が今後の鍵になると考えます。
詳しくはカルタノバ株式会社の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部
