
欧州連合(EU)は、世界初の包括的なAI(人工知能)規制として注目された「AI法」の一部施行を延期する案を発表しました。これにより、AI法の「高リスク」用途への適用が最長で2027年12月まで延期されることになります。また、個人情報の保護規制も一部緩和する方針です。
AI法の施行延期とその背景
EUは19日、AI法の施行を一部延期する案を発表しました。これは、米中との経済力の差が広がる中で、EUが先行して規制をつくり、それを他国が手本とする「ブリュッセル効果」で存在感を示してきたが、看板政策を見直す動きが続いていることを反映しています。
AI法の内容
AI法は、使い方に応じてリスクを4段階に分類し、それぞれに規制や義務を課しています。上から2番目の高リスクには、入試や職場の採用試験の評価などでのAI利用が含まれます。AI法は今年2月から、使用自体が禁止される「許容できないリスク」分類の使い方や、生成AIに関する規定の施行が段階的に始まっていました。
個人データ保護規則の緩和
個人データ保護を厳格に定める「一般データ保護規則(GDPR)」についても緩和策が盛り込まれました。AIの開発でアルゴリズム(計算手順)の偏りを無くす目的であれば、個人が特定できないよう加工した上で、宗教や政治、性的指向といったセンシティブデータの利用も認めることになりました。
規制緩和への反応
欧州委は、簡素化は企業の負担を減らし、AI開発を後押しする狙いで「規制緩和ではない」と説明しています。しかし、データプライバシーNPO団体の名誉会長で弁護士のマックス・シュレムス氏は、「グーグルやメタ、オープンAIのようなAI開発企業に、欧州市民の個人情報を吸い取る白紙委任状を渡すようなもの」と懸念を示しています。
AI法の施行延期と個人情報保護規制の緩和は、AI開発を進める企業にとっては歓迎されるかもしれません。しかし、個人情報の保護やAIの適正な利用についての議論はこれからも続くことでしょう。
