近年、生成AIは広告制作の各工程に導入されつつあります。今回、電通、電通デジタル、ソフトバンク、SB Intuitionsの4社は、日本語の語感や繊細な表現を捉える「日本語コピーライティング特化型生成AI」の共同研究を開始しました。狙いは「心を動かす日本語の広告コピー」を高い精度で生成し、現場の制作効率と表現力を同時に高めることです。
海外製LLMでは日本語特有の語感や敬語、婉曲表現の扱いが難しい場面があり、広告で求められる微妙なニュアンスを再現しにくい課題がありました。日本語特化型のモデルと現場のコピーライティング知見を掛け合わせることで、このギャップを埋める必要があります。電通のコピー評価ノウハウと電通デジタルの学習データ、ソフトバンクの計算基盤、SB Intuitionsの国産モデル「Sarashina」を組合せる構想は、まさにこの解決を目指します。広告業界のDX進において、言語表現の高度化は重要な一歩です。
基盤モデルにはSB Intuitionsの「Sarashina」を用い、Supervised Fine-Tuning（SFT）で良質な広告コピーを学習させます。さらにDirect Preference Optimization（DPO）で人間の好みを直接反映し、トーンや語調の制御を可能にします。AI同士で出力を評価して改善する仕組みも導入予定で、ネーミング、キャッチ、ナレーションなど多様な用途で高速にバリエーションを生産できます。A/Bテストや感情スコア連携でPDCAを高速化し、マーケティング施策の最適化に寄与します。
導入によって制作スピードと質が向上する一方で、バイアスや著作権、ブランド毀損のリスク管理が重要になります。電通が評価基準を担うことで現場に合った品質管理が期待されますが、企業はデータガバナンスやレビュー体制、権限設計を整備する必要があります。人材面ではプロンプト設計やAI評価力が求められ、教育と組織横断のガバナンスがDX成功の鍵です。
今回の共同研究は、日本語表現に強い生成AIを実務に落とし込み、広告制作のDXを深化させる可能性を秘めています。技術的にはSarashina＋SFT／DPOで表現精度を高め、人とAIの協働で創造性を拡張します。だが同時に、倫理・品質・運用面の整備が不可欠であり、実証フェーズでの検証とガバナンス設計が今後の成否を左右します。企業は用途選定と人材育成を急ぎ、段階的に導入を進めるべきでしょう。
詳しくは電通の公式ページまで。
レポート／DXマガジン編集部
