
生成AIの利用拡大とマイナンバーカード携帯の普及が、家計の振る舞いや資産形成、家族間の「備え」の在り方を揺るがしています。メットライフ生命の全国47都道府県調査から、世代ごとのデジタル受容とお金への保守化が同時進行する現実を読み解きます。
調査が示す「デジタル化」と「備え」の温度差


メットライフ生命の「全国47都道府県大調査2025」は、20~70代の男女14,100人を対象に、デジタル技術の浸透とお金・備えに関する意識を探りました。まず相続に関しては、「遺産をのこしたい」と答えた人が約60%に達する一方で、家族と実際に話し合っていない人が約半数にのぼる点が浮き彫りになりました。言葉としての意思はあっても、具体的な行動や合意形成が伴っていないのが現状です。


介護についての準備も同様で、介護が必要になった場合の対応を家族と話し合っている人は非常に少なく、4人に3人が話し合いをしていないと回答しました。最期に向けた備えが個人の想いに留まっている一因として、情報共有の仕組みや「いつ」「誰が」「どう対応するか」といった具体的なプロセスの欠如が考えられます。

経済面では、物価上昇を背景に資産運用の意向が慎重化しています。NISAの利用意向は前年より下がる一方で、定期預金や貯蓄への回帰が見られ、「攻め」から「守り」へとマインドが変化しています。給与の現状も約7割が満足しておらず、将来不安が貯蓄志向を強めている実態が読み取れます。


一方でデジタル習慣は急速に広がっています。財布を持ち歩かない人は全体で約4人に1人、特に20代男性では約4割にまで達しました。マイナンバーカードは全体で約6割が携帯しており、20代では約3人に2人が持ち歩いていると回答しています。決済・IDのデジタル化が若年層の生活様式を確実に変えつつあることが伺えます。

生成AIの利用経験も拡大しており、全体で約4割が使ったことがあると答えています。20代では5割以上、60~70代でも約4人に1人が利用経験を持つなど、世代横断でAIが生活の一部になりつつあります。こうした技術は資産運用相談や情報取得のチャネルにも影響を与え、若年層ほどAIへの期待が高い傾向がみられます。

興味深い相関として「推し活」と資産形成マインドの接点が挙げられます。全体の約4割が「推し」を持ち、20代では65.2%が推し活をしていると回答しました。時間やお金を使って好きな対象を応援する行動は、金融情報への接触や学習意欲にもつながり、資産運用への関心を高める一因になっている可能性があります。

その他の注目点として、市場や金融知識の学び方にYouTubeやSNSを挙げる人が増え、伝統的メディアと肩を並べています。また、親の年収と子どもの学歴は比例すると考える人が3人に2人いるなど、世代間・階層間の認識も浮かび上がります。調査は、個別の備えとデジタル利活用が同時に進む複雑な局面を克明に描いています。
詳しくは「メットライフ生命」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權
