
私たちが食べて感じる「おいしい」は主観的な感覚ですが、味の素グループは創業以来のうま味研究やアミノサイエンス®の知見を生かし、「おいしさ設計技術®」として科学的に解きほぐしています。おいしさ設計技術®は、「評価・解析技術」と「配合・生産技術」の二本柱で構成されており、香り・味・食感という三位一体でおいしさをコントロールする点が特徴です。官能評価では、訓練を積んだエキスパートが明確な条件下で香りや風味、うま味、食感などを点数化し、一般消費者の嗜好点と照合して目標品質を定めます。解析技術では、分子レベルの成分分析や嗅覚・味覚受容体の応答を数値化し、どの成分がどの受容体を刺激するかを明らかにすることで、望ましい風味や「コク」を設計します。

また、これまでの研究で蓄積した官能評価データや成分分析値、物性測定値をデジタル化・データベース化しており、アルゴリズムを用いて嗜好予測や成分選定を行うことで試作を最小化し、開発スピードを高める取り組みを進めています。配合技術では得られた設計指標をレシピへ翻訳し、さまざまな原料を組み合わせてコクや風味を演出します。生産技術では、製造プロセスや包装を設計して、消費者の食卓までおいしさを保持して届けるための工夫を行っています。

おいしさ設計技術®は、おいしさ+αの価値創出にも寄与しています。健康面では、減塩・減糖・減脂や機能性食品のニーズに対して、塩味感を高める素材や異味を低減する素材の開発、植物性油脂への置換で失われがちなコクを補う素材開発などに取り組んでいます。サステナビリティ面では、植物性たんぱく質への代替に伴う味や食感の課題を解決し、代替原料の実用化を促進しています。ほかにも、原料の一部代替による省資源やアレルギー対応、パンや米の劣化を抑えて賞味期限を延ばすことでフードロス削減に貢献する技術開発も進めています。
さらに、スマート調理領域では、料理のプロの技を科学的に解析して電子レンジなど短時間調理でプロレベルの味を再現する試みが行われており、ク味成分や香り付与、食感制御を通じて時短でも満足できる味を実現しています。実際に、Cook Do®の新製品「甘口麻婆茄子用」では、甜麺醤やオイスターソースのブレンド、苦みのマスキングといった要素を官能評価と解析を通じて設計し、子どもから大人まで幅広い嗜好に応える味わいに仕上げています。
味の素グループは、これらの取り組みを通じて「おいしさ」と健康、サステナビリティ、利便性を両立させ、世界中の人々のWell‑beingに貢献していく考えです。既存データの活用やデジタル化によって開発のスピードと精度を高めながら、分子レベルから五感までを統合する方法論で、他社には真似しにくいおいしさを生み出しています。
詳しくは「味の素株式会社」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松
